NOVEMBER RAIN


11月04日






11月の雨は冷たくて
変わらない毎日を敷き詰めて 二人は並んだ












シャアはホテルの窓から外を眺めていた
ここはニューヨーク、マンハッタンの高級ホテルで今は打ち上げパーティの真っ最中。
シャアはモデルで、このパーティーは今日のショーの大成功を祝ったものだ。

だが彼は周りの楽しそうな雰囲気をどこかつまらなさそうに、憂鬱そうに一眺めしてから飽きたのか、
視線を暗い窓の外へ移していた。


外は雨だ。


雨はマンハッタンの街並みを黒く濡らし、都市の光の洪水を寂しげに引き立てている。

シャアはため息をひとつ付いた
せめて雪なら暖かくも感じるのにと。
ニューヨークはとても寒い
もう11月なのだから 雪が降っていてもおかしくはないのだ


「よっ、シャア 楽しんでいるか?」


声を掛けたのは大学の頃からの親友でモデル仲間でもあるガルマだ。
シャアがこの世界に入ったのは、実はガルマのせいでもある
彼の姉がデザイナーで何かの折りに引っ張り出されたのが切っ掛けでショーに出た。
その日から色々な所から声が掛かりいつの間にかこの世界にどっぷり入っていたのだ。
シャアは何となくモデルをしている。特にやりたいことなどなっかたから。


「まぁな、だが少し疲れたみたいだ。部屋を取ったし、もう休もうと思っている」
「疲れている」自分の言葉にシャアは思考を傾けながら、寂しげな景色とガラスに映る自分を眺めた。


つまらないな、とシャアは思う。
自分に、毎日に、人生に。

フラフラと適当に生きて、父の会社を継ぐ自分
それなりにやれば高い評価を得る、熱くもならない人生
自分はそんな毎日に少し飽きて、少し疲れているのだ。 そう思った。


「一人で泊まるのか?」
「あいにく今夜は同伴者が見つからなくてね」
「よく言うよ。ここにお前を狙ってる女がどれぐらいいると思う?」
「君ほどじゃないさ」
「お、嫌みかなそれは?まあ、独り者の強がりと受け取っておこう。」


ガルマは肩を竦めてシャアを見た。そのガルマの表情は、自分を心配しているものと、安堵が混じっている。


「それにどんなに沢山の女性にいいよられてもたった一人の愛しい人にはかなわないからね。
僕にはイセリナだけで十分さ。君も恋人を作れよ。 最近、元気ないぞ?」

シャアは苦笑いしながら「何でもないんだ、ノロケをありがとう」とそういって
その場を出ようとした。すると、ガルマが慌てて声をかけた。


「あ、シャア!お前の部屋って3201でいいんだよな。」
「なんだ、調べたのか。あとで寄っていくか?」


ガルマはいたずらを潜ませたにこやかな笑顔で首を横に振って、言葉を続けた。


「いやいや、実は最近覇気のないシャアを元気付けようと、
親友一同からプレゼントを送ろうと思ってたんだ!
今回特別ボーナス出ただろ?あとで部屋に届くから。」

「・・・・ガルマ、それはもしかして・・・・。」


先ほどの連れはいないと聞いて安心した表情を見せたのはこれか・・・。
ふと、シャアが横を見れば親しいモデル達がニヤリと自分に笑んだのがわかる。


(お前達か、ガルマにこんな入れ知恵をしたのは・・・・。)


それまで世間知らずの坊ちゃんだとずっと思っていた親友のありえない発言に
シャアは 人は変わっていくのだな、と密かに打ちひしがれた。
そんなシャアに追い打ちを掛けるがのごとく


「明日感想聞かせろよ?けっこう高かったんだぞ?」


と、ガルマが悪戯っぽく呟いた。






エレベーターの最上階を押してスイートの部屋にたどり着と、シャアは少しくつろいでからシャワーを浴びた。
テーブルには予め言っておいた銘柄のブランデーを用意させている。・・・彼にはこれが、特別と言うわけではない。
親の金でもあるが、シャアには豊かな資産がある。
湯水のように使う訳では無いのだが、幼少よりなじんだ生活水準がそうさせるのだ。
だから道楽でモデルなんかがやっていられる。
男のモデルがこの仕事だけでいい暮らしをするのは難しい。 
金色のシャワーヘッドから熱い湯を浴びて 全身から泡を洗い流す。
バスローブを羽織って髪を拭きながら お気に入りの香りを身にまとう

シャアはソファに座ってブランデーを傾けながら静かに響く雨音を聞いていた。
先ほど言われた ”プレゼント” の事などすっかり忘れてソファで微睡む
・・・・・雨の音が心地良い



ピンポーン



一瞬、シャアは何の音か分からずボンヤリしていたが、次のチャイムが鳴ると
億劫そうに体を起こした。
(あまり女を抱く気分じゃないのだが、 )そう思いながらドアへ向かう。
これは友人の好意なのだし、たまにはビジネスライクな関係も気晴らしにいいかもしれない。
そう思いながらドアを開けたシャアはしばらく面食らってそのまま固まった。


