星を愛する人たち 3








半ば放心していた俺をカツという小男が案内し、
チェーン・アギの採寸(もちろんデジタル)でノーマルスーツをオーダーした。(部分オーダーだ。)
その時のチェーンの言葉『アムロは私のこと何か言ってました??』にぶち切れ寸前になりながらも、
「出来るまで食事してきなよ」(やはりカツは生意気だった)のカツの言葉に頷いて、
今、ジュドーとファと食事を取っている


「おまえら、いいよな・・俺なんか天国から一気に地獄だぜ・・。」
「あはは、カミーユさんったら大げさー!」
「そうよ、カミーユ。あんなに来たがってたクセに。ちょっと期待が大きすぎたんじゃ無いの?」
「!!俺だって、ゲロでハロで女ったらしで縞パンだっっって知ってたら来なかったさ!!!お前らに俺の気持ちなんて、分かるもんかよ!!!」

俺の言葉に多少の事情を察した二人は暫く黙ったが、ポツリとジュドーが 俺噂を聞いたんだけど、と零した。
「なんか、そこってデブリ艦隊って呼ばれてるらしいね。」
「何だよ、それ?」
「あ、それあたしも聞いたわ。デブリ屋さんって呼ばれてるって。」
ファやジュドーの言葉に眉を潜める。そういえば管制室でもその単語を耳にした

「怒らないでね、カミーユさん。・・なんかそこってスペース・デブリ(宇宙のゴミ)の回収ばっかりやってるって聞いたんだ。」
「は?・・・馬鹿言えよ、曲がりなりにも中立軍の一個艦隊だぜ??」
「それがね、 ・・・半個艦隊って陰口も叩かれてた。小型巡洋艦が一隻しかないって。」
「・・・・・そんな、・・・馬鹿な、」

カミーユはそう口にしながら、心の奥ですんなりなっとくする部分があった。
・・・だって、自分が紹介された人間はあまりにも少ない。うち、自分を含めた2名でさえ民間人なのだ。

「・・・・でね、半個艦隊の”はん”は反抗的、半端者、反乱分子、・・・そんなのの集まりだって言ってた。あ!カミーユさん!?」
「カミーユ、何処行くの!?」
「・・・・確かめてくるっ!」


俺は居ても立ってもいられなくて駆けだしていた。



***




「その話なら本当だよ」

今日は俺が教えるから、といったアムロ大尉に付き添って倉庫で船に積む荷物を入れながらストレートに疑問をぶつけてみた。
するとあっさりと事実だと肯定される。

「何故なんですか!?そんなのおかしいじゃないですか、だって中立軍の一個艦隊なのに!」
「ま、小型巡洋艦一隻だけだけどね。・・・半個艦隊って呼ばれてるのも聞いた?じゃ、もしかしてデブリ艦隊ってヤツも?」
「ええ、聞きましたよ。・・ウソでしょう?そんなの。 軍隊が、ただ、デブリの回収してるなんて ・・・ありえませんよ、そんなの」
「本当なんだ、カミーユ。 一応名目は”特別哨戒任務”って事になっている。でも、その実は殆どがデブリの回収なんだ」

「・・・・そんな、」
しばらく絶句する俺にアムロ大尉が苦笑した。

「こんな仕事は嫌かい?・・でも、デブリの回収も誰かがやらなきゃならない事だよ?」
「・・・・・・・・・そうですけど・・」
「それに、宇宙航路の安全を確立するのも立派な宇宙中立軍の仕事でもある。」
「・・・・・でも、」
「人を殺すよりよっぽどいい仕事だよ?」
ぐっっと言葉に詰まった。彼のさらりと言った台詞は、ひどく血肉の臭いを感じさせたから。
でも、腑に落ちない事が山ほどあるあるのだ。・・・俺はそれを知りたい。

「・・・・・じゃ、何でこんなに人が少ないんですか?なんで巡洋艦一隻なんですか?」


アムロ大尉は一瞬痛い顔をして、それから口元だけで笑って
「”特別”・・・だからかな?」と言った。

一瞬ガラリと変わった雰囲気に俺は何も聞けなくて、ただ作業を続ける。
その横でアムロ大尉が荷物をいい加減にがらがらと突っ込んだ。

「・・これ、リストより一つ多いです。」
「え?・・多い分には構わないじゃないか。」
「・・・・ダメです、そんなの。そこの棚に戻して下さいよ」
「分かったよ、・・細かいんだな、カミーユは」
「!!っ 隣の棚にちゃんと戻してくださいっ!」
「・・・はいはい、わかりましたヨ。そのチョーシでオレの分までガンバッテクダサイネ。」

