嫉妬、そして奈落の底へ












何となく始めた遊びだったのかもしれない
切っ掛けは嫉妬 それに酔ってもいた
だから …そう、 ただ 何となく。

「ミロ、…私のミロ。もっと 顔を良く見せておくれ」

俺にサガを重ねたミロが穏やかに微笑んだ。



分かる…

分かるさ。

だって俺には見せない素のままの笑顔

それは、サガに向けている顔だ。



悔しかった



(…お前にだけは間違えて欲しく無かったのに。)



悔しくて…



(そんなにサガがいいか?あの偽善者が?本当に?)



お前は知らないから…

だから、教えてやるよ

おまえに、本当のアイツを教えてやるから。





お前のサガを汚してやりたいと思った。















「かのーーーん!…上までめんどくせぇッ 寝かせろ!」
「おい…クソガキ それは俺のベッドだろうが。ソファで寝ろ!」

ここは双児宮の俺のベッド
あのウワバミのミロが、最近調子が悪かった所為もあってか珍しく酔っぱらっている
だが、その酔っぱらうまでの量もハンパ無かったので付き合った俺も酔っぱらっていて
お互いベロベロになりながらも聖域まで戻り、なが〜い階段をふらふら肩寄せ合って登って
なんとか双児宮まで戻ってくることが出来るとミロが勝手に私室に入りなんと俺のベットに仰向けになった。
普段のミロだったら絶対やらない行為
アイツは何処か遠慮があるので、許可無しに私室に入る等絶対にやらない。
普段の俺だったらひっそりこっそり喜んだだろう
だが、今俺もしこたま酔っているのだ。
どんなに美味しいご馳走があっても、時と場合によるものなのだ!
そのきもちよ〜いベッドは俺の物ッ!!
邪魔なミロを押しのけて俺ももちろんベットに入る。…だってこれは俺のベットだ!

「うう…邪魔だミロ、熱いっ!もっとそっち行け…髪が邪魔だ!!」

ふわふわしながら冷たいシーツを楽しんで、喉が渇いたので水を飲んで服をはだけて転がって。
ミロ、お前も熱いだろそれじゃ と服のボタンを外してやって …気が付いた。
おい…何かすごい事になってないか??コレは…
服もはだけているし。…?脱がせようとしてたのか、俺は???

(お、おおおおおい!?…なんだ?この在り来たりなオイシイ展開は!?)

だが、盛り上がる意識はすぐにアルコールで打ち砕かれた。
……あ、ダメだな。元気など出ない
へたっとベッドに突っ伏して身体を冷ます。
隣のミロは気持ちよさそうにくぅくぅ寝息を立てている。もう夢の中か?

(奴は、起きないだろうな… …何かこのまま寝ちまうのが、もったいない…)

だけどそんな事は知らないとミロは規則正しくクゥクゥ眠る。どこか猫みたいだ。
猫は苦手だが…こんな猫ならば飼っても良い。双児宮にいついてもいいぞ… ミロ…

(それにしても…オン・オフの差がでかいな、ミロは…)

この前の恐ろしい出来事を思い出して、同一人物かと疑いたくなる。
あの、震えが来るような殺気を放つミロが“美しい”なら
このあどけなく微睡むミロは“愛らしい”だ。
サガでは無いが、保護欲はすごくかき立てられる。そういう趣味は無かった筈だが。…オカシイな…

(サガではないが…天使、か。)

無防備なミロのあどけない寝顔
こんなのを見たらサガでなくても騙されるはずだ
ギラギラと燃えるようなあの顔と同じだなどと思えない、慈愛の天使のようなこの寝顔…
優しそうな、(…でも実際にミロはすごく優しいが。)穏やかな、こんなミロも大好きだな…
クセのあるミロの髪を摘んでいじりながら顔を眺めてぼうっとした。

「……………ぅ…にゃ…ぁ………」

!!…何だ今のは!?凄い可愛いぞミロ!!…何だ?うにゃって何だ!?
…あ、ちょっと汗かいてるな。その髪じゃ熱いんだろうな…まぁ、俺も人のことを言えんが…。
額にかかった髪をゆっくりとかき上げて …驚く。
ミロの髪はこんなに柔らかかったんだと…正に猫の毛、良い触り心地。
だからか無意識にずっと撫でていた。慈しむように。…それが奴と同じだったなんて

