誤解が生んだ顛末 (2) 執務を終えて、重い足取りで階段を降りながら天蠍宮を目指す。 見るのを躊躇して確認していなかった今日のミロの予定 それをやっとの思いで目を通すとアイオリアと付近の見回りだった。 ミロが、…あの状態でそれが出来たか分からない。 ああ… 俺はなんて事を… もしかしたら寝込んでいるかも?いや、だがそんな報告は入っていなかった。 どうしよう、どうやって顔を合わせれば良い?ああ、だが… くり返す思考のまま、もう目の前に天蠍宮は見えていて。 うろうろ、うろうろ。意を決して宮の私室に立ち入るが 「いない…」 もう巡回から戻っていても良い筈なのだが。取り敢えず宮を下る事にした (……?) やがて気配が これは獅子宮 どうやらアイオリアと一緒らしい。 歩みを獅子宮に向ける (アイツらは仲がよいから) 疲弊した精神はそんな事までご丁寧に引っかかってくれたりもする 無理にだが体を繋いでしまったのも、変な意識が出来る原因のひとつかも知れない 頭をもたげるのは“俺のミロ”という言葉 もちろん分かっている。 彼は自分の物なんかでは無いし、寧ろこれから絶交を告げられるかもしれない立場だ なのに、心の底の何処かで執拗にこびり付いている意識が心に狂いを生み出す どろりとしたそれが、不意に頭をもたげては心の中心を大きくぶれさせてしまう “俺の物だ…俺はアイツをモノしたのだ!” …違う。あんな事で彼が手にはいるわけがない “あの肉体を汚して、支配してやった!” 違う 違う!そんな事をしたかった訳じゃない!! あんな事で彼は汚れやしない、支配など…出来る訳がない!! だが、彼と身を重ねたときの興奮が不意に甦っては心がちぐはぐに散らされる 頭の片隅がチリチリと燃えるように熱い。身が粟立つ。心はこんなに絶望しているというのに ぞくりと悪寒のような熱が沸き立っては、それを戒めようと首を僅かに振った そんな時だった 宮の奥から響いた微かな声が耳に入った 「… …**… **… 痛いか…?」 「… **…… ン、…く、くすぐったいっ!やめろって、アイオリア」 不意に聞こえた2人の声 アイオリアと、………ミロだ。 その秘めやかさを匂わせた囁き声に不安定だった精神が大きく揺らいだ カッと脳の一部が焼けた。はらわたから沸々と煮え立つ 嫉妬?、だろうか。とにかく訳の分からない怒りが込み上げる だがそれとは対照的に心が冷徹に冷え、それが表情へ伝わった。…久し振りの感情だった。 獅子宮の通路で絡み合う二人。わざと足音を響かせ気付かせると二人は顔を赤らめてばっと離れた 「何をしている?」 皮肉気にそう問えば、二人は恥ずかしそうに視線をさ迷わせる 何をしていたかは一目瞭然だ ミロの服は乱れていて、頬は桜色に。乱れた髪が艶めかしい―――――――腹が立つ 「何をしていた?」 慌てた様子で黙る二人に再度問えば、アイオリアは照れた様子で頭を掻いた 「練習だ」 何の、 …とは決まり切っているか 同性の、特に男同士の肉体関係切っ掛けなんてそんなものなんだろう 性への興味から、身近な人間と…そう言う関係なんて腐るほどあるのだろう―――――この封鎖された聖域では特に。 だが、それが彼であって欲しくなかった。 そしてこのタイミングで知りたくはなかった。 しかも…練習で。 練習、なんかでミロに触れていたなんて。 それをミロも許すなんて。 ……………なんて自分は滑稽なんだろう。 そして何て惨めなんだろう。 彼は“練習”でミロに触れることを許される。 自分は、そう、 拒絶されたのだ。 馬鹿馬鹿しさに笑い出したくなった所にミロがアイオリアに訂正を入れる 「違う、手合わせだ」 同じ様なものじゃないかと鼻白む。 ……お前は昨日のでは足りなかったのか? なぁ、アアイウコトキライジャナカッタノカ? 「あ、そうか!そうそう、カノン。こいつと久々に稽古を付けていたんだ。でもいったん始めるとミロはしつこくてな」 へえ? 何のオケイコだよ?ミロがシツコイ?昨日はアンナニイヤガッテイタノニ。 アイオリアならばイイノカ?…そう、なのか…? 頬が歪む。 