「あの、入れてもらえます?」


そこには少年が立っていた。
シャアは慌てて口を開く


「すまない、・・・・君は、」
「お友達からの”プレゼント”なんだけど、聞いてません?」


シャアはしばらく逡巡してからある思考にたどり着き、少年を部屋に招き入れた。


少年は黒いコートにほっそりとしたジーンズ、茶色のブーツという出で立ちで
雨の中を歩いたのか、くるりと巻いた茶髪に雨のビーズを纏わせている。
外は寒かったのか頬はバラ色に染まり
ツルリとした滑らかな茶色の瞳で自分を見上げていた。

シャアは心の中でほっとため息をつく
(なんだ、ガルマの奴 マッサージ師をたのんでいてくれたのか。)

自分のガルマへのちょっとした勘違いに、シャアは少し笑ってしまった。
シャアは気分を良くして少年に「雨の中すまないね」とニコリと笑って声を掛ける。
今は正直、女よりマッサージのほうが断然嬉しかったのだ


「寝室でいいのかな?」
「はい」


柔和な笑顔が印象的な少年、
ガルマが高いといっていたから腕の確かな一流のプロなのだろう。
こんなに若いのに凄いな と思いつつ
シャアは期待をしながらベットに腰を掛ける。




少年はニコリと笑ってコートを脱いだ。・・・そして上着も。




「ま、まった! 待ちたまえよ君!! ナゼ服を脱ぐんだ!?」
「何故って、・・ナニする為だろ?あ、服を着たままがいい?貴方が脱がせたいとか?
もしかしてストリップしろって事??」


ポカンとした顔で動きを止めた少年が、矢継ぎ早にそう言った。
今度こそ面食らったシャアは、少年のあまりにもな言葉に口をぱくぱくさせる。


「・・・だって、君、いくつだね?・・・犯罪じゃないか、これでは・・・。」


つい、的外れな事を言ってしまう。
少年は いまさらだろ? と呆れ顔で肩を竦めた。


「貴方の好みじゃなかったか、子供っぽいのがスキって奴 けっこう多いんだけどね 」

そう呟いてため息を零すと、少年は言葉を続ける


「俺は22だよ。・・申し訳ないけど前金でいただいちゃったんだ。チェンジするなら自分でしてくれ。
・・・貴方はもっとマッチョな方がお好みなの?」


シャアは混乱した頭で考えた。
・・・22だって? 嘘だ、どう見ても15,6に見える・・・いや、そうではない!
彼はつまり、ひょっとすると、いや確実に、そういう手合い(男娼??)か!?
・・・ちょっと待ちたまえ!マッチョとは何だね!!


「・・・待ってくれ、私はマッチョは好みじゃない。」


ええい、ガルマめ! やってくれる!!
シャアは一足飛びに飛び越えた親友の行動に激しく心の中で、ちぃっ と舌打ちをした。


「そう?じゃあ、ぽっちゃりした人? 俺は痩せてるからな。 」


食い違った会話が続くのにシャアは歯がみした。
そうでは無いのだが・・何と説明すれば、・・・ええい、ままよ!


「そうじゃないんだ、・・・気分を悪くしたら許してほしいのだが、私はノーマルでね、
・・・実は君をマッサージと勘違いした。」


バツの悪そうな私を見て、今度は少年・・・いや、青年がポカンとした。
モデル業に携わる人間に、ゲイはかなり多い。 が、自分はそうじゃない。
偏見は無いし、ソッチの友人もいるが してみようとはさすがに思わない。
好きこのんでするなんて信じられない という気持ちもあるぐらいだ。
青年の表情を伺えば彼は驚きから一転、破顔一笑した。


「はっ!あっはははははっ、 もしかしてお友達のいたずらか!? そりゃ悪かったね、
フフ、そりゃあ、驚くよな、悪かったよ。・・ククッ、でも、いいお友達だね、俺、けっこう高いのに。」


快活に笑ってくれた青年にシャアはホッとしながら、友人達の行き過ぎたジョークを謝った。
馬鹿にするなと、怒られると思っていたのだ。
青年は脱ぎかけた衣服を手早く直して、シャアの方へにこやかな顔を向けた


「じゃあ、どうする?このまま帰るのも気が引けるしマッサージでもしようか?」
「いや、そんな事させられないよ。気にする事はない。」


でもホントに俺、高いんだ。このまま帰るの、気が引けるな
彼が苦笑いしてそう零したのを聞いたシャアは、フム、と考えながら窓をみた。
外は凍えるような景色が広がっている。
また、少年を外に出すのも気の毒に思えたシャアはテーブルにあるものに気がついて彼を誘った。


「君、酒は飲めるかね?」


少年はシャアの意図を察し、「のめるさ」と片眉をあげてソファに腰掛ける。
シャアも座ると、空いてるグラスに彼の分と自分の分を注ぐ。

先ほどの驚きで目も冴えたし、ガルマ達への土産話にはちょうどいい。
彼と過ごすのも悪くはないかもしれない



「では、酒にでも付き合ってくれるかね?つまらなくなったらかってに帰ってかまわない」
青年はニコリと笑ってグラスを合わせた。














私の書くアムロは表現が色々。髪が茶色かったり赤かったり、瞳がブラウンだったり青かったり。
だって、見る作品ごとに違いますよね?なので遊び心で書き分ける予定です。
このアムロさんは茶色の髪の毛に茶色っぽい目。(自分メモ)
それにしても私が考える話って良くガルマが出てくるなぁ・・・。結構好きなのかも、ガルマが・・・。


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