星を愛する人たち 4
「あっつ、・・・ちょっと、自分で出来ますってば!・・もしかしてさっきの事まだ怒ってるんですか?」
アムロ大尉の手荒いノーマルスーツの着せ方に抗議を述べれば
「当たり前だ!!めちゃくちゃ痛かったんだぞ!?」
と返された。そこへ、クワトロ大尉の声が掛かる
『アムロ、準備はどうだ』
「ああ、今行く。カミーユ、行くぞ!」
俺は急いでヘルメットを装着し、アムロ大尉に続いた
慣性のままに船へと流れていくと、飛び込んで来た赤い物に目が奪われる。
「赤いっ!?・・それにパイロットスーツ?」
「ああ、シャ・・いや、クワトロ大尉か?あいつ、趣味悪いだろ?」
その言葉に同意しながら、あの人ってホントにシャアって人だったんだなとしみじみ思う。
あれ(悪趣味)さえなければな・・ この中で一番まともそうなのに・・。
お肌の触れあい会話は続く
「でも、何でパイロットスーツなんですか?彼も船外作業員なんですよね、」
「あ、言ってなかったな。普通、作業は3人一組でする。2人が作業、もう一人がサポートだ。
サポートは不測の事態、・・たとえばMSが必要になった時にも対応出来るようにする。You,Copy?」
「え?何ですか?」
「分かったか?、って意味さ。実は今までずっとヤツと二人っきりでやっててさ、正直大変でね。カミーユが来てくれて大助かりだよ。」
「? 今、3人一組が基本って言ってませんでしたか?」
「・・・実はカツが、・・3人目をやっていたんだけどね・・・彼は、色々、不向きな事が多くてね。」
俺は瞬時に理解した。・・・やはりカツは使えないヤツなのだろう・・・。
ベルトーチカさんの”部下”という唯一の格下扱いは、きっとこれが理由なんだ。
そこまで考えて、変なことに気がついた。
「・・・まって下さいよ、それじゃあ俺、今から実地の作業するんですか?・・・・今日来たばっかりなのに??」
「そう言う事、実地で覚えるのが一番だ。俺が言うんだ、まちがいないよ」
「何なんですか!それ!?」
アムロ大尉に背中を押されてバランスを崩しながら、戦艦に繋がれた通路に入る。
一瞬見えた戦艦の表示名に、俺は、息を呑んだ。
「S−CVW−07???・・・・大尉!これって、10年以上前に製造中止になった型じゃ!!?」
「それでも一年戦争よりは後だ。・・それにカミーユ、船乗りになるんだからアーガマって呼べよ」
「・・・・・俺、やっぱり帰りまっ・・」
「さ、行こうカミーユ君」
逃げようと思ったらクワトロ大尉に腕を掴まれて、俺は戦艦に詰め込まれた。
***
S−CVW−07、こちらL−1・SPST−04 通信系統、マルチチャンネルチェック、You・Copy?
Copy,That
S−CVW−07、こちらL−1・SPST−04 アボート表示のテストです。
了解、チェック良好。
S−CVW−07、こちら・・・・・・
「へえ、さすがに仕事になると変わるんだ・・」
船外作業船のチェックを終えた俺はブリッジを覗いて、皆の真剣な表情を見て思った。
船には女性はいない。ブリッジにいるトーレス、サエグサ、ブライト艦長、そして作業をする、俺と大尉2人だ。
大尉二人は、あまり仲が良く無いのか必要最低限以外の言葉を話そうとしない。
二人とも黙ってコーヒーのチューブをすすりながら、お互いそっぽを向いている。
・・・いや、クワトロ大尉は何か話したいのか、隙を伺っているようにも見えた。
「うわあ、青い!!」
そんな大人同士の下らない駆け引きの間、つまり2人のいる間の窓に、いっぱいの青が映し出される。地球の青だ!