「…………ぁ、………サガぁ…………」

寝ていたミロがゆっくりと重そうな睫毛を持ち上げて、俺に甘く囁いた。
なんて、顔をするんだ……。

心の何処かがピシリと凍った音がする。
サァッと冷めていく何か。
頭の奥が冷たくなっていく

どうしてかって?
そんなのは決まっている…

だから俺は戯れに兄の表情と声真似でミロを呼んだ

「ミロ、…私のミロ。もっと 顔を良く見せておくれ」

どうだ? 似てるだろう? あの“サガ”にそっくりだろう?ミロ。
散々血反吐吐かされながらやらされ続けたこの猿真似はどうだ?…完璧か?
すると、どうだろう ミロは素直に、俺に、顔を見せた。
普段はどこかひねくれた態度を取るミロが。照れ屋で俺には軽口ばかり叩くあの、ミロが。
素直な、無垢の眼差しがすごく新鮮で。…そしてそれがすごく憎らしかった。

俺には見せたことのない表情
俺に向けられたのではない頼り切った、親愛の笑み

その時俺は無性に汚してやりたくなったのだ

お前の中の、サガを。

「愛しい子… ミロ さぁ、力を抜いて私に身をまかせて」

髪を撫でていた手を耳からうなじ、脇腹を滑らせてゆるくまさぐる
お前はとても綺麗だね 囁きながら身を乗り出して頬にキスを贈り喉に唇を這わす
…なあ、兄と似てるだろう?
お前はしたのか?アイツに色々教わったか?
そのままいやらしく触れると、ミロはハッと我に返って手を払い俺を鋭く睨み付けた

「なにを……!! あ、ああ…ここ、は… ……」

払われた手がじんじんするぐらい痛い
だがそれと反比例した嗤いが口の端をニヤリと持ち上げていく
俺の中で何かがムクリと湧き上がる。懐かしいそのドロドロとしたモノ
それは良く身に覚えのある醜く黒い感情だった。

「………カノン、…」
「起きてしまったね、良い夢は見られたかい?」

未だにサガの真似をする俺に少々たじろぎながらもミロがいつもの調子を取り戻した。
フン、と鼻で笑いじっと俺を見つめてから言葉を発した。

「悪趣味だなカノン、俺の前でサガの真似をしてくれるな」

いささか怒気を和らげいつもの風を装って俺をジロッと睨む
だが、分かるよ? 心がざわついて仕方がないだろう?
寝起きで酒の入ったお前の心はひどく無防備
これではっきりした …そう、薄々は感づいていたのだ。
俺を見ながら時たま上の空になるお前
錯覚して間違いだと気付かず、驚きに見開かれたあの目

お前は、俺に、時々サガを、…重ねて見ているんだろう?

「何故? 良く似ていただろ 甘えていいぞ?ミロ」
「…お前は、サガじゃない」
「そうかな、俺はアイツでもあるのかも知れない」
「バカな事を…カノン、酔っているのか?」
「ああ、酔ってるね。お前もだろ?ミロ。嘆かわしい…セイントが酒に溺れるなどと!」

ここでアイツはははは!とカラリと笑った。
確かにサガが言いそうだ なんて怒りを何処かにふっ飛ばしてカラカラと良く笑う
くるくると良く変わる表情 さっぱりとした性格 火が付くと一気に最高潮まで燃え上がる激情家

…でも知っている
お前の心がふいに空っぽになってしまう時があるのを。
昔を懐かしみ、失った者達に心を馳せて空を眺める時を。

ああ、そうさ。痛みを見せずに笑うのはお前の自由だよ
だけれど、そんな時お前の側にいる俺が苛立ちや焦躁を感じるのだって俺の自由の筈だ。

何故俺じゃいけない?何故俺だけではダメなのだ?
俺がお前に存在を受け入れて貰えた時のあの喜びをお前はどれくらい知っている?

そして不安が襲う
お前、もしかして俺にサガの身代わりを求めているのか…?

答えはない。

悲しさを見せずに空っぽににへらりと笑うお前


…お前の本当はどこにある?



「ミロ、知りたくはないか?」
「……カノ、ン…?」

不穏な気配に気が付いたカンの良い蠍の星の宿命者
身を起こそうとしたが、それを取り押さえてベッドに引き戻す
ああ、逃げるのが一歩遅かったな。身内でもな、気を付けなきゃいけないんだぜ?
サガも良く言ってただろう?

