故人と友人・過去と現在(4)












(本当ににスゴイな…。ミロの言うとおりだな、これは…)



教皇宮に入って周りが息を飲んだのが分かった
比喩とかではなくて、ホントに一呼吸飲み込む音が聞こえてくるのだ
…それはそれで何か参るが。
神官共の俺を見る目が違うのが良く分かる
とにかく俺を一目見て目を剥くと、今までのぞんざいな対応が嘘のように丁寧に膝を折る
俺もそれに合わせて柔和な対応で(←もちろん作ってる ミロの為だ。)受け答えすると、
コイツらの表情の変わりように驚いた。…あ〜〜ホントどう思われていた?俺…
謁見を一通り終えたシャカがクスリと笑って俺に言った

「ふむ。君も猫を被るのが上手くなったようだ。その調子だぞ?」
「シャカ、それお前なりに褒めてるんだろうが失敗してるぞ?カノン、シャカはこれでもお前を称えている」
「へぇへぇ、別にいつものことだから気にしてない。でも、これ一枚でここまで変わるとはな」

正直驚いたよ、とミロに言うと彼はくすぐったそうに笑ってから俺を見た

「もっと、早く気を使ってやるべきだった。後悔している…いらん心労をかけてしまったなカノン」
「お前が謝る事じゃ無いだろ …むしろそう言う言葉はシャカ辺りが言うのが筋じゃないのか?」

フン!何故私が君に気を使わねばならん?とふんぞり返ったシャカに
はいはいそーでございますねといつものように次の書類を渡してやった。ポコンと押される金のハンコ

「なあ…カノン、これをどう思う…?ちょっと怪しくないか?」

お、ミロは中々するどい。ミロが手に取ってるのは今シャカがポコンと印を押した書類
それが怪しいと分かるなど、中々有能だな ミロは書類仕事が意外に手際良い
字も綺麗だし数字にも強い。有能な秘書官に俺は大満足だ。

「気が付いたか、それは多分架空の団体だ。で、後から経費をたっぷり抜く算段だろう」
「??それが分かっていて何故許可をする?シャカがもうハンコを押してしまったぞ?」
「いいんだ、途中で中止させるから。尻尾の出し方も目星が付いてるからそこで一網打尽。」

ひゅう〜♪とミロが口笛を吹いてニヤっと笑った。書類を楽しそうに“済み”の束に戻す
何か今日はすいすい仕事がはかどる。アイオリアとは偉い違いだ、アルデバランとも。
あの二人はこういうことはすごい不得手 それはそうだ、俺たちは戦士なんだから
俺は まぁ海底神殿時代に色々やってたいし、こういう事は苦手じゃない
俗物共の考えることだって手に取るように分かる。何故かって…?
そりゃ、俺だったらどうやってちょろまかすか考えれば、すぐに分かるってものだ
ムウは切れるが辛抱がない。シャカは毒舌以外は役にたたん。
くそっ!どうしてミロは当番が少ない?

「さすがだな、カノン。あ、済まないがちょっと席を外す、任せて良いか?」
「ん、何所行く?…便所?」
「行って来たまえ…昼食は一緒にできるかな?」
「そのつもりだが…遅くなるかもしれんし、先に喰ってていい」
「了解だ」

俺を無視したシャカが勝手に話を進めて勝手に送り出した。…面白くない
だから丁度良いかとこの質問をシャカにしてみた。

「おい…何でミロだけ補佐当番少ない?」
「ふむ、彼に仕事を与えすぎると忘れてしまうからな」
「? 何を忘れる?? …ん?…おい、シャカ!もう一個の印は何所にある?」
「知らぬ。寝室あたりだろう」

ちくしょっ!取ってくるから寝るんじゃないぞ!!とシャカの(教皇の)寝室へ向かった



「あの男も不器用だからな。仕事を始めると悲しむ事を忘れてしまう…」

質が悪いのだ…とシャカは水をひとくち口にするとカノンが来るまで瞑想でもするか、とため息を付いた




シャカの寝室で紛失した印を探しまくる
どうしてシャカの奴…こう大事な物をその辺にほっぽるのだろうか 凄い腹立たしい!
寝室のサイドボードやらあらかた探し終えると、不意にベッドの下で光る物を目に入れた
…チクショウ!こんなトコに落としているんじゃない! ?……んんん!?
ベッドの下に…謎の…木箱が

??

…オイオイオイオイオイオイオイ!?


(これはまさか……嘘だろ? あの、シャカがか!!??)

分かるだろう?この反応で分かるよな??ベッドの下にあるお決まりの物って奴が!
まだ見てないが、多分アレだ イカガワシイモノ。
エロ本、アダルトグッズ、エトセトラエトセトラ……
やばいな 俺はシャカの秘密を知ってしまうのか?
シャカの俗物ッぷりを見てしまうのか!?

