幼き日の思い出 (1/Sideムウ/サガの乱直後) 緊張が走る。 今、私は警備の硬くなった教皇宮の秘密の通路を忍んでいるのだ。 すっかりと閉ざされたこの空間 だけれど端々の封鎖は行き届いていなくて それが疑惑を強固にした。そしてその確信が深まればこの湿った闇がさらに牙を鋭く尖らせた 自分の息がウルサイ 闇に呑まれてしまいそうな威圧感を受ける そう、この地下道はあの偽物に気が付かれているから封鎖されたのだ。 でも偽物なので師が使っていた隠し扉の幾つかを知らない だから…ほら。こんな大事な通路を塞いでいない 教皇は偽物だ。あの師・シオンの筈がない 所作が違う 小宇宙が違う 私を意識的に遠ざけている 疑惑は今や確信に。アイオロスやサガがいなくなった混乱はどこへやらの 未だ穏やかな聖域に、危機感を抱く者はいないと言っても過言ではない。 角を曲がる度に得体の知れない何かに出くわすのではないかと不安に駆られる 得体の知れない何かは強大で、今の自分では太刀打ち出来そうにないのだ。 あの偽物は強かにこの聖域を手に入れた。 (どうやって…? そしてシオンはどうなった?) 誰も疑わない。おかしなくらいにすんなりと騙されている。 (何故気が付かない?仮面ひとつで隠せるものでもなかろうに…) 誰かが味方をしている? それは誰が? 黄金聖闘士の何人が? 気が付いていないだけ? いや、そんな筈はない… 疑惑は何所までも広がって口を重くさせただけだった。 ただ、駆られる不安のままこの地を離れようと思った 日に日に嫌な予感が増す。夢見も悪い だけれど疑惑を確信に変える一手が無い (良かった… まだ、ここにあったんだ…) 隠し部屋を開けて ここにきた目的、思い出の品を手にとって思わずため息が漏れた それは師・シオンとの思い出の品 自分が初めて仕上げたオリハルコンの腕輪 せめてこの地を離れる前に、これだけは手にしていきたかったからここに忍んできたのだ そう。今の私では力不足 ならば力を付けるまで、疑惑を明るみに出来るまで、忍び耐えるしかない。 犬死にしては、それこそ師は嘆くだろう どれほど時間がかかっても どれほど忍耐を強いられても。 私は時を待つ。 もうその覚悟はした。 私は牡羊座の黄金聖闘士なのだ 私は明日、そっとこの地を離れジャミールで機を待つつもりだった カサ… (…………!!) ほっと息を吐いたのも束の間の事 一気に緊張が駆け抜ける 微かに衣擦れの音がした 微かだったが間違いない ここは教皇しか知らない秘密の地下道 だけれど教皇シオンは何物かが取って代わっている(もしくは操られている?) ではこの衣擦れの音は? …それに黄金であるこの私がこの距離まで気が付かないなんて、異常だ…! 最大限に気配を殺し、身を潜めてやり過ごす どうやら相手は自分の気配を感じ取ってここまで来たらいいが気のせいだと思ってくれたようだ 闇色のマントを纏った相手 身の丈が私とそんなに変わらない事が異様だと思った (…身の丈が低い…子供?…………いや、年より…だろうか?) ソイツは所々血の滲んだ身よりも大きなずた袋を抱えているのに殆ど音を出さずに動く (あれは…人間…?) ボロ布の端から人の手が見えた。つまり荷物は動かない人間、多分死体と言うことだろう それと同時に闇色のフードからチラリと金色が零れる (………………………!) 垣間見た相手 一瞬だったが見間違う筈はない それはいつも外で目にする無邪気な彼とは対照的な面持ち ゾッとするくらい無表情な、………蠍座のミロだった。 |
いきなりSideムウのお話。時間も結構飛びますので混乱される方多いかな〜…
これより先捏造設定が激しくなります。あ、今回はエロくないっす。ホント裏なのにどうよコレ
一応謎解きなのでその欠片をば。
サガの乱直後に死体を抱えていた(?)ミロ。
しかも教皇とその一部しか知らない通路を。ムウが勘違いしてもそれは仕方の無かった事