星を愛する人たち    6










「あの、落とさないんですか?」
どれくらいそうしていたのか気になって、フェイス・コマンドに記された”15分”の表示を見て驚いた俺は、大尉に声を掛けた。
アムロ大尉がうるさそうに俺を振り返ったので慌てて”すみません”と返す。
今日はあやまってばっかりだ。うんざりした。


「カミーユ、どうしてココに来たんだ?君はAEでも生え抜きの逸材だったと聞いている。・・・・その、俺に会いたくてここに来たなら、期待はずれさせてすまなかった・・。」
俺はその言葉に心底すまなく思った
悪いのは自分なのだ。かってに勘違いして、かってに憧れて、こういう物だと決めつけていた。
「謝らないで下さいよ、確かに理由は貴方が一番でしたけど、色々あったんですよ。・・・あっちでも。」
「・・・でも、グラナダのMS開発主任、昇進目前だったと聞いている。その年で異例の出世だ。・・・悪かったと思っている。」
そう言って黙り込む大尉に、おれはぽつりぽつりと思っていた事を話した。
「色々って、その出世なんですよ。・・・俺、その話上司から聞かされたときいいのかな?って思ったんです。このまま、そりゃあ、MSは好きですけど、こんな自分のままで、
自分をちやほやしてくれる環境で仕事続けていいのかなって。大尉も、俺が欠陥人間だってさっき分かったでしょ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「でも、ずっと思ってたんです。宇宙に出つずけたらたら変われるんじゃ無いかって。・・・だって、宇宙って人種とか思想とか、重力みたいに自由に解き放ってくれそうじゃないですか。
ジオンダイクンは宇宙に出た人類はやがてみんなニュータイプになって、全てをちゃんと理解し合えて・・分かり合えて・・、 だから俺憧れちゃったんです。知りたくなったんです。
ニュータイプって言われるアムロ大尉に。俺も、一時期ニュータイプじゃないかって言われたときがあったんで・・・。」
「・・・・・・カミーユ・・・」
「知りたかったんですよ、自分の存在ってなんなのか・・・自分の活動限界、自分の口出し可能な世界。 ・・・ただ、知りたかっただけなんです。・・俺も、・・・人から好かれる人間になれるのかって・・・だから・・」


(でも、・・・・俺って、宇宙に出ても・・変わらなかった・・・・)



俺、何をしに来たんだろう?
・・・・俺って、何がしたかったんだろう?
結局、足の先からてっぺんまでちっちゃな人間だったって確認しただけ・・・













『カミーユ 聞こえるか? カミーユ!』
「は、はい!聞こえてます」

トーレスから入った通信回線に焦った声で返事をした。
また、ポカをやってしまったのか?

『カミーユ、下を見てみろよ。落ちていくプレートが見えるだろ?』


作業船から地球の底を望めば、シューシューと音がしそうなぐらいの青緑の光
地球の大気の中を滑るように流れる流れ星・・・不思議な光の大きな流星・・

「キレイだ・・・・」
自然と言葉が零れ出していた

『マナンガの子供達もそれを見ているかもな』ブライト艦長の声がした
『このコースなら、丁度マナンガの真上を通るだろう?』トーレスが言った
『今日の天候なら、さぞかしキレイに見えてるんだろうな』サエグサが笑った

『作った者の思惑がどうであれ、たとえ一瞬でもマナンガの子供達が幸せになれるのなら、あんなゴミでも価値があったと思わないか?』
クワトロ大尉が柔らかな声で語りかけた
(そうか、アムロ大尉はこれの為に15分以上も待っていたのか・・・)


その時、近くまで戻っていたアムロ大尉が俺の手を掴んだ
その瞬間 ・・・・何かが弾けて膨らむような・・・何所までも広がっていくような・・
取り留めもない感覚が俺を包む・・・






戦地で荒れた大地に立つ子供が、俺を見て目を見開く

片手にランチャーを抱えた疲れた兵士が、空っぽの心に何かを芽生えさせた

野外で火を囲む子供達が嬉しそうに踊り出す

粗末な部屋で体を痛めた母子が、俺に祈りを捧げた・・・




そう、俺は今流星になって世界を駆け抜けたのだ!
沢山の瞳 たくさんのこころ・・・ 祈りの声、驚き、囁き 願い・・
いつの間にか涙が流れていた





・・ああ、どうか皆が幸せになれますように・・・

無神論者の俺が、初めて他人の為に流す涙だった。






その一瞬は、はたして長かったのか短かったのか分からない。
永遠のようにも思えたし、一瞬のようにも感じたのだ
もしかして、宇宙でよく見るという白昼夢なのかも知れない。


だが、一つだけ曖昧な確信を俺はした。
ウソでもいいんだ・・それでも、今、初めて、彼という真実を体験出来たのだから。

(コレを見せたのは、きっとアムロ大尉だ!!)




