Mermaid in the Sea <第一章 人魚のいる海> ― 白い悪魔 ― 3 |
握られた手に驚いた顔をする人魚 だが構わず私は彼の手をぎゅっと握って感極まった状態で喋っていた 「君をずっと探していた!…まさかこんな所で逢えるなんて!!」 握った手を嬉しくてついブンブンと振り回した 彼の手はスベスベとしていて、肌は滑らかな触り心地だ!と頭の片隅で思う 呆気にとられていた彼が幾分か気を持ち直して私に話しかける 声は男にしては微妙に鼻にかかっていて甘い感じがした 「憶えていたんですか、お元気そうで何よりですね」 微笑んで自分を見る彼、目が釘付けだ。ああ…この笑顔…あの時と一緒ではないか。 ぽってりとした唇、この唇と私はキスをした。そう思うと頬が勝手に熱くなる 見とれて思わずぼうっとなってしまった私の手を、彼がそっともう片方の手でやんわりと触れた 離して欲しいという意思表示!い、いかんな…私としたことが 「すまない、すごく嬉しくてつい…手は、痛く無かったかい?」 「いいえ …でも、貴方はすごく感激屋さんなんですね。ふふ、少し驚きました」 クスクス笑う彼を見て自然に頬が緩んでしまう ああ、今、自分は幸せを感じているなとシャアは思った。 そんなシャアを無視してアムロにカミーユはこそっと話しかける 『あれ?知り合いだったんですか、アムロさん』 『ああ、ほら…この前ジュドーとさ、溺れた人を助けたって言っただろ』 『ええ!?シャア・アズナブルが溺れてた!?ぶっ…マジですか、それ』 『こら、カミーユ、本人目の前にして笑っちゃダメだろ』 『大丈夫ですよ、奴にアラビア語が分かるとは思いませんから』 カミーユと彼がアラビア語らしき言語で会話をしているのにシャアはヤキモキした。 そしてそんな自分の変化にも。 (…なぜこんなにも心が揺れる?これが恋というものだからか??) 不安定な心に戸惑いつつもとにかく自己紹介する事にした。 そうすれば少しは彼のことが分かるかもしれない 何よりカミーユとの関係が、とにかく気になった。 「シャア・アズナブルだ。ご存じかも知れないがサザビーのパイロットをしている。…君は…」 「アムロ・レイ 先日は災難でしたね。…貴方の噂は良く耳にしますよ?赤い彗星」 それにパッと気分が盛り上がる。シャアは今日初めて自身の優勝を喜んだ瞬間だった。 多少自信を盛り返し、カミーユとの関係をさり気なく聞いてみる 「オーナーなんです」 ほう、つまりオーナーのご子息か。年の近そうなカミーユと気があったのだろうか。 きっとそうなのだろう。きっとタダの顔見知り程度の関係に違いあるまい そこまで考えてシュアはふとアムロから少し目線をずらした。頬が、熱くて堪らない (それにしても、目のやり場に困る) 彼が着ている白い衣装がどうにもこうにも艶めかしく見えてしまって仕方ない 中東の衣装はゆったりとしていて隙無く体を包み込みストイックを示してはいるのだが ふいに見せる動きの中で、微妙に体のラインを浮き上がらせるのが妙に想像力を掻き立てた …こんな事を思うのは自分だけなのだろうか? そう苦悩していると、アムロがシャアの額をそっとなぞった。 それに一層ドギマギとするシャア 「この傷、痕が残りそうですね… せっかく綺麗な顔立ちなのに」 不意に掠めた熱が、心を高ぶらせる。…ええい、いったいどうしたのだ私は! 心中で自身を叱責しながら彼の前では何とか取り繕う。傷は眉間に瘡蓋を残した程度だ 「いや、この傷のお陰で君に逢えた。…そうだ!この間はありがとう 君にお礼を…」 したいのだが、という言葉に被さって彼を呼ぶ大きな声が。『アムロさぁーん!』 これまた更に子供のような人物。ガンダムのサブパイロットのジュドー・アーシタだった。 「アムロさんこんなトコにいたの。カミーユさんも何してるんだ?こんな片隅でさ」 「知り合いに会ってちょこっと話をしてたんだよ、あれ?