NOVEMBER RAIN
LAST・NOVEMBER 2
ザザザザザザザザザザザザアアアアアアァァァァ・・・・・・・・
雨の音がする。 ・・・激しい雨音。
気がつくとベットの上にいた。 ・・・・部屋が暗い。
身を起こそうと身体をよじれば、何かが腕に引っかかった。
(何・・・? ヒモ?)
腕がバスローブのヒモか何かでベットに括りつけられている
これでは身が起こせない。
腕を外そうともがけば、誰かが音に気づいてやってきた
逆光でよく見えない。
(・・・早く、 このっ・・・ほどけろよっ!!)
アムロは焦った。
こんな事をする奴はジャミトフかバスク、それとも昔付いた、あの針を刺す男!
これから起こるであろう数々の暴力にアムロの体は震えた。必死に腕を動かす
(嫌だ! 恐いっ 恐いっ 恐いよぉぉ!!)
「アムロ、腕を痛める。やめなさい」
「――――う、うわああああああぁぁぁぁ―――――っ!!!!」
誰かの手が体に触れた瞬間、アムロは恐怖の悲鳴を上げていた
手をメチャメチャに動かして必死に逃げようと身体を捩る
「アムロ!?・・・大丈夫だ、大丈夫。 何も恐くはない」
体を押さえて必死に言い聞かせるが、アムロの身体は恐怖に硬直し悲鳴は止まない
シャアはキスで口を塞ぐと身体をなで続けた
悲鳴が止むと口を離して彼を見る。
「大丈夫だ、アムロ。何も恐くはない。・・・私が、解るかい?」
アムロは目を見開いて硬直しながら、ただ自分をずっと見続けた。
しばらくすると、
「・・・・・・・シャア。・・・・・」
とだけ答えた。
ザアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア・・・・
(シャアだ。 ここ・・・ シャアの家だ。 ・・俺、いつの間に来たんだ?
・・・・・・ああ、 そうか、 病院帰りに合ったんだっけ・・・あれ、夢じゃない?)
頭の中がぼんやりと霞んでいる
・・・・・もう、どうでもいい事だが・・・・
「・・・シャア? ごめん寝ぼけた。 ・・・・ところで、コレは何?」
「・・・アムロ。 まず、どこまで憶えているか話して欲しい」
「は?何言ってんだよ、コレ、外せよ。こういうのは好きじゃない」
シャアは身を起こし部屋の間接照明を灯した。
柔らかな光が部屋を照らす
部屋の隅から椅子を一つベットの脇まで持ってくるとそれに座り
アムロをじっと見つめたままガウンのポケットから何かを取り出した。
「これに見覚えは?」
アムロはギクリとした。
(・・・・奴に、見られたか。)
だが、それがどうしたというのだ。
彼には関係のない事だと、開き直る。
「アンタと・・ハーレムの近くで出くわした事は憶えてる。それで、それは俺の。」
「!!っ、 ――――・・・これが何だか解っているのかね」
「コカインだ。 返して欲しい」
「断る!! アムロッ 君は解っていない!! 続ければ死ぬぞ!?」
「それがどうしたっ!! アンタには関係の無い事だ、コレ外して、それ返せ!」
シャアは傷ついたような苦しいような顔をするとアムロを睨んだ
「ダメだ」と苦々しく呟く。
そして目を瞑って長く息を吐き出すとアムロを見ながら話を始めた。
「アムロ・・・ 実は、君のお父さんが亡くなった事を知った」
アムロの肩がビクリと震えた。
目に怒りの色が湧き上がる
「・・・・調べたのか?」
「・・・いや、偶然に近い。 今日、・・正確には昨日知った。」
「そう?だから、何?」
「・・・お父さんの手術代の為に、あの仕事をしていたのだろう?」
アムロは横を向いて目を逸らした。
今、一番聞きたくない事だ。
丁度クスリも切れ始めたのか、すこしイライラしてきている
「アムロ、君はお父様が亡くなって、 ちょっと、自暴自棄になっているんだ。」
「・・・・・・・・それ返せ・・・・・・」
「こんな物、止めたまえ。 天国のお父様もきっと悲しむ。」
その言葉を聞くと、急にアムロが笑い出した。
禍々しい怨嗟の滲んだ笑い声
憎しみを浮かべてシャアをギラリと睨み 嘲笑をのせて言葉を発する
「天国 はッ 天国だって!? そんな物があるなら、俺もアンタも地獄行きだな!」
そう言って一通り嗤うと
”あるんならね・・・”と苦々しく呟き言葉を続けた
「俺が、親父の命を繋ぐ為に何したと思う!?ファックだよ?しかも男とね!!
