NOVEMBER RAIN 3
夜が深まった窓の外には大粒の雨音が響いている。
過ぎた快楽に失神したようにぐったりしていたアムロは先程目を覚ましてから
重そうに体を引きずってシャワーを浴びに行った。
先にシャワーを浴びていたシャアは、ベットを整えてアムロを待つ
・・・彼が待ち遠しい。
体は疲れている筈なのに、心が騒いでしまってソワソワと部屋の中を歩く。
(少しでも彼と離れているのは辛いな・・・)
そんな事を思いながら、ベッドサイドにミネラルウォーターを置いた。
今日は彼にしてみたい事がひとつある
弾む心を押さえるように羽根枕を抱いて、早く来てくれとシャアは願った。
深いグリーンに金の縁取りのバスローブはアムロの体に少し大きい
着崩れてはだけた首や胸元、歩く度に覗く太股から水がまだ滴ってシャアを煽る。
灯りそうになる欲望を鎮めようと、シャアはアムロからタオルを奪い取り少し乱暴に彼の体を拭った。
・・・・アムロは体を拭くのがヘタなのだ。
水を含んで色を濃く見せる茶色い髪を丁寧に拭うと、アムロが擽ったそうに身をよじる
だがこうされるのは嫌いじゃ無いらしく、くすくす笑って体を預けた。
とっくに何処かへ消えた湿布と包帯をまき直し、シーツの海へとアムロをさそう
とろりと微睡んだアムロの体は、なんだかくにゃりとしていてシャアの自由にさせてくれる。
シャアはアムロの体を抱きしめて、沢山の慈しむようなキスの雨を降らせた。
この時間が、シャアをとても幸せにしてくれる
毎日に少しでも彼を感じられたら そう切望してやまない
今日はその告白をしようと思っていた。
人よりは随分と早いとは、そうは思う。
だが溢れる気持ちは乾きを知らぬように心を満たし、もう彼の無い人生なんて考える事が出来なかった。
(私は愚かなことを考えているのだろうか?)
ならば恋愛とは何と愚かで、何と幸せなのだろうと シャアは心で笑った。
あんなに味気なかった毎日が、こうも輝いて見えるのだ。・・・・永遠を願って何が悪い?
シャアは心を決めるとアムロに思いを込めた濃厚なキスをして目覚めを促した。
「アムロ。少し会話がしたいんだ、起きてくれないか?」
アムロはとろんとした目でシャアを見た。
必死に瞼を上げようとする様はとてもあどけなくて、シャアの心を綻ばせる
・・・年より幼く見える彼が愛しくてたまらない。
アムロがすこし掠れてしまった声で問いかけた。
「・・・・・いいよ、何を話したいんだ?」
シャアはいきなり深い話をするのも気が引けてさり気ない言葉を選ぶ
「君のことを聞いていいかな、アムロ」
アムロはうぅんと眉を寄せ、不機嫌そうな表情で目を覚まさせた。
「・・・・・・・いいよ、何が聞きたいのさ」
「何でもいいのだよ・・・そうだな、たとえば君の生まれた所とか・・」
アムロは俯せのままシャアを横目で見て、「そんなのどこでもいいだろ?」と答える
「じゃあ、君の名前は本名かい?」
「・・・・何か不都合があるのか?」
「・・・・・いや、 では君の家族の事とか・・・」
アムロの体が強ばった様に感じたあと、彼から大きなため息がもれた。
「シャア、そんな事知ってどうする。関係ないだろ?・・・・・俺がお得意を作りたくないのはね、
こういうことを聞かれるから。 詮索は無用だよ?お互いの為にね。」
「そうではない、 すまない。詮索をしたい訳ではないんだ。」
シャアは慌ててそう言った。どうやらアムロの地雷を踏んでしまったようだ。
シャアは心を落ち着かせてどう言えばアムロに伝わるか考えた。
・・・・・この気持ちを伝えたい。
「・・アムロ、私と暮らさないか? 一生を君と分かち合いたいと思っている。」
アムロが私を驚いた顔で見た
「プロポーズなんだ、もう君なしの生活は考えられない。・・・ずっと傍にいて欲しい」
「・・・ちょっ、ちょっと待てよ、シャア。本気か??・・合って一週間の、俺は男娼だぞ!?」
「解っている。だが、本気だ。 ・・君と初めて合った日から考えていたことだ。君の力になりたい。
すぐに返事が欲しいとはいわないが・・そうだな、来週の17日、私のバースデーでね、
その日に返事が聞ければ嬉しいのだが・・・・。」
アムロは一気に顔が熱くなるのを感じると、半ば混乱しかけた頭で考える。
・・・・・・まさかプロポーズを聞かされるとは思っても見なかった・・・
シャアの造形はとても好きだ。声も髪も心地よい感触を与えてくれるし。
ああでも、SEXはちょっと好みじゃないな。
シャアはしつこすぎるんだ・・って何考えてるんだ俺!まず、男同士だろ!!