カミーユもしかしてお酒飲んだ?」 「ちょっとだけです。ジュドー!アムロさん来てるなら教えろよっ!!アムロさん、この後いいですか?マシンの事でちょっと…」 3人の少年はシャアを無視して話を進めると、「では…」と軽く会釈してその場を後にしようとした これに大焦りのシャアは必死に待ったを掛けようとする どこかアムロを急かす感じの2人にシャアは腹を立てた 「…ア、アムロ君!待ってくれ、私は君に是非とも礼が…」 「え?ああ、お気になさらずに。私は当然の事をしたまでです」 「い、いや!それでは私の気がすまないのだ!何かしたい事や欲しい物など…」 「あ、あのですね…」 「遠慮せずに言いたまえ、出来ることは何でもしよう。君は命の恩人なのだ」 「殿下、私は…」 「…私は、シャアだ」 確かにバレバレでは有るのだが彼にそう呼んで欲しく無かった。それではあまりにも悲しすぎる 彼はそんな私を少しだけ笑って見ると、ちょっと雰囲気を変えて私に皮肉気に笑んだ 「では、シャア・アズナブル 私もアムロと。“君”は余計です。目下の者扱いも止めていただきたいな」 「! 失礼したアムロ 私は君に感謝してもし切れないのだ。礼をさせてはくれまいか」 シャアは慌てた。彼は物腰こそ柔らかだが子供扱いした自分に気を悪くしたかも知れない シャアの言葉を聞いたアムロはにこりと優雅に笑んで言葉を静かに伝えた 「シャア?私は貴方の気持ちだけで十分なのです。それに欲しい物やしたい事は自分で出来ます。 貴方だってそうでしょう?だから礼は不要だ。感謝の言葉だけで十分です」 告げられた言葉に二の句が継げない ジュドーやカミーユが早く行きましょうとアムロの裾を軽く引いている …やっと、出会えたのに。これでお別れなのだろうか… 淋しさにやり切れない気持ちになる 「…では、私は礼を理由に君をデートに誘うことも出来ないのか」 「は?」 アムロを始めとする3人の目が点になった。 だが、そんな事に動じる事無くしょんぼりしたシャアは続けてアムロに言った 「私は、君に一目会ったあの時から恋に落ちてしまってね だから今日まで必死で探していた そして会えたら、この気持ちを伝えようと思っていた。どうか…礼を理由に食事に付き合ってはもらえないか」 シャアは本当に必死だった 今、この場で繋がりを持てねば もう接点が無いような気がしていたのだ。 チラリとアムロを見てみれば固まっていた。 後ろの二人も固まっている。 近くのボーイまで聞いてしまったのか固まっている始末だった。 ……ああ、彼に嫌われてしまっただろうか? その時、固まっていた筈のアムロからクスクス笑いが聞こえてきた。 それに驚くシャア+フリーズした3人(一人はボーイ) 「ククッ…シャア・アズナブル、貴方がこんな冗談を言う方とは知らなかったよ…お、面白いね、貴方! ふ、ふふ、…いいでしょう、お礼の食事 何かの折にでもお誘い下さい。お付き合いいたします」 シャアはその言葉にぱあっと花が咲いたみたいに綻んだ。 アムロはまだクスクス笑っていたが後ろの二人に連れられてその場を去った (ボーイは気を取り直して飲み物を取りに行った) シャアはアムロの後ろ姿を見送りながら心が馬鹿みたいに嬉しくなってきて、 無性にこの気持ちを誰かに伝えたくなりガルマを急いで探した。 ―――――――――ッッッ!! いたっ! 奴めっあんな所に隠れてっ!! 「ガルマァァァァァ―――――――ッッ!!」 澄ました表情でテラスに隠れていたガルマに走りざまのラリアットをお見舞いする 一瞬ガルマは怯んだが、さすがに長い付き合いというもの すぐにコブラツイストで反撃を!そのまま二人は悪ガキのようにじゃれ合いだした 「ガルマッ私はやったぞ!逢えた!あの人魚だっ!これは奇跡…いや、運命かもしれん! 私達は出会う運命だったのだよ!!聞いているのか、ガルマ!!」 「き、聞いている!イテッ 聞いているさ、シャア!