まてまてまてまて…もしかしたらあの箱の中身 …寺の写真集とかだったりして。

いや、それじゃベッドの下に隠す意味無い
普通エロ本ゴム・バイブ・ローション?考え過ぎか??
いやいやいや!
あそこから声は聞こえはしないかっ!?捨て猫とか、何かありそうな展開だ
ああ〜〜〜ダメだな
泣き声どころかピクリとも気配など無い

…死体とかじゃ、無いよな。まさかな…

俺は迷ったが…箱を手前に引き寄せた。
さらば! 不思議少年お釈迦クン…



…??

あああああ〜〜〜〜やっぱりシャカは謎だ
謎が謎を呼びまくった不思議お電波様だ


箱の中身はかなり重〜い鎖
じゃらじゃらじゃらり。


…ちょっと待て
…コレ、何か血とか付いているぞ……??


しばらく思考がフリーズしたが…止めよう。
考えるだけ無駄なのだ、シャカの事は






***






やはり眠り始めていたシャカを叩っ起こし(あまり乱暴に起こすと魍魎とか出るので注意)
各地の神官達が寄こしたレポートを読みふけってシャカと対応を相談する(一応な…)
ちっ…やはりミロは便所では無いようだ…全然帰ってこない。
何をしに行ったかシャカに聞いても…

「知らん」

と言われた。何!?お前知らなくて許可など出していたのか!?嘗めてるのか??
それにしても…コレばかりはどうしようも無いな。
各地から寄せられる異変や怪異。調べようにも圧倒的に聖闘士が不足している現状だ
生き残った銀や青銅達に振り分けてはいるのだが、いかんせん聖闘士不足が痛い
逆に雑兵&候補生は増えているので空席の聖衣だけでも授ければいいのだが…

「なぁ、聖衣授けて聖闘士増やさないか?」
「ふん…その様な力のある者がいればとっくに授けている」

これを聞いたら期待を大にして待つ雑兵・候補生は泣くだろう(黄金狙ってる不届き者までいるが)
まぁ、シャカの言うことは有る意味正しいが、それよりも実は天秤座のじぃさん(童顔だが。体が俺より若いって本当だろうか?)
…に固くStopをかけられているのが大きい。何故かは知らないが待ての一点張り
聖衣も壊れたままの物が多い。ムウは頑張ってはいるがさすがに黄金復元までは無理なようだ
木っ端微塵で手元に欠片も無いからな…本当に、どうするんだ?
その時ノックがしたので声をかけると給仕長が昼食ですと告げた。あ、もうそんな時間か

「お食事の用意が調いました…どうなさいましょう?」
「シャカは先に喰っていろ、俺はミロを探しに行ってくる」
「…待っているから早く呼んで来たまえ」

昼飯は何故か3人で食べる事になっている。これも前に決めた事らしい。
せっかくのミロとの楽しい食事なのだからモチロン呼びに行く
だけど待つなんて珍しいな、シャカよ。…もしかしてミロと仲が良い?
どうだろな…きっとコイツにしたら世話焼きのミロなど良い感じの従者ぐらいにしか思って無かったりな
とにかくお許しを頂いたので、書類をその辺にうっちゃるとミロを探してひた歩き

「ミロ、いるか?」

声をかけて扉をあける …何と原始的な。黄金聖闘士と言っても万能じゃない
あいつ、あまりコスモを外に出さない体質らしく捜すのにかなり苦労する
激昂すると周りが見えなくなるのがリアとミロだといつかあのムウが言っていたが、普段の二人を比べると真逆だ。
アクティブな感情のままのアイオリアに比べ ミロは大人しかったりする。妙に気配が薄い
そして品行方正、優等生 …まぁ、火が付けばギラギラと凄いのだが。
それは俺が きっと一番良く知っている

………!っ…

……あ〜〜あ、…これはまた…凄いな…


「誰が、怒らせたんだか…」


煙るようなギラギラと立ち上がる紅いコスモの気配…もちろんミロの
これは相当の怒りようか?
う〜〜辺り一面血の海だったりして
ミロは普段大人しく辛抱強い。
だが一旦火が付くとそれはもう激しいのなんのって

とにかく俺は紅いコスモを辿って怒り狂うミロを捜したのだった。











老師の、現状維持を貫く通達は何のため?   木箱の鎖は、どうやら普通の金属では無いようです。



シャカとカノンの日常でした。それにしてもノンタンよ、シャカをどう思っているのだね??
さてこの後どうなるのでしょうか??カノンが目にする景色はどんなもの??
シャカの木箱の謎は後の方で謎解きを。ミロとシャカの関係は?と念頭に入れておくと楽しいですかね
ミロの小宇宙が漏れにくい設定は独自の見解を入れています。それも話の軸に入ってくる?