NOVEMBER・RAIN 11月11日
貴方の言う「永遠」は何処に繋がっているの?
あてのない 気の遠くなる様な話は もう止めて。
『アムロさん、こっちには戻れないんですか?・・・そうですか、 残念です。』
用事を済ませた俺は切っていた携帯の電源を入れると、大学の後輩で親友のカミーユに電話を入れた。
今日は彼の誕生日なのだ。
「ごめんね、カミーユ。 それと、おめでとう。 後でプレゼント送るよ。」
『いいですよ、それより根を詰めすぎない様にして下さい。それからプレゼントでしたら大学に顔出して下さいよ、
単位が足りてるのは知ってますけど見て貰いたい物があるんです。』
近々顔を出すよ、と約束をして電話を切る。
携帯のディスプレイにメールの着信表示 ―――――仕事だ。
アムロはメールの痕跡を消して目的地へと向かった
仕事の相手は、最近自分を頻繁に呼び出す美しい金の髪の男。
自分の相手は年配が多いのだが(一晩4千ドルを払える若い男はそういない)
彼は若く、気前も良く、容姿もとても美しかった。
・・・・・その分、性欲は旺盛でとても疲れてしまうのだが。
空を見上げれば灰色の雲の絨毯 雪が降り出しそうな寒さだ
アムロは手袋の上から手をすり合わせると、2ブッロク先のスターバックスに寄ろうと歩き出した
冷えた体を、コーヒーで温めようと。
しかしアムロはこの判断を後悔することになる
スターバックスからコーヒー片手に店を出ると、かつての客 ジャミトフ・ハイマンが腕をつかんだ。
* * *
パシャン パシャン と音が続く
チチチチチとフラッシュに電気がチャージされる高音が続いた後、バシャンと大きな光がはじける。
シャアは人工的な風を受けながらホリゾンの前でナチュラルなポーズを創ると光の洗礼を受けた。
・・・続くフラッシュに、少し目が痛い。
「OK!!お疲れさまでーす」
その声を合図に一斉に人々が動き出す。 シャアも例外ではない
そのシャアに現場チーフが声を掛けた。
「良かったよ!最近、特にいいね。雰囲気がとても柔らかくなった。・・・恋人でも出来たのかい?」
鋭いな、とシャアは心で苦笑いして 「まぁね。」と軽く流す。
次はガルマの撮影らしく彼がスタジオに入ってきた。
「シャア、上がりか?少し待って私の食事に付き合えよ」
「悪いな、ガルマ。実は急ぎの予定が入っている。食事は他の誰かと取りたまへ」
君が用事なんて珍しいね、などとガルマは茶化してから
あの、いたずらっ子の様な顔をしてシャアに訪ねた。・・そう言えばガルマとはあのとき以来か。
「残念だなぁ、僕は食事を取りながら、あの後の顛末をぜひ聞きたかったのに。」
(・・・・・しゃべれば食事どころじゃなくなるぞ??)
そんな事を思いながらシャアは、親友をからかう事にした。・・・・この前の仕返しである。
「ガルマ、この前はすまない。感謝している・・ 」
愛しているぞ・・・と抱きついて耳もとに囁けば、案の定ガルマは耳を押さえ口をぱくぱくさせた
周りから「おぉー」とか「キャー」とか聞こえ出す。
「では、失礼。相手を待たせたくないのでね」
笑って、真っ赤になっているガルマの頭をぽんぽんと叩いてスタジオを後にした。
後ろから 「シャアッ!!」と怒って声を出すガルマに後ろ手で手を振る。
感謝しているのは本当だ、
何と言ってもアムロに合わせてくれたのは彼なのだし。
手早く着替えて家へと向かう。これからアムロと逢うのだ。
もう彼は家に着いているだろうか?
* * *
灰色の空の下、シャアの足取りは軽やかに家路へと向かった。 家はすぐそこだ。
途中で強い香りに目を奪われた。花屋にたくさんの大きな白い百合。
これから咲き誇るであろう大きな蕾の百合たちは、
綻んで間もない花弁の隙間から強くて華やかな、それでいて清廉な香りで シャアを引きつけた。
(まるで彼のようだな)
シャアは、初めてあった時のアムロの横顔を思い出してユリの蕾にキスを一つ落とした。
店員に全て欲しい旨を伝えると、彼女の顔が赤いのに気付く
どうやらキスを見られていたようだ。
沢山のユリを抱えながら家へと歩く。
すると、少し先に見慣れた人物が誰かと・・・・争っている? ようだ。
(アムロ?)
早足で歩きながら眺めると、
仕立ての良い服を身に纏った初老の男がアムロと言い争いをしていた
何か言われたらしいアムロが、カッと顔を赤くして彼を殴ろうとする。
が、反対に手を掴まれた。
その時、男がアムロのコートに何か忍ばせた様に思ったが、・・・それどころでは無い!
アムロは横に停めてある車へと引き込まれそうになっていたのだ。
「失礼、彼と私はこの後約束をしていてね。 何をしているか聞かせていただけないか?」
間一髪、アムロの腕を掴んで車内の男に声を掛ける。
男は忌々しいと自分を睨んだ。
黒いロールスロイスには運転手もいるのだが、男は構わずアムロに叫ぶ。
「こんな若い男を咥えこんだか!!来なさい、お前を満足させられるのは私だけだ!!」
「何を!!俺に何をしたのか解っているのか!?貴方とは二度と会わないと言ったはずだっ!」
アムロはシャアの助けを借りながら車内から出ようとするのだが、ガッチリと掴まれた左腕が離れない。
男は苛立ちながらアムロの腕を力任せに引いて、耳元に低く呟いた。
「もう体は欲しがっているはずだ、強情はやめて言うことを聞け」
「―――っ!! ふざけるなっ!!」
アムロは強引に腕を引いてシャアの方に倒れ込んだ
スルリと皮の手袋が抜ける
ジャミトフはチッ、と舌打ちをして「だせ!」と運転手に告げた。
ドアが閉まる前に苦々しくアムロに呟く。
「アムロ、お前の欲しい物を用意して待っている。いつでもいいから来なさい。」
「誰が行くものか!!」
やっと車が行ってシャアとアムロは息を吐いた。
幸い周りに人は少ない
痛そうに手を竦めるアムロを見れば、手首が赤く腫れている。
・・・・きっと痣をのこすだろう。
アムロはふう、と大きくため息をつくと 「助かったよ、」とシャアに苦笑いをした。
それから「どうしたんだ?それ、」と、ユリの事を聞いてくる。
先程の怒りは何処へやら、そのケロリとした態度にシャアの腹立たしい気持ちも拍子抜けした。
「衝動買いでね。まるで君みたいだと思って、独り占めさせてもらった。」
ほんの少しの思いを込めてそう言うと、アムロは「君みたいって・・・」と違う方に意識を向けた。
手首をとても痛そうにさするのに、シャアは眉をひそめる
アムロは近くに落ちていたコーヒーを拾って、店のダストに捨てた。片方の手袋も共に捨てる。
「飲み損ねたよ、貴方の家で飲ませてくれる? 体が冷えちゃって」
「もちろんだとも、存分に暖まっていきたまえ」
軽い会話を話しながら、二人はシャアの家へと向かった。
カミーユの誕生日なのに出番無しのカミーユ君。すまん!
何だか波乱の予感?ジャミトフを出したのは完全に趣味です。
私の萌ポイントはアムロさん総受け。
節操のない自分に時たま嫌気がしますね。フフフ・・・