小さな幽霊の物語
「ミロ、支度は出来たかい?」
黒い衣装に身を包んでにこやかに笑うサガ
キラキラ キラキラ みんなお化けの格好で ニコニコ ニコニコ
カミュはドラキュラ(でもどらきゅらって何かな?)
デスは包帯でぐるぐるぐる(なんの格好ぉ?)
とにかく楽しくてはしゃいだ でも こんな風に楽しんでも、いいの?
「みろ、はやくお菓子を取りに行こう!おばけだぞ〜〜ってやるんだよ?」
「ウン!!」
カミュに連れられて夜の闇を走った 満月がとっても大きい
(おれ 得意 ばけものって 良く言われるモン)
でも何でお菓子をくれるのか分からなくって首をひねる
いつもそんな時は 相手はガタガタ ブルブル それか 睨んでる
ばけものがぁ…
この、ばけものぉ
ケタケタ笑うと相手は怯える それが可笑しくてよけいに笑った
今日もそんな感じ? 分からなくて また 首をひねった
月が赤くて大きくて 風がざあって吹いて 手が血に濡れてる見たいに感じて シーツで手を拭って
「あみゅ、かみゅう!?どこーーーっ」
いつの間にかカミュとはぐれていた
困った これじゃあどうやっていいか分かんないよぉ
ミロはランタンの小さな灯りを心許なく眺めて
白いシーツを捲って一緒だったカミュを探した。
だけれど完全にはぐれたようで、ウロウロとさ迷えば人気のない場所まで来てしまう
(もしかして、このまえいっぱい殺しちゃったから…お菓子 貰えないのかもぉ)
(女神が、悪い子メッて サガみたいにしてぇ だからかみゅとはぐれちゃったのかなぁ)
夜の闇は不安をいっぱいに膨らましてミロにそっとのし掛かる
やがてミロの心は寂しさではち切れそうになった。
蹲って白いシーツを頭の所だけ外す
自業自得だけれど、ちょこっとだけミロは今までのことを後悔した
(おれみたいなのは、お外にでちゃ だめなのかな…)
従者がこっそりと話していた言葉が甦って しんみりとミロの心は冷たくなった
その時ふと遠くに ぽわりと温かそうな光
見付けたオレンジにミロはフラフラとそこを目指した
(かぼちゃ?)
カミュはドラキュラだったから、カミュではないと分かってはいた
だけど、その楽しそうに、軽やかに駆け回るカボチャに なんだが引き寄せられてしまった
そのカボチャは楽しそうに踊ってる
でも何だかミロには泣いてるように見えた
(君も寂しいの?)
何だか、ほっとけない様な気がした
「こんばんわぁ」
声をかければカボチャは立ち止まる。じっと自分を眺めてウロウロ
(にゃんこみたい)
目を丸くして大きなカボチャを見上げた
一通りぐるぐる回るとカボチャは言った
「トリックオア、トリート」
「?」
ミロは首を傾げた。自分が言われるとは思いもしなかったのだ
それからどうしていいかも分からなかった こういう場合どうしたらいいのだろう?
「菓子をくれなきゃ、悪戯するぜ」
だけどミロはまだお菓子を貰ってなかったし
どうしていいかも分からなかったから
「ウン」
と一声
泣いたようなカボチャお化け、その彫られた笑みのように笑う
カボチャから飛び出た青い髪 くりぬいた隙間から覗く顔立ちは良く知る人物なのだけれど
(さがぁ?)
違うような気がした
でも、嫌な感じはしなかった。
笑んだ表情は狂気に濡れていた
何だか自分に 少しだけ似てると 思った
(君も 寂しいの?)
マントの中に引き込まれる 触れる手も 嫌じゃ無かった
「取引、しようか?」
こくりと頷く
「俺の魂が欲しい?」
じん、と胸が熱くなる
魂
それは誰にも手に入れられないきらきらの宝石
ミロにはそれが良く分かっていた
肉を引き裂いても 発狂するまでいたぶっても けして手に入らない至上の宝
だから、
「その代わり お前の体は俺の物…!」
…こくりと頷いた。 どんなことをされてもへっちゃらだった。
「ミロ!?ど、どうしたの?血が出てる!」
カミュがミロの分もと貰っていたお菓子を放り投げてフラフラした足取りで戻ってきたミロを抱きしめた。
ミロの纏っていたシーツは所々引き裂かれ、何処からか鮮血を出している
だけれどミロはキョトンとした顔のあと、ニパッと笑ってお化けにあったのと笑った
事態に気が付いたサガが真っ青になって駆け寄り、ミロを抱いて風呂場に連れて行く
サガの想像通り、ミロは手ひどい悪戯をされていた。
それに憤り、悲しみ、ミロを癒そうと優しく触れて何があったか聞き出そうとしたのだけど
「おばけとぉ…取引したの!」
何を聞いても、ミロは頑なにお化けに合ったのとだけ告げた。
HAPPY HALLOWEEN??
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