NOVEMBER RAIN


LAST・NOVEMBER 7










ひとつ つまずいてから、転がり落ちるのは あっという間

でも、目の前が真っ暗に染まってしまって

転がり落ちていることにも気が付かない。














医者に何とか助けて欲しいと話したら、無理だの一辺倒だった。
「何故です?まだ父さんは生きているのに!」
それを聞くと、医者は悲しそうな顔をしてただ俺を慰めた。
だけど俺は慰めなんていらない。



諦めなかった
父さんを直して欲しいと手当たり次第に病院に問い合わせた。
一つだけ見つかった
ニューヨークの末期患者を専門的に扱ってくれる病院。
調べて、良心的な所だと分かると医師に移したい旨を伝えた。



医師は俺を止めた
『止めなさい、彼は助からないよ』と。
聞く耳を持たない俺に、彼は粘り強く説明をした

父さんの病気は稀なもので、薬は少量しか作られずとても高価な事。
その薬でさえも一時的な発作を抑える為だけの物で、病気は治さないという事。
手術も成功例なんて無いに等しくて、やるだけ無駄だという事。

だけど俺は 父さんをその病院に移した。
医師が悲しそうな顔でずっと俺を見ていたのを憶えている。



医師の言っていた事は本当だった。



コネチカットの家を閉めて、俺はニューヨークに安いアパートを借りた。看病する為に。
あんなにあった貯金が、すぐ底をついた。
どうする事も出来なくて、ひどく慌てて、

それから・・・身体を売った。 それしか無かった。



迷いは、無かったと ・・・思う。
あんな金額を払うのは普通の仕事では無理だし、俺は父さんの為に何でもしようと決めていたから。
幸か不幸か金はあっという間に貯まって、父さんの手術までこぎ着けた。



これが、俺の出来る精一杯の事だと思った。
手術さえ受けられれば何とかなると思った。
父さんの手を撫でながらいつものように話しかける
・・・もうすぐだからね   と。
でも、それさえ叶わなかった。



手術の前に 父さんは呆気なく死んだ。
孤独で淋しいまま。



冷たい冷たい 雨の夜に 父さんは死んでしまった。

俺は体の震えが止まらなかった。







・・・・ザァァァァァァァァ・・・・・・・・・・・・ザァァァァァァ・・・・・






目を覚ますと夜が明けていた



ソファで寝てしまったために体のアチコチが痛い
ゆっくりと体を伸ばしながらそこから起き上がり、ベットの上に目をやった。


(アムロ?)


最後に彼を目にした時と奇妙なぐらい変わっていない。
シャアは慌ててアムロに触れた ・・・暖かい 熱も無さそうだ。
ホッと息を吐くのと同時にどっと後悔が押し寄せた

――――昨日、自分は彼に何をした?

・・・解っていた事だったのに!
彼がクスリ欲しさに何でもやるという事を!!
自分はまんまとのせられて、それに腹を立てて、
・・・無理矢理、性的な“暴力”をふるったのだ。


後悔と罪悪感、自分に対する不信と羞恥でシャアは頭が真っ白になった。
両手で前髪をくしゃりと握る 頭がとても熱い。


(私は・・・なんて事を・・・!!)


気持ちを動転させながらアムロを見れば、ベットに転がされおざなりにローブを掛けられただけの姿
シャアは弾かれたようにキッチンへ向かうと、大きい洗面器に湯を張った。


「アムロ、 ・・・すまない。 ・・・私は、 ・・・」


彼の身体を拭い始めると、謝罪の言葉が止め処なく溢れだした。
ミントのアロマオイルを数滴垂らした湯でタオルを絞り、丁寧に体をなぜる
片方ずつ手錠を外して包帯をそっと巻き、ローブを着せて体をゆっくりさすった。

許して欲しい、すまない、
そんな言葉が口から零れて止まなかった。






・・・・ザァァァァ・・・・・・ ・・・・・ザァァァァァァ・・・・・・   ・・・・・・




アムロは目を覚まさなかった。
その日の夕方を過ぎても、夜になっても。
ただ、昏々と眠り続けた。



シャアは彼に拒絶されてしまった様に感じて涙が溢れた
食事をどうしても取って欲しくて、震える涙声で彼に必死で呼びかけたり、体を揺すったりする。
だが瞼は重そうに閉じたままだった。


(このままでは死んでしまう!!)


シャアは心の中で悲鳴を上げた
ベッドに繋がれたまま暴れる彼は消耗が激しい、なのにあまり食事をしてくれない。
ここに来て一回り以上細くなっているし、それに昨日の事もあるのだ。
今日、食べなければまた一歩死に神に近づく事になるだろう。


「・・・アムロッ・・・ アムロ起きてくれっ! ・・・私は、・・・君と生きたいんだっ・・・」


シャアは必死に体を揺すったりしながらアムロに呼びかけた。
だがアムロは、時々億劫そうに目蓋を少し上げるだけ
すぐに瞳を閉じて穏やかな呼吸をくり返しては、深い眠りの底へと身を沈めてしまう



アムロは 長い長い夢を見続けていた。
















なんかシャアのクサさにくらくらしながら書きました。
この話のシャアは極甘ですな!本家本元のシャアとは偉い違いです。
自分のシャアのイメージ→(軽薄・俗物・怨み深い・派手なオッサン・我が道を行っちゃう実はロマンチスト)
・・・シャアファンに殺されそうな事を・・・!
でも、シャア大好きですよ!特に俗物っぽい所が!!(フォローになってな〜い!)



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