ちくしょう…!ちくしょうッ…!!
泣きたくなんて無かったのに、後から後から涙がこぼれて
乱暴に袖で拭ってつかつか寒空の中を歩いた。
両親が久しぶりに揃った夕食だった。
モチロン、会話なんて無い。
重苦しい雰囲気で俺の成績の事など話し出す二人は酷い勝手だ
そして夕食が終わるとさも当たり前のように、“私達は別れることにした”なんて話し出した。
本当に当たり前のように。そしてどちらに付いていくと俺に聞くのだ
…そんなの、今更だ。
コイツらが離婚するなんて、今更!
…でも、俺は悔しくて悔しくて頭がカーーーッとなった。
「アンタらはッいつもいつも勝手だッ」
「カミーユ!!」
「…そうやって、すぐ親面をするッ!親なんか、ちゃんとやったことも無いクセにッ!」
「カミーユッ黙りなさい!!」
「俺はただ、アンタ達が普通の親をやってくれりゃあそれで良かっただけなのにッ!!」
だって、そうだ!アンタ達が別れるのはいいさ、
どうせ家族なんてとっくに崩壊していたじゃないかッ
親父は愛人をつくり、この家は二の次だと暗に言ってたじゃないかっ!
お袋だってそんな親父に愛想つかして仕事にかまけてばっかだったじゃないかッ
なんで今更そんな事を言うんだよッ…今更だ、…今更
なのに、それに振り回される俺は、いったい何なんだよぉ―――――――ッ!!
気が付けば癇癪を起こしテーブルをひっくり返し家をおん出ていた。
パジャマでは無かったが、服は薄着でこの寒さに酷く堪える
行く場所なんてもちろん無い
でも、何となく足が向いたのは割と近くに住んでいるファの所だった。
(寒いな… すごく、寒い…)
心も、体も。
だから、…ただ、何となく近くにいて欲しくて、だけど泣き顔なんて見られたくなくて。
ファの部屋の窓の下で、生け垣に隠れながら落ち着き無く膝を抱えた。
(これじゃあ…不審者じゃないか…)
だいぶ落ち着けた頃に声を掛けようと窓からファを見たら、風呂上がりだったので声がかけられなかった。
それでまた蹲ったらファの所で飼ってるバカ犬が俺に吠え立てて、俺は騒ぎにもなりたくなかったし逃げて走った!
それに気が付いたファが窓を開けて俺を見つけると叫んだが、もう戻れやしない
「カミーユ? …カミーユ!」
寒い。手がかじかかむ は、と息をかけて暖めようとするが無駄だった。
空を見上げれば星がきれいで…
「…カミーユ、寄ってきなよ」
俺はいつの間にか坂を上がって、あの場所に来ていた事を知った。
「……………アムロ、さん…」
店終いをしていた人間のアムロさんが、ドアの温かい光を零して俺に そっと手招きをしてくれた。
冷えているからと無理矢理お風呂に入れられて
温かいココアにたっぷりのラムを落として貰って、俺は幾分落ち着きを取り戻せた。
カウンターに腰を落ち着けてアムロさんにぽつぽつ話を聞いて貰う。
彼はとても聞き上手で、俺の話を、うん、うん、と静かに聞いてくれた。
「もうちょっと…こうしててもいいですか…?」
「いいよ、でもねカミーユ もう少ししたら連絡は入れるんだよ 今日は泊まるからって。」
「……………… いいんですか…?」
「いいよ、ゆっくりしてって」
言葉少なく俺に居場所を与えてくれるアムロさんに、俺はまた涙腺が壊れそうになった。
だからそれを堪えようとズズッと熱いココアをすすって涙を一緒に飲み込もうと頑張った。
幾つかの黄色く灯されたランプに、閉じた店の端を彩る青緑の光。
前は見かけなかった胴でできたラッパを吹く天使の少女
レトロで重厚な革張りの一人がけのソファ、その横に置いてあるぶ厚くて年代物の本
表紙が鮮やかな色でキラキラと散りばめられている タイトルは“終わらない物語”どんな話なのだろうか?