俺は感動して窓に駆け寄り、外を眺めた。地球の青が、大気の白い膜が、俺の心を震わせた。
・・・・星は大好きだ、この、青い星はなおさら・・・。
そんな俺にクワトロ大尉が声を掛けてきた。
「キレイだろう?カミーユ君は地球が好きかい?」
「ええ、そりゃあ好きですよ。だって、地球が嫌いなスペースノイドはいないでしょ?」
クワトロ大尉が上機嫌にそう聞いてくるのに対し、アムロ大尉はつまらなそうに視線を反らしていた。
「そうだな、君はアナハイムから来たと聞いたがルナリアンかい?グラナダにいたのだろう?」
「いえ、サイド7のグリーン・ノア出身でって・・・うわっ!」
その時、俺が手を付いていた手すりが ガコンッ と外れた。
慌てる俺にアムロ大尉が”またか”と声を出す。
「え、またって・・・?」
「気にしなくていいよ、しょっちゅう壊れるんだよ。・・なんてったって古いからね。」
絶句する俺に、今度は”丁度いいな”とクワトロ大尉が俺に手招きをする。
アムロ大尉に外れた取っ手を渡してクワトロ大尉に続こうと通路のグリップに掴まる。
「カミーユくん、君はMSの操縦が・・」
「はい、出来ます。アナハイムでは開発に携わっていましたし、テストパイロットもしていました。」
俺はまたも嫌な予感に襲われた。・・・自分の言葉に違和感を感じたのだ。
その理由はクワトロ大尉の進んでいる先、MSドックと記されたプレートを目にして理解する。
・・・そうだ、ここは小型巡洋艦といってもMSドックがあるのだ。
つまり、MSがある。・・・戦艦だ、ない方がおかしいのだ。
そこでまた新たな疑問がわき起こる。
じゃあ、なぜデブリの回収をMSでやらない??
そのほうが断然効率がいい。・・・でも、作業をするというアムロ大尉と俺はノーマルスーツ。・・・なぜ??
無言でクワトロ大尉に続けば更なる驚きが俺を包んだ。
・・・・だって、ソコに置いてあったのは・・・
「ディジェ・・・しかも一機だけ・・・・」
俺は開いた口が塞がらなかった。
だって、ディジェ、・・・こんな量産機一機だけ。
こんなの、昨今じゃアナハイムの作業にも使われている。しかも一機だけなんて・・・
ここのMSドックには悠々3機は置けるスペースがあるのに・・・なんで!
俺はたまらずクワトロ大尉を見た。
「そのうち分かると思うが、ウチには色々と制約がある。・・・・これもその一つでね」
俺は大尉の皮肉気な笑みを見ながら黙って続きをまった。
「このMSは私か君しか乗れない。作業にも使えない。つまり、サポートに入るのは私か君だけと言うことだ。」
俺はとうとう待ちきれなくて口を開いてしまった。だって、こんなのおかしいじゃないか!!!!
「何故なんです、クワトロ大尉!?こんなのおかしいですよ!連邦の英雄が、あの、アムロ・レイがいるのにディジェ一機だなんて!?