お前は俺に自慢しているのかよアイオリア ……………いや、 だが… でも、 。。。 何かが違和感を伝えるがそれが上手く処理出来ない。足下が柔らかくなった気がする とにかく一番の疑問を聞いてみよう。 そうしよう、 それがいい… そう、しなければ。 「ほお…手合わせか。じゃ、さっきのアレは何の訓練だ?」 その時二人は“見られたか”という顔をした。おかしい、足下がぐにゃぐにゃする ふと足下を見てみる。確かに石で出来ている床は硬そうに見えるのに、生きてる見たいにぐにゃぐにゃと不安定だ ミロが少し拗ねたような表情で俺に告げた 「負けたからな、バツゲームみたいなもんさ」 ああ、そう?…罰ゲーム。 え? 罰ゲームって何だよ? アレが罰ゲエム 負けたから、罰で (罰、嫌な言葉だ) ミロはアイオリアに (刑罰?体罰?クソくらえだ!) いいようにされた? (かつての俺みたいに?) アイオリアに手合わせで負けて (負ければ奪われる) 慰み者にされていたのか? (何度も?) 思考が散漫になりながらグルグルと混ざり合う。奇妙な感情が逆巻きだしている ミロが低い声で言った。 「敗者は何をされても文句は言えない……聖域の掟だろ」 その言葉に 何もかもを忘れて、ただ怒りに身を妬いた しってるさ、しってるよ!ああ、良く知っている。身を持ってな! だけど、だけれど!お前の口からは聞きたくは無かった。 可笑しさと悲しさは勝手に口を突いて言葉になって零れ出す 「手合わせ…?はは、良く言う 所詮お前も…… (聖域の、犬か。) 「………何か、文句でもあるのか?カノン」 不機嫌に蠍が鼻を鳴らした。不遜にカノンを訝しむ アイオリアは不穏な雰囲気に戸惑っていた。 気位の高い蠍座はカノンの嘲るような感情を敏感に感じ取ったのだろう その燃える様な闘士を沸々と滾らせながらカノンを挑発した。 「カノン、貴様も暇のようだな。事務仕事等ばかりで体も鈍るのだろう?…手合わせを願う」 その言葉にカノンもギラギラと闘士を燃やした。もともと戦士だ。不穏な気配に身は高まる だが…このやり場のない怒りは何なのだろう? 理不尽な掟も。 不条理な運命も。 ありとあらゆる嫉妬や憎悪。 それらが逆巻いて治まらない 「………今から?」 「不都合か?」 聖域の掟?…ならば好都合じゃないか。 この生意気なガキを殴りつけて、肉体を支配し快楽を植え付けて、そして自分だけの物にしてしまえばいい 他になど触れさせるものか! そうさ自分だけのものにして、自分だけを見るようにさせて、俺だけを感じさせればいい! (それが本当の望みか?) 過ぎった疑問は感情の渦に巻かれて何処かに吹き飛んでしまった。 「いや、いいだろう …後悔しても知らんがな」 「は、ほざけ!」 ミロが嬉しそうににいっと笑いながら突っ込んで来た。それを咄嗟に避けながら獅子宮から飛び出す アイオリアがため息を吐いて“あまりそこいらを壊すなよ”とぼやいた。そんな事知るものか! ミロが嬉しそうに怒りと狂気で口の端を上げる それがあの時に少しだけ似ていた?(贖罪をくれたあの時に…)…いや、微妙に違う。あの時はもっと… ! 一瞬気をやったせいかミロに身を低くし間合いを一気に詰められた、懐に入られる。 超接近で仕掛けてくるとは意外だ ミロの距離はミドルレンジ あの技の性質がそうなのだ。 だが、接近戦も手馴れている?…いや、違う。そんなレベルではない!空を切る音が尋常ではない 何故?……だが。 「甘いな」 ミロが引き裂くように出してきた手を交わす。白い法衣の上掛けがミロの爪に引き裂かれながらぞろりと絡んだ 「な!」 それを奴に被せてやれば遮られた視界で戸惑うミロに隙が出る そこに容赦なく脇腹に一発ぶち込んだ 「ぁぐっ!」 それで沈めたと思った。 それぐらい容赦をせずに小宇宙をのせて拳を叩き込んだのだが、ミロは呻きながらもすぐさま2撃目を 反対側からの死角を狙った足蹴り、低い位置からのそれ 中々に悪くない攻撃だ だが…俺には通用せん! 後ろにバックステップを踏んだときだった 「かかったな!」 