にゅわ〜〜〜ご
フワフワとした絹の毛並みを俺の足に苛立たし気に擦り付ける猫のシャア
俺にアムロさんを取られまいと割り込むように主人の膝の上に陣取った。
「…ん、シャア。重いって…」
アムロさんがしょりしょりと喉をくすぐってやれば、目を細めてさも当たり前のような顔で喉を差し出す猫のシャア
青銀色の瞳が妖しく光を拡散さるのを見せつけながら、
『これは私のアムロなのだから気安くしないでくれたまえ』
とか言っているみたいだった。声のイメージはあの金髪の店の主人。
「はい。いい子にしてろな…」
だが、そんなひとときももあっという間につれない主人の膝から降ろされてしまった猫のシャア
哀れっぽくナオナオ鳴いて媚を振りまくが、かる〜く無視されていた。ちょっと哀れ
アムロさんはう〜んと伸びをすると何やら工具を取り出して、近くに置いてあったアンティークの時計を弄り出す。
ああ…これはあの時の時計だ
いくら俺とシャアさんが弄っても太刀打ち出来なかった壊れたアンティークの古時計。
アムロさんは工具とか部品をその辺に広げて作業を開始し出した。
俺はそれを見ながらほう、と息を吐く。
実は、こういう空気が大好きだ。一番好きかも。
細やかな作業の音が、心を酷く落ち着かせてくれるのを俺は良く知っていたから。
「シャアさん、ホントにいないんですね…」
「あれ?言ってなかったっけ、シャアはここに住んでないよ」
「嘘じゃなかったんですね…」
「…?」
首を傾げるアムロさん。
そのアムロさんに引っ付いてイライラと尻尾をくゆらせまとわりついた猫のシャア
かまってかまって!と額を擦りつけてアピールするがぞんざいに頭を撫でられるだけに終わった。
だが諦めずにアムロさんのあぐらの上にのしっと乗っかって、前足をぺろぺろと毛繕い
長期戦の構えを見せたようだ。
俺は最初、夜にココに邪魔をしてしまうのはいけないんじゃないかと思っていた。
あれは嘘だと思っていたし。絶対二人で住んでると思っていた。
なぜそう思ったかと言うと…あの時ファもいたし、男同士の恋人が同居しているのを知られたくなかったんじゃ無いかな、と思ったから。
お互いのペットに恋人の名前を付けて可愛がってしまうラブラブぶりなのだ
一緒に暮らしてないのが不思議なくらいだ
で、そこにお邪魔などと考えただけで居心地がとてつもなく悪い。健全な青少年には刺激も強すぎそうだ。
俺も馬に蹴られて死にたくは無いし、甘々で胸焼け起こして砂など吐きたくは無い。
だから、こんな時でも来るのを心のどこかで躊躇っていたのだが(結局来てしまったが)いなくてホントにホッとした。
…でもどうして一緒に暮らしてないんだろう?シャアさんがもしかして妻帯者とか?
う〜〜でもあのお惚気ぶりでそれはないような気がするし。
人間のシャアさんもいないが黒猫のアムロもいない。
シャアさんが連れて帰ったのだろうか?
まあ、そんな事聞けやしないし聞く気も無かったのでココアをもうひとくち。
アムロさんが時計をかちゃかちゃ弄って、謎の部品を取り出した。
あれ…そんなものあったっけ??
