故人と友人・過去と現在












ミロと酒を飲んでいるときだった。


「君の髪、これは… 染めてる?」
「そおよぉ?キレイでしょ」
「…ああ。…とても綺麗だ」


ミロに被さってきたのは良くいるフリーの商売女
赤毛の女がミロに被さって誘いをかけてきた。俺の隣に来た奴と二人連れだ
ミロはその女の髪をつまんでじっと眺め、それから頭を真上に向けるとそう言った。
…実に素直な殺し文句

「きゃあ!男前なボウヤ、上手ね〜!! ね、いっしょ遊ばない〜?」

やだ、すごい良い体!とか腕を絡めながら指を二本立てている。
まぁ、そのレベルでその金額だったら破格ってヤツだ。この女の好みだったらしい
ミロは何か考えながらまだ女の髪の毛をいじっている お前、…それは照れているのか?
ムカツキながらグラスに口を付ける。
どうしてムカツクかというと、ミロがこの手の女に褒め言葉を言った事
そして女がミロにあまりにも馴れ馴れしいので。
俺にしなだれかかってくるのは金髪のまぁ、中々悪くない女。
コイツも指を二本立てて俺に言い寄ってきた

「コッチの彼もすんごいイケメン!ねぇねぇアタシとアソボー?」

アンタ達スポーツ選手?とか何とかいいながらでかい胸を押しつけてくる



………………………。



ミロもきっとその気だろう……な…。



…………………



ならば……ちょっと、遊ぶか。

けっこう久し振りだ そう言えば。
最近ロドリオ村の方には行っては無かったし、聖域にこういう所はもちろん無い。
隣のミロを見れば、ちょっと困って俺を見ている


そうか。


やはり生粋の聖域育ちの箱入り坊やは興味はあっても「ハイアソビマショウ」と素直に行けないらしい
ならば経験のある悪い年上として手本を見せるなり消えるなりしなければならないか。

「じゃ、終わったらここで待ち合わせな。
…後で感想聞かせろよ?
「… … …本気?」

本気だ
俺は立ち上がると女の手を取って店を出た。
あの感じでは、初めてって訳では……無さそうだな…絶対。


…………… 
(←ちょっと面白くないカノン。笑)


とにかく、俺は俺で楽しむ事にする。
腕を組んでくる女は顔は並だけど髪がいい。
ミロより色は薄いが、波打つ長い金髪
それなりに楽しめそうだ。



「じゃ、ボウヤ。アタシ達もあそびましょ?」
「……あの、気を悪くしないで欲しいのだが…」







***







「あン、やだ… お兄さんそっちが好きなの?」
「ダメか?」
「い〜わよ〜〜 でも、も一個の方も楽しませてくれる?」
「了解だ」



うねる金髪を後ろから組み敷いて性急に身体を繋げる
もちろん体付きは違う。だが、勝手に姿が重なって妄想が一人歩きを始める
…妙に高まっていく興奮。
こんな風に汚したい訳じゃない こんな風に支配したい訳じゃない。
理想と欲望がごちゃ混ぜになって、でも 勝手に高ぶる自分がいた
一回ゴムに吐きだした後、彼女の希望に添えているときにふと思う

「…あン!すごいっ…っ」

アイツはあの女と どう楽しんでいるのか、と。
どんな顔をして、どんな声を上げて、どこが感じて、どういう風にイクのかと。
それを想像してしまった時には吐きだしていて…。
いつもより多い快感と罪悪感…終わった気怠さにどこかすっきりとした身体


少しだけ…切ない心


そんなもの笑い飛ばしてしまえ、と彼女から抜いて感想などを求めてみた
まあ、分かり切ってる答えなのだけれど

「良かったか?」
「うん……お兄さん、サイコー……」

うっとり微睡む彼女を残してシャワーを浴びた。
何となく顔を合わせたくないのに…早くミロの顔が見たかった。
この矛盾した、自分でもどうにもならない気持ちに自己嫌悪する。
なぜ、俺はこんなに奴のことが好きなんだろう。
本当に何でだろうな、一体…。

…本当に好きなのか? (ああ、好きだ)
それはこういう事がしたいのか? (それは…未だ良く分からないが)

人として、男として好きだ。それは間違えようがないぐらいに確信している。

では、こういう…つまり…したいか。


は、ははは…   はぁ…。


したいのかも知れないな…
最近、違う穴のほうに執心しているのは…間違いなくそう言う事だ。

それに、いけないと思いつつも… 何度か… 妄想の餌食にさせて貰った。
……痛いな、自分。かなり痛いな
不味いな、…とは思いつつ、妄想は勝手に膨らんでいく


(あ、あ、カノンッ そこが…凄くいい! もっとぉ、もっと、こっちもォ!)