ミロが微かにわらった 後ろに引く俺に同角度で突っ込みながら顎を狙って拳を突き出す 凄いスピード 俺の頭が警鐘を鳴らす、これをくらってはやばいのだと! 多分ここからの一撃を切っ掛けに奴は回避不可な連続攻撃を仕掛けて来る …だが、もう一人の俺が冷静に嗤う。 ならば、ねじ伏せればいいのだと 「…ッな!」 「終わりだ」 皮一枚でそれを避け逆にミロの顎に拳を喰らわせてやった 奴はさぞ面食らった事だろう、俺は滞空していたのに何故!と だがそれを思う間もなく上がったミロの身体に空間から呼び寄せた岩石で一撃を浴びせる そしてコスモの塊で奴の腹を強かに打つ だめ押しとばかりに着地する間も与えず、下から空間をも引き裂く強大なコスモの帯で追撃を喰らわせた 「……ま、…まだだ…」 ボロボロになりながらもミロがまだ立ち上がろうと蠢く 血をゴホッと吐きながらも戦意は全然衰えておらず、いや益々高まったようでコスモが紅く吹き上がった。 だが…今の俺は それに付き合う気は全くと言っていい程、無い。 苛立たしさと、残酷な雄の衝動。 それが許されるというならば… ここでは許されるというならば 俺が頂いても、いいだろう? 俺は呻くミロを無情に蹴り上げて 「ぐ、ぅッ……!」 足を叩き折った 「ッ!〜〜〜ッ〜〜ッ!!」 「これで決着だ。今度は俺に付き合って貰おう…」 「ぐッ、ウ… は、まだぁ…まだ…だ…」 痛みに喘ぐミロに、否が応にも高まる興奮 ……俺は何て醜い。何て事を。 そう思いながらも心が、ほら だんだんと喜悦に充ち満ちていくだろう? ほの暗い心の闇の奥底で、歪んだ歓びの華がひっそりと花弁を綻ばせているだろう? ああ、そうさ。嬉しいね! 彼を手に入れられるのだ。 どんな形でも。それがどんなやり方だろうと! 終わりだと思っていたのだ。 それが手に入れられるんだ! また触れられるのだ! 歓んで何が悪い!? 何かが壊れるような音がしたのかも知れない。 でももう、止まる事なんて出来やしなかった ミロの髪を引き掴み「もう一本も折られたいのか?」耳にそっと囁いていた 自分でも驚くぐらいに冷たく響くその声色 だが悔しそうに歪められたミロの青い瞳に、俺はまたしても残虐な愉悦が湧き上がった。 まだ抵抗するミロにもう一発撃ち込んで黙らせ無理矢理抱えて双児宮に連れ込んだ。 迷宮を張り巡らせる。 誰にも邪魔などさせるものか。 そしてお前も、――――――逃がしてなるものか。 なぁ、ミロ 双児宮に入ったらな 喰われちまうんだ。 頭からばりばりと 出られないんだ。 どんなに叫んでも。 喚いても。 迷宮の炎が青白く揺らめく 秘密の地下へ足を踏み入れ、かつては鉄格子だった扉を開ける。 兄と戯れたあの部屋に呻くミロを転がした 「可愛がってやるよ」 昨日よりも もっと、もっと、もっと! サガじゃない、俺が。 この俺が、お前に焼き印を押してやる 俺が、このカノンがお前の肉体に消えない印を 俺という快楽を刻み込んでやる。 消えないように執拗に。 忘れられぬように酷薄に。 疼くように凄惨に。 俺無しではいられぬように。 ミロの見開かれた瞳が、何をだ?と俺に問う この無垢を汚すのだ と、心が舌なめずりをした ナニをさ と下卑た意識が高笑いする。 それにだ、アイオリアと今さっきまで乳繰り合ってたお前が、何を言うか! ベッドに引き倒して荒々しく身体をまさぐった。 痛みに呻くのも構わず、飢えた獣のように噛みながら躰を押しつける 「……!何故ッ」 ミロが俺を驚いた目で見上げた 何を驚く?敗者は貪られるのだろう? アイオリアともそうだったんだろう?なぁ、ミロ… 嫉妬に駆られて、シャツを捲った。アイオリアに愛撫されていた場所に吸い付いて痕を残す ミロの埃と汗にまみれた躰が酷く甘いのは何故?夢中でその場所一面に吸い付いては、噛みつく ミロが身体をビクビクと震わせて嫌がった 赤い痕がある。 …熱、アイオリアの小宇宙がまとわり付いていた。 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!」 強く噛んで血を出させた。 ミロが痛いのだろうのたうった。 