アンタだってしただろう?俺とのファックはどうだった?また、したい?いいよ?
それ、返してくれればね。」
「アムロッ!!私は・・」
「みんな、好きだよね、ファック。俺、色んな事させられたもの・・・。でも、親父は死んだ。
もうすぐ手術だったのに、あっけなくね。・・・な?神様なんていないだろ?」
アムロは皮肉気に嗤いながら止めどなく涙を溢れさせ シャアを見た。
「発作が起きるとね、アンプルが2本 必要なんだ。 一本、500$のね。 ・・・・ふふっ ふ・・・
それが、一日に何度も起こるんだよ。 ・・・薬がなければっ 死ぬだけだって・・・。」
「アムロ・・・」
アムロの体が震えていた
怒りなのか、悲しみなのか・・・・
「体、売る以外、無かったんだよ!!あんなっあんなことまでしてっ!!
なのに親父は死んで、あんなに必要だった金が、保険金でバカバカ入ってきやがった!!
おかしいだろ?笑っちゃうよな?神なんているもんか!!いたら、俺が殺してやるよっ!!」
「アムロ!!」
知らずシャアは泣いていた。
彼の言葉が辛かった
悲しかった
掛ける言葉なんて、無い。
思わずアムロの体を抱きしめた
彼の震えが少しだけ静まった
雨音が聞こえる
激しい雨音
土砂降りの雨音は、きっと
アムロの絶望の音だ。
「シャア?もう、いいだろ?それを返して、俺とSEXでもして、楽しもうぜ?」
シャアは首を振った。
アムロが優しげな声で続ける
「俺にはね、もう何も無いんだよ?それぐらい、いいと思わない?シャア。」
「アムロ、ダメだ。これは渡せない」
「なぜ?俺はね、もう、全部、嫌になっちゃったんだ。それ吸って死ねるんなら、死なせてよ、シャア?」
シャアは涙を流して彼を見た。
アムロは優しげに笑んではいるが、瞳はどこか虚ろで、それは疲れたような諦めたような、そんな笑顔だ。
はたして自分は彼を助ける事なんて出来るのだろうか?
大きな不安が襲った。
何故なら、きっとこのままクスリを抜いてもすぐにまた始めるだろう。
これから自分のする事に意味はあるのか?
心が挫けそうになる。
(だが・・・・)
シャアは強く思った
自分は彼に生きていて欲しいのだ。
たとえ自分がどんなに嫌われても、彼に生きていて欲しい。
一緒にいられなくても、彼が何処かで笑っていてくれるならそれでいいのだ。
シャアはもう一度アムロを強く見つめ、ゆっくりと首を横に振った。
アムロはシャアに怒鳴ったり宥めたり泣いたりしながらクスリを求め続けた
シャアも首を振り続ける。
それは長く辛い日々の始まりだった。
アムロとの戦いの日々・・・
天が開いて降ってきたもの それは沢山の水の粒
雨はまだやみそうになかった。
ぐあ〜、ひどい話。まぁ、裏なのでお許しいただきたいかと。
だけどね、フフ・・・、そう!実はここが一番書きたかったのです、ワタクシ。
はい、存じてます。私はキチクという奴です。