「何ですか?その薄っぺらい…板?」
「これかい?ふふ、これが肝心だったんだ。今日届いてね」
アムロさんが指先でそれをくるりと翻して俺に見せた。
銀色に良く光るそれは薄い金属で出来た板?の様な物で蝶の舌のように緩くくるっと巻いている
アムロさんが器用にそれを組み込みながら楽しそうに話し出した
「これがどうしても必要不可欠なパーツだったんだ」
「ふーん?そんな板がですか…」
「そう。これをあなどっちゃダメなんだ、これは魔法の金属なんだよ」
「はいはい。魔法とはすごいですね」
確かにここはそんな言葉がすごく似合う場所だけど、俺だってそんな子供じゃ無いですよ。
ココアを置いてアムロさんが作業している時計の中身を見てみた。
俺だって結構こういうのは得意なのだ。
なおーう と低い声で鳴いたシャアを抱き上げて複雑に組み込まれた古時計の腹の中を覗き込んでみた。
…ナルホド。
前に弄ったときに大体分かった事とそんなに変わらないけれど、謎の窪みにその魔法の金属がピタリとはめ込まれていた。
シャアも大人しくそれを覗き込んでいる。ぶらんと垂れ下がったボリュームの尻尾がなんか可愛い
「では皆さん 実に50年ぶりの時計の鼓動を 魔術師アムロがお聞かせいたしましょう」
アムロさんが不敵な笑みで恭しくお辞儀をした
俺と猫のシャアはそんなアムロさんを丸い目で見た。不似合いなんだか似合ってるんだか
「あはは、大風呂敷広げて平気ですか?アムロさん。これ、この部品だけでホントに動くか分かりませんよ?」
そう。前に弄ったときと、その板を覗けば大して変わり無かったのだ。
だがアムロさんは自信満々で「まあまあ見てなって」と中に入っていた蝶の羽根の形をしたネジ巻きを取り出して
古時計の文字盤にひっそりと隠れていた穴に差し込みジッジッとネジを回した。
「…いいかい?二人とも」
二人の内一人は猫なのだが、俺は突っ込まずに頷いた。
俺に抱かれた猫のシャアもうにょ〜と鳴き声をだして答える
「じゃあ、はじめるよ…」
アムロさんが時計の針をぐるりと回して12時に針を合わせた。
カチリ…
音が鳴ると、オルゴールが鳴りだした。
どこか寂しく、でも優しく。 そしてとても美しい、そんな旋律だった。
文字盤の窓から、太陽が昇り やがて星と月が顔を見せる
時計の下がからりと開いて、複雑な色合いをした星達がカタカタと動いていた
そこに…綺麗な少女がくるくると回りながら現れる
反対側からは王子が。
二人はお互いを見つめ合ってくるくると回り、それはまるで旋律に合わせて踊っているみたいだった
くるくる…くるん
愛を確かめ合うように、回りながら近寄っては離れて、また近寄って
それを祝福するように月や星や太陽などのオブジェが目まぐるしく現れては消えていく
ボーンと時計がひとなりすると、二人を祝福していたような星達が消え 二人も元の場所へ戻っていく
扉が閉じられ、時計は元の姿に戻りカチコチと時を刻みだしていた。
「見たかいカミーユ」
「ええ…すごいからくりでしたね」
「うん、それもだけどね…彼らはやっと会うことが出来たんだ」
ほう、と詰めていた様な息を吐き出したアムロさん…
その表情はぼんやりとしていて良く分からないが、 声は幸せそうな どこか寂しそうな…
俺に あの、オルゴールの旋律のような印象を与えた
「これの持ち主はもうずっと前に亡くなったらしくてね、お孫さんが直せないかって持ってきた物なんだ。もう50年以上も動かなかった代物なんだって。…だからさ、実に彼らは50年以上の時を経た逢瀬だったんだよ」
ああ…逢えて良かったね
アムロさんが愛しそうに時計を撫でながらどこか遠くを見つめていた。
俺の腕からシャアが飛び降りて、アムロさんの腕の中へとあっという間に移動する
「シャア…」
猫を愛しそうに抱いて、切ない表情をした彼 俺は何と言って良いか分からなくなった。
何故そんな表情をするのだろう… なんでそんな悲しい顔が出来るのだろう?
訳も分からずぎゅっと胸が締め付けられたが、そんな俺に気が付いたアムロさんはニコリと笑ってもう眠ろうか、と片付けをはじめた。
俺もそれに従い、家に渋々電話して友達の家に泊まると伝え二階の寝室にお邪魔した。
***
「パジャマ、それでいい?」
「いや…あの、はい。これでいいですけど、…アムロさん?」
「ん……ああ、気持ちいい… あ、何だいカミーユ」
「アムロさんは、パジャマ…着ないんですね……」
うん、そうだよ と平気で言ってのける彼は多分…素っ裸に(シルエットで分かる)シルクのローブだけ
なぜ…パジャマがあるのに着ないんですか!?そっちの趣味の方はそういうものなんですか!?