あいつは、年下の、しかも男だ。恩もある、初めて大切にしたいと願う友人なのに。
……くそ、考えると涙が出る。
あぁ、情けないな…自分。 本当に、どうしようもないな…


降りそそぐ水の粒を見上げ力なく笑う
全てシャワーで洗い流してしまえとガシガシと身体を洗って女が支度を終えるのを待った。






***






「あれっ?はや〜い!ただいまぁ〜〜」
「???」


? 早すぎないか? …もうミロと女が酒場にいた。
俺の疑問を余所に女達は上機嫌におかえり〜とお互いを笑って迎えている。
雰囲気は悪くないから何も無かった筈は無いと思うのだが、―――何かが変な気がする。
俺が違和感を感じてる間に二人はまたあそんでねぇと手を組んで連れ立っていった
金髪はまたここに来て、と俺の耳元で囁く
赤毛はまた一緒に飲みましょう?とミロの頬にキスをした。

ミロの赤毛に向けた笑顔に 瞬間ズキンと胸が痛むが… そうじゃあ無い。


なにか…おかしい。

…でも、何が?


ミロの隣に腰掛けて…目が見開いた。―――そうだ、これだ!
食べかけたナッツとか、酒のボトルとか、グラスの結露とか。
ミロから水の気や石鹸の香りだってまったくと言っていいほどしないではないか
あの赤毛が言った言葉もそうだろう?
あの女は何て言った??…そうだ。『また飲みましょう』だ!
俺はミロにトイレだとごまかして席を立つ
さり気なく店の外に出て、あの2人に声をかけた
嬉しそうに金髪が抱きついてきたが、お前に用が有るわけでは無い
俺は赤毛の女に聞いてみた。


「なあ、アイツとしなかったのか?」


これに金髪はビックリ。マジ?と赤毛に聞き返してたが、赤毛は困り顔で俺に言った。

「あのさ、彼…ここで一緒に飲むだけで構わないかって…」

赤毛は俺に金を見せた。それは、彼女達の言い値だ。…つまりミロが渡したのだろう

「あのね、彼 ウソかホントかは知らないけどさ。ダメなんだって…」
「はぁ? あ〜〜、キレイだったモンね、男専門?」これは金髪。
「…………嘘だろ…」

まぁ、聖域育ちだし…あり得ない事じゃないが
そういう噂も凄く多かった。
でも、赤毛の女の答えは違った。

「…ううん。不能なんだってはっきり言ってた。
男も女もダメなんだってヘラって笑うモンだから あたし、悪いことしたなって」

その言葉に俺は一気に血の気が引いた それはもう、ざあああっと
確かに、女が言ったとおり方便かも知れない。
コイツが好みじゃなくって、そういう嘘を付いたのかもしれない。
だけれどそれにしてはミロの赤毛を見る目が優しかったし、――――いい感じだったのだ。

「…いや、俺の方こそ悪かったな… 本当に、知らなかったんだ」
「いいって。もらうモンもらっちゃったくらいだし。それよりアンタ達は楽しめた訳ぇ?」
「ちょ〜楽しんだぁ。ね?あんただけカワイそぉ〜彼すごい可愛いかったのにぃ」
「べっつにぃ〜!ま、彼が気を使って損は無かった訳ね。それでいいわよ〜アタシも楽しかったから」

今度は普通に飲みましょうねとの赤毛の女、またね〜としつこいもう一人に手を振って別れた。





――――――まいった。

――――――――――――ミロに、悪いことをしてしまった。





店に入って隣に座り酒をバーテンに頼んで一息入れようと思った。
ミロが酒を飲みながら俺に尋ねる


「で、どうだったんだ?」


聞くな…。
出てきたグラスに口を付けごくりとそれを飲み込んだ。


「…まぁまぁ、だったな……」







飲み干した酒は、酷く苦い味がした。













…ああ。…とても綺麗だ   カノンはどれくらいの経験値?



はい。お待たせいたしました☆この話の最後ぐらいからクエスチョン突入ですv
お話は続きますです☆それにしても私の書くカノンはどうしてもヘタレるのう…。ノンタンファンにはスマン事です(陳謝)
まずは多角面其の一をある方向からの視点で。