「知りたくないか? 俺やサガを… お前が知らない俺達を…」

双児宮に入ったらなぁ、ミロ…  食べられてしまうんだよ?

「サガを、教えてやるよ」










暴れる身体を押さえつけて愛撫を施す
メチャクチャに暴れ出すミロを押さえつけ舌を這わせて噛みついて痕を残した

「カノンッ …や、やめろっ!? 何をするッ……離せっ!!」
「往生際が悪いな、ミロ 大人しくしてれば天国に連れてってやる」
「…止せ、カノン!こんな事正気ではない!」
「ほう?この聖域の方が俺には正気ではないと思われるがな。お前は女も無しにどうやって憂さを晴らす?」
「何を言っているっ クソッ手を離せカノン…! く、…ああ!」

片手で指の関節を押さえて両手を封じ込み開いた片手で服を引き裂いくようにはぎ取って強引に指をねじ込んだ。
歯を立てたり、身体を擦り合わせたりしながら刺激を楽しむ
ずっと欲しいと夢にまで見た感触に酔いも冷めたのか、すぐに身体が高ぶって雄が硬くそそり立った

「フン、お前は誰とかな、神官ばかりたらし込んでいたのか?美貌の魚座の主とはしたか?」
「クッ……………っ……ぁ痛ぅっ……」
「仲の良かったと聞く水瓶座とは?…フ…それともまさか」
「クソッ…………ぐっ………」

指を三本バラバラに動かしてキツイソコを無理矢理広げる。
ミロが奥歯を食いしばって呻きながら必死で躰を捩って抵抗を続ける
バカ…そんなに動くから切れてしまったじゃないか…
ぬるりとミロのキツイ穴が血に濡れてぐちゅぐちゅと音を立てた。
それに舌なめずりする本能が叫ぶ。早く突っ込んでしまえと

「まさか、サガということはあるまいな?」
「貴様ぁ…!」

ぐわりと紅く燃えさかるコスモが噴きだしてヤツの指先が赤く毒針へと変化した
俺は指を引き抜くと両手で出来うる限りの力でそれを押さえつける。
睨むミロの口の端が上がった…ああ、お前は本当に美しいよ
だから、だからそのままでいろよ?
そのままのお前ならば俺はここで止めてやる。
お前の怒りそのままに、この身に出過ぎた真似をした罰を突き刺させてやるよ

一か八かの賭を始める
スリルは快楽のエッセンス。心と裏腹に身体は勝手に悦こんで一層昂ぶり始めていく
あの、世にも恐ろしい地獄の痛みを味わうのか、お前を屈服させて背徳の悦楽を貪るのか
ギリギリの、このせっぱ詰まった瞬間 堪らなく恐ろしい不安と僅かな希望、裏腹な興奮
頭の中が焼き切れそうな感情で一杯になった。

俺は、ミロの耳元で出来うる限りの優しい声でサガの声真似をする

「ミロ、私を殺すのか…?」

その瞬間ギクリと強ばった身体
驚きで見開かれた青い瞳

「私を殺すのか、ミロ…」
「あ、あ……サ…ガァ」

は、ははははははは!あははははははははははははは!

何て事だろう、おかしくて笑いが止まらなくなった。
そう、俺はサガだよミロ
俺を見ながら目を見開いて切なそうにサガを呼んだミロが、愛おしくて、憎くて、引き裂いてやりたくなった。

「!!!〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜うぐぅッ」
「私がッ…好きなのだろうっ? はッ… あぁ…ほらぁ、ミロ、全部入ったよ?嬉しいねぇ…」

俺はミロの甘い匂いのする耳朶をぎりりと噛んでから、甘く優しくねっとりと執拗に嬲った。
ほら、憶えてるか…?
サガが、一度だけお前にしただろう愛撫
なぁ 懐かしいだろう?



「動かすからね、私のミロ… たくさんたくさん、喜んでおくれ?」



悲鳴を上げて苦しがるミロを、俺は嬉々として犯し始める

それは、長く覚めない悪夢のような日々の 幕が開けた始まりの瞬間だった。












サガが、一度だけミロにした愛撫?   やらされ続けた、サガの猿真似



お待たせしました!物語後半へようこそv
皆様、この話の展開予想はつきましたでしょうか?うへへっ
エロが変なトコでぶったぎれて申し訳ない!では、近日中に後編を〜v

双児宮に入ったら、食べられてしまうんだよ?