構わず噛みついて傷を嬲ればミロが頭を押さえて悪態を吐いた 「クソッ…!」 楽しい、愉しい、タノシイ! 乳首にも吸い付いて、そこを乱暴に噛み上げた。 ミロが痛みに呻いて俺を殴ろうと拳を振るったが、 「ッ痛…!」 手を掴んで指を後ろに捻り上げてやる。露わになった二の腕の裏側に舌を這わした ああ…どこもかしこも甘いな、お前 「お前は負けた 敗者はこうなる運命なんだろ?」 その言葉にミロは青い眼を見開いて俺を見上げる ミロの真剣な表情 恐いくらいに見据えた瞳 だが余裕の無い俺はそれに気が付くことは無かった。 ミロが静かに呟いた。 「そうだな ………敗者は何をされても 仕方ない」 それからミロは大人しくなった。目を反らし悔しいのだろう、唇を強く噛んでいた 腫れた頬 口の中を切っているのか唇から顎まで血が滴っている。そんな痛々しい姿だった だが俺は大人しくなったミロに気を良くして、繋がる場所に指を一本ねじ込んだ。 もう我慢出来ない 早く繋がりたい。彼を犯して犯してよがらせて、泣かせて。 そして俺を求めさせたかった。 ……所詮俺は、こんなやり方しか知らない。こんな俺など、どうせ… 指を差し込む。熱く燃えるようだ 発熱しているのか、肌も汗で湿っている。 秘所は昨夜の名残など無かったかのように固く窄まっていた。キツイ。拒んでいる?ならば。 すぐに慣らしてやるとばかりに間髪入れずに二本目を無理矢理ねじ込んだ ミロが吐き出すように喚く 「何を、されても仕方ない!それが…ッ…ここのルールだ、聖域の絶対的な掟!」 その言葉に怒りで我を一瞬忘れた 怒りと興奮が高まって、碌に慣らしもせずに突っ込んでいた。ミロが歯を食いしばって呻き声を上げる 折れ曲がった足が、取らされた体勢が、荒々しく貫かれる場所が、ミロの顔を歪ませる 自身の苦痛に、ミロの苦痛の呻き声に、俺は何処までも高まった 揺さ振って 噛みついて ワザと苦痛を与えて 嵐のように吹きすさぶ感情のままに暴行の限りを尽くす だけれどミロは微塵も抵抗しない。声を上げまいと唇を固く噛みしめている だが、その隙間から漏れ出る呻き声に欲望が一層刺激される ああ、俺はおかしい。 それから俺はいつの間にか叫んでいた ミロの言葉と態度に腹の底から怒りを感じていた。かつての感情が身に甦る 「掟、掟、掟!…は、はははッ!!じゃあその掟とやらを貫けばいい!!」 懐かしい感覚 ドロドロとした理不尽な怒りを彼にぶつけるように腰を打ち付ける 「あぐぅッ」 ミロが呻く。背中に汗が伝う この呻き声は誰のもの? あの日の恐怖、緊張と絶望。 そして怒りと快楽がグラグラと煮えたぎる 肉体が煮くずれるのでは無いかと俺は思った 「ああ…すげぇ 中がとろけてるよ 濡れてる?ああ…血か 滑りが、良くなったなァ」 ミロを掴む指先が熱い 濡れた背に服が張り付く 尻に力が入る 肉棒が気持ちいい とろける全部が。すごくいい… ぐちゃぐちゃと血が音を立てる 卑猥に下品に 奴と俺の服は血だらけだ ベトベトする 海の匂い あれ?ここは何所だ? 不意に不安に駆られてぎゅっと奴にしがみついた 「カ、ノン…?」 「… ッ何でも、無い!」 弱みを見られたくなくて体勢を変えて激しく貫いた。次第に激しい快感に脳が染まっていく ミロはただ呻くだけ 痛いはずなのに抵抗はしなかった いや、しなくなった。 ただ冷めた瞳が自分を見つめていた 彼の前に手をやってもやはり反応はしていない それが腹立たしい なぁ、お前もぐちゃぐちゃになっちまえよ! 何度も何度も何度も何度も、彼を陵辱した。 日が落ちた頃、気を失った彼の横で俺は頭を抱えて身勝手に泣いた 『心の欲求をあえて閉じこめる、人は時に愚かだなカノン』 シャカに言われた言葉が甦る。 ああ。愚かだよ そうさ、俺は何を手に入れた? この虚しさが、答えだろう |
色々ハテナがでていますかね?痛くてスンマセンな顛末ですv
さ、ここで今一度考えて欲しいのは 誤解が生んだ顛末 というタイトルの事
アイオリアとミロははたしてデキているのかしら〜☆っと!
聖域の掟に拘るミロ そして嫌悪するカノン それは過去によるものか。