幼き日の思い出 (6/Sideムウ/教皇シオン存命中) 井戸の迷宮は意外にもあの教皇宮の地下にも繋がっていて。 シオンに地下の修練場の井戸水で服のままおおざっぱに丸洗いされてため息 「お前達、あそこの事は忘れるが良い」 あの場所で見た物は他言無用だと師は告げ、私達に了承を取ると無言の制約を手の平にそっと刻んだ そして臭いが消えないまま地上へと放り出される。禁書の部屋を抜けて右、右、左、上。 秘密の通路を使って出たのは巨蟹宮にほど近い場所。遠くサガの私達を呼ぶ声がした ミロが一目散にその声のした方へ走った。まるで犬です、と、さっきの事を忘れて私はミロを蔑んだ もう陽が傾いてあかね色の空をしている だけれど私も渋々ミロの後を追った。 どうせ帰る場所などありはしないのだ あそこ以外には。 その後知った事だが、あの時手に刻まれたのは禁忌の術のひとつ 無意識の底に秘密を沈ませる、不用意にその事を口にしなくなる そんな一種のまじないのようなもの あまり大したことは無い代物。何故なら話せない訳では無いのものだから (喋ったら、それが術者に伝わるようには出来ていますが) まぁ そんなこんなで、半濡れ状態で(しかも匂う)地上に戻った私達が目にしたもの それは半狂乱に私達を探すサガの姿だった 「…………ムウッ ミロッ!」 私達を遠目で見付け狼狽するサガ そんなサガを私は初めて見た。 私の知っているサガは、いつも澄まし顔をしていた。そう、どんな時でも。 難解にぶち当たっても取り澄まして微笑む。不快な事があってもせいぜい眉を顰めるだけ いつも表面的に優雅に笑って、他人を寄せ付けない。深い所には、決して。…ミロ、以外には そんなサガがアイオロスに励まされながらフラフラになりながらも名を呼び目を血走らせ取り乱れている (…ミロ だから) それに私は鼻白む。いなくなったのがミロも一緒だからだろうと思ったから だけれど。 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜馬鹿!何処へ、何処へ行ったかとっ」 だけれどサガは私達二人をぎゅっと強く抱きしめた ひとしく、真剣に。 しかも、濡れてて酷く匂う筈なのに。サガの纏う服も、濡れてしまうのも構わずに。 そしてその手は震えていた 指に髪が絡むのもお構いなしでミロも私もサガに苦しいぐらいに抱きしめられた それに心の何処かが溶け出していく。 サガの匂いがする それに心の何処かがほっとした 何故だろう。 彼が嗚咽する 小さな、本当に小さな声で“良かった、生きてた、大丈夫、良かった”とまるで自分に言い聞かせるようにくり返し呟く アイオロスがサガの肩に宥めるように手を置いて、私達に声を掛けた 何時の間に仲良くなったのだろう?サガとアイオロスは。それは仲の良い親友を労る仕草 気心の知れた友人を労る優しい笑顔 「チビ共、あんま心配させるな〜!サガがな、ずっとお前達を探しながら終いには自分を責めだして大変だったんだぞ?ムウ!ミロっ!てさ」 何だか、泣きたくなった。彼の服に身を埋めた 心の中で謝っていた。ごめんなさい いままでごめんなさい、サガと。 だけれどサガは変なところで意固地だと思う。 優しく笑んだ後、私達を突き放して雷を落とした 「歯を食いしばりなさい!」 「え?お、おい、サガ!?」 鬼のような形相で私達を睨むと、それに怯むアイオロスを無視して私達二人を平等に平手打ちした。 それはもうメチャクチャ手加減なんて無い、激しい痛みの平手打ち。 (アレは常人だったら即死だってあり得るのではと思うほど容赦が無いものでした) 当然、私達は大泣き。ミロはビービー泣いて、私もその時ばかりは大きな声で泣いた 痛みと、恐怖から解放された事と、私をちゃんと心配をしてくれたという事がどこまでも嬉しくて その後ミロと一緒に小一時間ほど説教をくらい、サガにのぼせるくらい風呂場で何度も洗われて。 でも、楽しかった。その日のご飯も美味しくて。それからはすんなりと穏やかな日常が溶け込んだようだった アイオロスに『肥だめなんかに落ちるなよ』と笑われた。きっと師がそう言ったのだろう ミロの指先がずたずたになっていた。痛そうだね、と言ったらミロが小宇宙を燃やして爪をニョキッと生やした ミロも驚いていたので、きっとあの技はあの時の事がヒントにでもなったのでしょうか。 相変わらずサガの風呂は長かったけれど、シャボン玉も好きだし 逆上せる以外は苦痛では無くなっていた。 |
後一話でムウ様サイドのお話は終わりです。エロ無くてホンっトスンマセン(笑)
この後イタイ話続くんで緩衝材として入れたんですが思いの外長くなっちまいました
はやく一章終わらせて、色んな聖闘士書きたいですv
肥だめの真実。