・・・・どうやらスネたらしい。
その態度に俺の神経がイライラとざわめきだした。
いい大人(たしか彼は29の筈だ)のクセに、ナニあんたスネてんですか!?
なんとかこらえつつ、一番の疑問を口にした


「いつも、そうなんですか?」
「えぇ?」
「いつも皆さんそうなんですかって、聞いてるんです。裸で踊ったり、ペットロボットが飛び回ったり、ゆるみまくって、そうゆう、だらだらした、あの空気です。」
「そうだよ」


頭の中のどこかのメーターが振り切れそうになったが何とかやり過ごす
・・・・俺も大人になったもんだよ・・・

「あなたって、あのアムロ・レイなんですよね?連邦の英雄の、あの、アムロ・レイなんですよね?」
「・・・英雄かどうかは知らないさ。だけど、俺はアムロ・レイだよ」
「俺、ずっとあなたに憧れてたんです。でも、いつもそうなんですか??・・英雄ってもっと、節制して、逞しくて、リーダーシップがあって、そういうんじゃないんですか?」

アムロ大尉は何かを遠くに取りに行きながら大きな笑い声を出した

「カミーユ、君、いくつだい?もうそういうのを卒業してもおかしくない頃だろ?ご期待に添えなくて悪かったよ」
嘲る笑いに俺は頬を膨らませた。
いいじゃないかよ、それぐらい夢見てもさっ!

そんな俺の目の前にいかがわしい雑誌が放り込まれた。


「・・・・・何ですか・・・これ?」
「え?カミーユエロ本知らないの??」
「そういうこと聞いてるんじゃ無いんです!なんでこんなん入れるかって聞いてるんですよ!!」
「・・必要なんだ。だって考えてみろよ、むさい男だけで狭い船に詰め込まれるんだぜ?それが一週間続くことだってあるんだ。・・どっかで抜かないと・・ヤバイだろ・・・」
そこでアムロ大尉はすっごく苦い顔をしてから言葉を切った。
何かを思い出したらしい??それから俺をチラリと見た

「カミーユって、彼女 いる?」

不意打ちの質問に俺は柄にもなく照れた。・・・なんでココでその話題なんだ!

「・・・・いますよ、・・・俺がこっちに来るって聞いて付いて来ました・・・」
「うそおっ、凄いよカミーユ!愛されてるなあっ!!」
「・・・・で、それがなんなんですか!?」
「大切な事なんだぞカミーユ。彼女は大切にしなきゃダメだ!特にこんなステーションみたいな所では!!」
「・・・・・・・なぜ?」

俺の質問には答えず、アムロ大尉は熱弁した。


「女の子はいい!優しくって柔らかくって気持ちいい。そして何より清潔だ!体にも心にも!!」


俺は大尉のあまりにもな言葉に、しばし意識を失った
・・・・俺が・・憧れていたアムロ・レイは、今いったい何所にいるのだろう・・・?

「だから、”こんなのいらない”なんて言わず持って行くんだ!彼女の元に戻れるまでは、ちゃんとしなきゃいけないんだ!!分かるかい!?カミーユ!」

俺はさっぱり意味が分からなくて彼をじっとみた。
・・・・俺はこんな人に会うために計画中のZのプランをほってきたのか・・・・。
・・・・俺はこいつに逢うために、上司に毎晩嫌みを言われ続けたのか・・・。

「だからね、とっても、思いっきり、エロい映像データを持って行こう!!・・この、ハメ撮り百人切りなんてどうだい?・・じゃ、巨乳大行進!あ、これお勧め!アダルトアニメ”萌えっちゅ”」

俺は怒りを堪えるのに必死だった。
・・・・・曲がりなりにも彼は、初対面、年上、上司、英・・・ゆう・・・

「あ、そういえばさっきチェーンが俺のこと何か言ってなかった?」


その言葉にしたたかに切れた俺は、アムロ大尉の足に荷台の車輪を思いっきりぶつけた。













何か色々無理が出てきたッぽいですね〜、ポロポロと。
なぜアムロが、ステーションに帰るまでちゃんとしなきゃいけないか力説してるのは後の話に書こうかと。



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