故人と友人・過去と現在(5)










「…ミロ?」

あ〜〜、……………… 何か凄い事になってる…
転がっているのはまだ若い神官。何を言ったんだ?お前 馬鹿な奴だ
スカーレッドニードルを食らったのか
ちょっと血が出ているし… しかもそこ踏まれてるし。 鬼だな、ミロよ…
アレは…マジに痛いんだ…
ハンパじゃ無いんだ、…痛みが。
死ぬより痛い!
(←経験者は語る)
海闘士とか聖闘士とかやってた俺がのたうつ痛みだった
コイツは生きているのか??


(…………………………っっっっっ!!)


生きていた!
それどころか踏んでいたのを外したミロの足を掴んで …舐めた!?


な、おおおおおい!! な、何だ一体どういう事だっ!!?
そしてそれを蹴り上げるミロ… モチロン口に。
容赦無いな、ホント なのにどこか嬉しそうな神官…



あれだ…



これは多分、ミロにちょっかいをかけたんだ。



自業自得だ、同情しないぞ?この身の程知らずの変態めっ!(良く考えりゃ俺もか!う〜)
←自己嫌悪
ミロは表立つときはかなり猫をかぶる。普段のへらっとした口調もなりを潜めて慇懃な言葉遣い
立ち居振る舞いにも隙が無く、威厳があり何所か傲慢な言い回しも男らしい魅力に溢れている
つまりこいつらにとってはミロはかなり羨望の的だ
懸想する輩も星の数ほどいるに違いない。
凛としてるクセにどっか抜けてて可愛いしな 色気とかけっこうあって…
あ、これは俺から見たミロか。

そんな事を思う間に怒り狂ったミロが神官の髪を引き掴んで持ち上げた
怒りが過ぎるとミロは口の端が酷薄に引き上がるらしい、ちょっと俺は息を飲む
それは一種独特の魅力を放っていて。…そいつはこれに当てられたのだろうか?

「折檻が足りぬか?生きたまま目玉をくりぬかれ舌を引き裂かれたいかぁっっ!」
「あああアァ!お好きにィ…なさいませェッ…」

…おいおい……どんなSMプレイだ…? 俺はさすがにこういうのは…勘弁だ。
普通でいいぞ?普通で(…男同士で普通もクソも無いが。)
うっとりとした顔のそいつにさすがのミロも気色悪くなったらしく持ち上げていた頭を床に叩き付けていた。
神官が呻きながら何かを呟く

『私のッ心はぁああ、あの時からッッッ』

愛の告白か?…命がけだな。なあミロこんな奴ほっといてとっとと飯を食いに行こうぜ?
そう言おうと思っていたが、続いた言葉に驚いた

「あの時からァ、私の心は貴方の物ォ…うがっ!はっ…ハァ、先々のォ神官長にィ…私は、なりたいッ!」

男が何かを言いながら血を噴き出させた。
それに驚いたのでは断じて無いだろう 俺も、ミロも。それは見慣れた光景なのだから
ミロはその言葉を聞いたとたんにザアアッと顔の色を無くして無表情に立ちつくす
俺はそのミロを見て驚いたのだ
…今、その男は何と言った?
先々…?
神官長…?
男の絞り出すような告白は続く

「ミロ様はぁ…まだ15でいらっしゃった!ウググッ…なのにッ神官長に跪かせたお姿がッ神々しクッて…」

…え?

「……………………めろ…………・っ………」

ミロが呻いて頭を押さえる。唸るように言葉を出した

「傲慢にィ、微笑んでいた…愛撫を施されて…ハッハァッ…貴方の身体がッ濡れそぼって…」

な …コイツは …何を言っている?

だって、だってだ。 ミロは… …そうでは無かったのか?

「…………………やめろ…………!」

ミロを見れば毒々しいまでの紅いコスモを立ち上らせている
だが神官は歌うように続けた。うっとりと、思い出に浸りながら…

「美しかったぁ…すべてがっ!…貴方の裸体、甘やかな喘ぎぃ…はッハハハぁアアッ…あの時から…」
「………………止めろと言っている!」

決定的な言葉
色々なショックと混乱に俺は少し目眩がした
ミロのコスモに当てられたのか…
煙る紅いコスモは…きっと毒があるに違いない。
ミロの目が夕闇色に濡れている…?
恐ろしく禍々しい嗤い。畏怖に値するそれが…俺にはひどく美しく見えた。
ああ、コイツは、この男は幸せかも知れない…

「あの時から……私の心は…貴方のもの……」

やはり、男は幸せそうで…
最後まで見ていたいと。 死の瞬間を見つめ続ける男の憐れな恋慕
それは…はまるでイカロスのよう



じくりと胸が痛んだ



これは、俺の顛末か…?



不相応な望み、手を伸ばせば等しく焼き尽くす紅き太陽 妖艶に笑むお前は壮絶に美しい
伸びる紅い爪 鎌首をもたげたそれが振り下ろされると思っていた



「……………………………ッッッッ!」



だけれどミロは頭を痛そうに押さえると、苛立たしげにそいつを壁まで蹴り上げた

「…狸ジジィに感謝をする事だ。女神にもな …近づけば殺す 2度の慈悲は無い」

何故だ?ミロ、それは、慈悲か?本当の慈悲ならば… いや、俺は何を考えている?

「ぎょ…御意……」

それだけ言って男は沈黙した
憐れだな、お前。望みは叶わなかったな。…お前が死を望んでいたのが、俺には分かるよ。

「行くぞカノン こちらの用は済んだ」

踵を返すミロに俺は並んで歩いた。
何とも複雑な気持ちだ。気持ちが掻き回されすぎて…収拾がつかなくなっている
ミロが何か軽口を叩いたが耳に入らなくて曖昧に返事をした。
くしゃりと髪を握ったミロが何かに驚いて目を見開く。…なんだ、どうした?
言葉には出さずに自己完結したらしい。髪を離して頭を軽く振っていた
幾分か気持ちを落ち着けた頃、ミロがぽつりと俺に言う

「不愉快なものを耳に入れた …忘れて欲しい」
「ああ… … まぁ、 努力してみる……」

それだけ何とか返して、食堂へ急いだ



忘れられる、訳は無いのだが。



きっとシャカが遅いと膨れているに違いない
何となく気まずくなりながらも、ミロと二人で並んで歩いた。









紫色に濡れるミロの瞳   “あの時”はいつの時代?



ふははっ☆読者様の???が目に見えるようです♪
はい、さっぱり意味が分かりませんでしょうね〜 狸ジジィって一体??とかね〜
まぁ 今の所はとりあえずサラッと流してやって下さいv
そして疑問がまたひとつ!あれ?な展開ですね、ウフフ
折檻大好き神官 この後も出番有りだったり
名も無きオリキャラ これからバンバン出てきますんで…許して下さいっっ
何故ミロはこの神官ともめ事を起こしていたのでしょうか?
謎の頭痛