振り返って彼を見れば、ちょっと遠くで地球を眺めていて、それから俺の方を見た。
丁度彼の後ろから、地球越しに太陽が昇り始めて彼を照らした



俺は何て幸せなんだろう・・・

彼、アムロ・レイという、初めて見る俺の希望に胸が一杯になった。







「帰ろうカミーユ、アーガマへ」
「はい、アムロ大尉!」
「ふふふ、君は軍属じゃないんだし、階級付けでよばなくていいよ。 ・・・You・Copy?」
「は、はい!!・・・あ、いえ、I・Copyです!アムロさん!!」


アムロさんは、俺の、本当の、・・・正真正銘の、”憧れの人”に、その日なった。





『L−1・SPST−04へ こちらS−CVW−07。 フェイス・クリア』
『S−CVW−07,こちらL−1・SPST−04、ダリオONE−04の軌道クリアランス確認。 ミッションコンプリート』
『I,COPY。これよりステーション04への帰投モードに移る・・・』






***





「アムロさん!どういう事なんですか!?特別超過手当って!」
「ん? 規定時間以上宇宙に出てると手当が付くんだ。・・・カミーユにも付いていただろ?」
「だからそう言う事じゃありませんって!俺が聞いているのは、もしかして15分待ってたのってこの為なんですかって言ってるんです!」


相変わらずうるさい、ステーションの13特別艦隊執務室に俺はいる
がなる俺に構わずアムロさんは”ベル、今日もチャーミングだよ”とか、
”チェーン、このコーヒー君が入れたのかい?(チューブの配合のことだ)僕の好みだ、嬉しいよ”
とかほざいていた。・・・二股なのか????

それをクワトロ大尉が喫煙に使っている作業ポッドの中から苦そうに見つめている。
この前彼のタバコの吸い殻を見たら、謎の紋章の金印が入っていて驚いた。(・・・どこまで自己主張が激しいんだろ、このヒト・・・)
因みにタバコは普通のキャビン・・・

カツは生意気だし、ナナイさんはパソコンに向かいっきり。
オペレーター2人は今日も競馬だの、ドックレースだのにいそしんでいる
ブライト艦長は新しい胃薬を試しているところだった。

どうして俺はココにいるんだか自分に対して理解に苦しんだ が、納得もしていた
そう、俺はアムロさんを・・・・




「いいかい、カミーユ。人はね、キレイな心だけじゃ生きていけないんだよ・・?」
「そこぉっ!チューブは捨てるんじゃ無い!!再生ポッドにちゃんと入れろ!!」
「アムローーー!!あの女と月に旅行に行ったってホントなの!!!」
「ブライトさんっ、今度僕がEVAで出るって約束してましたよね!カミーユばっかりずるいですよ!」





・・・・俺は星が好きだ。
ばーーーって輝く彗星も好きだけど、
一瞬だけど希望という光を見せる流星は、もっと好きだ!

そして、俺はその白い流星をみつけた。
そいつはちょっとイジワルで、なかなか姿を見せないけれど、俺の希望はそこにある。
だから、決めた。
どこまでも追いかけるんだって!


どこまでも追いかけるって、決めたんだ!!









星を愛する人たち  1話・完 


やっと終わった・・・。カミーユは個人的に大好きなのでこの話が書けて幸せでした!
続き書きたいけど・・・かけるかなぁ・・・。
まだこの次の話の骨組みがちゃんと自分の頭の中で組み立っていないので、
更新出来るとしてもちょっと先だと思います。
ああ、・・・・・それにしてもいいかげんですみません。
管理人実はL−1が地球からどの位置か、とか ディジェが宇宙で動くのか、とかよく分からずにかきましたぁ!!
無責任ですんません!脳みそ悪くてスンません!!
ちゃんとお分かりになるガンダマーの皆さん、間違っていたら管理人に教えてやるという愛の手をプリーズ!



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