イテテ…で、どうした?」 ガルマのヌルイコブラツイストなどとっくに抜けたシャアは頭をホールドしながら話を続けた それをビックリしながらイセリナは見る。こんな2人など知らなかったのだ 「デートの約束をしたぞっ!まだっ詳しい事は決めていない!」 そこでシャアとガルマは体を離し、「やったな!」「やったぞ!」とガッと腕をぶつけて健闘を称えた ほんの少し、ガルマは複雑そうな表情をしたけれど。 イセリナはそんな2人を見てクスクスと笑い出す。あまりにも子供な2人にとうとう笑いが止まらなくなった (私、本当にガルマ様が好きなのだわ) イセリナの隣で話しに加わっていたミライ夫人が「男の人はいつまでも子供ね、」と一緒に笑ってくれた。 そんな女性二人のやり取りに耳が入らないガルマとシャア ガルマはシャアからの報告を聞くのだが、シャアが興奮しすぎて何を言っているのか分からない とりあえず少し落ち着けとビールを渡すと、シャアが指で栓を弾き一気にゴクゴクと飲んだ そして「ガルマ、君から質問してくれたまえ」と。なのでガルマは昔良くやった司令官ゴッコをしてみる事に。 因みにコレ、ガルマが司令 シャアが少佐。シャアが司令を嵌めたりする中々波瀾万丈な遊びだった。 「シャア少佐、まず敵の名前の報告を」 「は!ガルマ司令… 敵の名は、アムロ・レイと申します」 「ほぉぉ… お前達、アムロを敵に回すのか。奴はかなり手強いぞ?」 いきなり掛けられた声にビックリして振り向けば、そこにはW・Bオーナーのブライト 「まったく、お前らいい年して何バカな事やっているんだ?ミライもイセリナさんも呆れているぞ?」 ガルマはその言葉にハッとしてイセリナを見た その視線にイセリナもミライ夫人もニッコリと微笑む。 ガルマは照れたような笑顔を見せたが、シャアはそれどころでは無かった 「ブライト、アムロの事を知っているのか!?」 「? 知っているも何も… 俺もミライも、良く知っているが…」 ブライト・ノア チームホワイト・ベースのオーナーで大手フードチェーンの2代目会長。ミライ夫人は彼の奥さん W・Bは古参チームでシャアが参加するまでずっとTOPの実力を誇っており、今期も上位に食い込んでいる強敵のひとつだ 珍しく船体に広告を入れている数少ないチームで、メンバーが全体的にオッサンくさい(ブライト含む)そんなチーム シャアはブライトとは顔なじみだし、こうしてミライ夫人も交えるほど仲も良かった 「ブライト、アムロが来ているの?私、久し振りに会いたいわ」 「俺も会ってはいないんだ。…そうか、あっちの大会が近いからちょっと寄ったのかもしれないな」 シャアは二人の会話にまたもやヤキモキとする (私がっアムロの事を聞きたいのだ!) しかしブライトはシャアに話の見えぬまま話しかけてきた 「それにしてもアムロ、遂に出てくるのか!奴が出るとなるとお前の所の優勝も危ういぞ」 「????」 「いくらお前の所にヘリがあったとしてもアイツはナビいらずだからな。今期は荒れるな」 「…??何を…」 「ああ、そういえば初対決か!こりゃ面白い。白い悪魔vs赤い彗星 面白くなってきたぞ!!」 「「はあ??」」 シャアもガルマも首を捻ってブライトにマヌケな顔を見せた。 赤い彗星は私の通り名だが白い悪魔とは一体。対決?ナビいらず?何の話をしている? 困惑するシャアに今度はブライトが首を捻る 「何だ?その事じゃないのか??じゃあ一体何の話しなんだ?」 見えない会話に皆が首を捻った。 |
色々スンマセン。キャラ違い過ぎますね…特にシャア!子供っぽいといいな〜とか。は、ははは(乾いた笑い)
ブライト&ミライさん登場!彼ら結構好きです。あ、因みにシャアとガルマがやっていた遊び
必ずシャアが裏切って「謀ったな、シャア!」「ははは、君のお父上がいけないのだよ」で毎回終わるシュールな遊び
はい。バカだな、自分とか思ってます。