一人つっこみを入れつつシャアを見れば、
彼は落ち着いた口調とは裏腹に緊張と興奮で頬を赤く染めていた。
・・・・・本気なんだな、とアムロは思う。
「アムロ、永遠に君を愛するよ。どうか私の伴侶になって欲しい。」
そこでアムロは パチンッ と夢から覚めた。
自分の手を取る彼を何処か遠くで見ながら、アムロは現実に思いをはせる。
・・・彼は嫌いではない。だが、好きとか嫌いとかそう言うことでは無いのだ。
色々問題はあるが、アムロはこの先のことなんて考えられない
未来がまったく見えないのだ。
これからの自分の運命ををいくら想像してみても、
アムロには一筋の希望以外はどの先も真っ暗闇だ。
永遠と言う言葉は、正直信じられない。
・・・・それに、自分は永遠にこのままなのでは? という不安も煽った
「アムロ・・・?」
先程とは雰囲気が変わったアムロに気がつき、シャアは声を掛けた。
アムロは悲しいような苦しいような、何ともいえない複雑な表情でシャアを見てから、
無理に笑って口を開く。
・・・・・初めて見るアムロの、暗く底の見えない瞳の色にシャアは息を飲む。
「永遠、って言葉は、嫌いだな・・・」
それだけ言って沈黙が続く。・・・・・・その時
ピ―― ピ―― ピ―― ピ―― ピ――
何かの電子音が鳴ると、アムロがガバリと飛び起きてリビングへ走って行った。
シャアが覗くと、アムロはズボンのポケットからポケベルを取り出していた。
(ポケベル? アムロは携帯を持っていたはずなのに・・・・。)
不思議に思っているとアムロが急いで身支度を始めた。
よく見ると顔が真っ青になっている。
「どうした?」と聞いても「悪い、帰らせてもらっていいか?」と答えも聞かずに扉を出ようとする。
シャアは慌てて少しの静止を求め、自分のマフラーと手袋を用意した。
彼が身に付けている間に、多めに紙幣を入れた封筒と傘を手渡す。
封筒を受け取ったアムロはひどく悲しげな表情を見せた。
すぐにエレベーターに乗ってしまったので何も聞くことは出来なかったが、
アムロは時々報酬を渡すときにあんな顔を一瞬見せるときがあった。
(何故だろうか?)
答えは無いが、シャアは次に逢ったときに聞こうと考えた。
彼のことをゆっくり知っていけばいいと、そう思ったのだ。
窓からかろうじて見える場所で、アムロだろう人影が慌ててタクシーを捕まえるのが見える。
あんなに急いでどうしたのだろう?と思う反面、彼に気持ちを伝えられた達成感に胸が一杯になる。
―――――― この後、彼と連絡が一切取れなくなるとは知らずに・・・・・。
シャアは自分の気持ちをアムロに伝えられた安堵感に包まれて
11月の冷たい夜の雨を、暖かい部屋からボンヤリと眺めた。
その、とても冷たい雨に彼の最愛の人が打たれていることも知らずに・・・
リビングの片隅から、今までよりいっそう強い香りが広がった。
「そう言えば、渡すのを忘れてしまったな、」
ユリが大振りの花弁を綻ばせ、その夜に大きな花を開かせた。
11月11日 END
あり得ないだろ・・・こんな急なプロポーズ・・・。(しかも男同士。)
まぁ、お話ですんでご容赦くだせぇ。そんでもっていよいよ”転”へ突入!
私、前々からエロビデオの監督になることが有ったならば”泣かせるポルノを創って見てぇ!”
そう息巻いておりましたが・・・
書けるのか・・・・?自分・・・?泣かせることなんて出来るのか?・・・自分!
やるぜっ!やってやんぜっ、こんちくしょうめがっ!!!
そう自分を奮い立たせてがんばります。