しかも、それにも乗れないなんて・・・こんなの、どうかしてる!!」
「だからさ、」
「何がですか!こんなの、宝の持ち腐れ以外の何者でもない!MSの天才と名艦長の2人を・・・何考えてんですか、中立軍は!!」
「その、中立軍だが、・・・・アムロとブライトは元々何所にいたか知っているかね?」
「そんなの、地球連邦軍に決まっているじゃありませんか、・・・誰だって知ってますよ、そんなの。」
「では、一年戦争後、その、アムロ・レイはどうなったか知っているかね?」
「最初はメディアに騒がれて、・・・・その後こつ然と姿が出なくなりました。噂じゃ連邦が彼を隠していたって・・・、」
「隠していた、か。・・・ものは言いようだが、・・まあそんなところだ。 だからだよ」
「は?でもそれ昔の話でしょう?だって、今、アムロ大尉 中立軍に所属しているじゃないですか。それに七年前の地球の内乱の時も彼は活躍してたでしょう?」
そう、一年戦争のしばらく後に地球連邦軍は内部組織が二つに割れて内乱が起こった。
元々地球にいる特権階級達が殆どの穏健派と人類をもっと宇宙に出そうとする武力派とに。
これに、スペースコロニーが支援する団体が結びつき、現在、地球連邦政府は宇宙精鋭部隊、ティターンズが実権を握っている。
つまり武力派が宇宙移民と結びつき、実権を握ったのだ。その内乱の時にアムロ大尉もティターンズを支援する地上部隊カラバでMS部隊長を務め、さらに名をはせた。
「だがね、しがらみとはそう易々と消える物では無いのだよ。・・・まず、連邦がアムロを手放すことなどあり得ないことだった。」
「そんなの、個人の意志でしょう?現に彼はここにいるわけですし」
「そうだが、 普通手放すかね?戦局を大きく左右する存在を。歴史を見れば彼が時勢に大きく作用しているのは馬鹿でも分かる。それを連邦が手放すはずが無いだろう?」
たしかに・・・そうだ。俺はクワトロ大尉の言葉を静かに聞いた
「だが、彼に人権が無いわけではない。・・・これは推測だが、多分アムロは何かしらの強引な手で中立軍に軍籍を移した。」
ドックのディジェを眺めながらクワトロ大尉が話を続ける
「だがね、連邦だって馬鹿ではないさ。中立軍はコロニー各国代表と連邦軍の両方からの支援で成り立っている。
幾ら独立した権限の元に軍を運営していたって、ある程度の意志や圧力を掛けられない訳ではない。」
「・・・そ、それって・・もしかして・・・」
俺はそこで初めてクワトロ大尉が何を言いたかったか理解した。
だが、理解するのと納得するのとは別だ!
俺はイライラし出して爪をかんだ。ファがこのクセを嫌がってうるさいが今は気にしていられない。
・・・・だって、こんなこと許されるもんかよ!つまり、あのアムロ・レイを・・・
「籠の鳥と言うことさ、特にこの第四ステーションは連邦の息が強く掛かっていてね、ティターンズの戦艦まで常駐している程だ。」
「・・・・・そんな・・」
「ディジェ一機回すのでさえ大問題になった。これに彼が乗ればブライトの胃に穴が空くだろうな。」
分かったかい?とクワトロ大尉が俺の頭を軽く叩いた。
その、子供のような扱いに俺はムッとしてみせる
「ではそろそろ行こう。きっと今頃アムロが大あくびをしているだろうからな」
「・・・・はい」
「君が気を落とすことは無い。それにアムロは悲観などしてはいないのだよ、・・それと今、私が話したことは彼に黙っていて欲しいな。どうだろうか?」
喋りながら通路のレバーに掴まる大尉に「了解です」と呟いて彼の後に続く
途中でブリッジを横切ったときにブライト艦長の固い声が聞こえたような気がした。
ノーマルスーツ着てたのは、船外のチェックという事で・・・。
ちゅーか、実はここ・・・すんご〜く迷いました。
えーと、最初MSはディジェでした。だっていくら何でもジェガンは性能良すぎるんでは!?と思ったので。
だがしか〜し!あるサイト様にてディジェは地上用だと言う事が分かりうろたえる自分。
急遽ジェガンにしたのですが、やっぱり納得いかず戻す事に。
だから、このディジェは宇宙用に改造を施したと言う事で・・・・。
ぼろっちいグリプス戦役お下がりの年季の入ったディジェをご想像下さいませ。
それをアムロが嬉しそうに弄り回すんですよ!
クワトロなんかは新し物(+派手)好きっすから、
『そんな物にいくら手を掛けてもたかが知れてる、ナンセンスだ!』
とか思いながら、アムロの後ろ姿を腕組みしてずっと眺めてたり。 とかね!