ああ〜でも世話になってる身で言えない…そんな事言えるもんかよ…
だけどそんな俺の葛藤を知らずに俯せになった彼は、愛猫にマッサージを受けながら気持ち良い声など出していた。
止めて欲しい…いたいけな少年を惑わさないで欲しい…
そんな事を思っていたら、アムロさんの背中に乗っかりふにふに足踏みを続けるシャアがふんっと鼻を鳴らして(本当の本当に鼻を鳴らしたのだ!)俺を見た。
その表情はまるで『ほら、私はこんなにアムロを歓ばせる事が出来るのだよ』(←やはり声のイメージはあの金髪の店主)
と言っているようだった。あくまでも、“よう”だが。
とにかくパジャマに着替えて、隣室にあるベッド(多分シャアさんのかな?)に潜ろうと思ったが
その前にひとつだけ聞きたいことがあったので俺は質問をしてみた。
「…あれ、あの魔法の金属っていったい何だったんですか?」
「…ん? ふふ、カミーユは魔法を信じてないのかい?」
質問を質問で返されてしまった。
アムロさんはベッドから悪戯っぽい笑みで俺を見る。それに俺は肩をすくめて見せた
「信じてないですね。それにあれは魔法には見えませんでした」
「ロマンが無いね、カミーユは。じゃ、種明かし聞きたい?」
「はい」
アムロさんはのそりと起き上がってシャアを抱きかかえるとにこっと笑った。
「あの金属ね、ビミョーに厚さが違くなっててね。それはもう普通の人には分からないぐらいの差で」
あの金属の板を思い出してみたが、板と言うにはおこがましいほど薄かった。
アムロさんが言うにはそれが先端へいくほど微妙に薄くなっているというのだ。
その仕掛けが歯車に作用するらしい
「昔の人は凄いよね、で その桁違いの離れ業をしてくれる職人さん探すのに苦労したんだ」
「ええ?もしかしてあれ人が手作業で作った代物なんですか?」
「そう。正に魔法だ 肉眼じゃ確認出来ない差だったよ」
分かったかいと俺を見るアムロさんに俺はコクコクと頷きながら部屋を出ようとした
仕掛けは、確かに知らなければ魔法だ。
妙に納得しながら扉を開けたところでアムロさんが慌てた感じで俺に言った。
「あ、カミーユ… 俺朝早くに用事があるから出ちゃうけど、代わりにシャアが来るから」
「え?あ、はい。えーと…俺いても平気ですか?」
間男と…間違われるのは勘弁して欲しい
それを分かってくれたらしいアムロさんは書き置きしておくからと苦笑い
お休みなさいと扉を閉めてベッドに入った
***
…ん、
隣の部屋から足音が聞こえたので目が覚めてしまった。
アムロさんが出かけるのだろうか
寝ぼけ眼で窓を見ればうっすらと朝焼けが… もうすぐ日の出だろう
『…** ………・ …』
隣からアムロさんの声がする
何かに語りかけるような、 優しい響き
シャアという単語が聞こえたが、声の感じからして猫に話しかけてるとは言い難かった
『俺達も、いつか許される時が来るのかな… 』
目が覚めてくると段々はっきりと声が聞こえてくる
切ない響きのアムロさんの声
『俺もいつか日の光を…貴方と一緒に浴びれる刻が』
日陰者って意味かな… 誰かに反対でもされてるのかな… ありえるよな…
男同士だもんな… 俺が想像する以上に色々大変なんだろうな…
『シャア…愛しているよ …永遠に、貴方を…』
その言葉に俺は跳ね起きた!
え!?シャアさん来てるの??しかもなんか、邪魔しちゃいけない雰囲気っぽい!!
俺は慌てつつ、かつ静かに服を着た。
とにかく…今俺がここにいて良いような状況でない事だけは確かだ。
身支度を終えると俺はそっとドアの外を確かめた。
よくよく考えたらアムロさんのいる部屋を通過しなければ階段を降りられないのだ。
でもシャアさんの声が全く聞こえないのが気になって、もしかして電話かな?と扉をそっと開けてみた。
軽く声も掛けてみる…
「アムロ、さん…」
返事がない。気配も…
思い切って部屋に入った俺は…そこで信じられないものを見た
部屋の窓から、ゆっくりと日が差し込む
ローブをはだけたアムロさんは猫を抱きかかえてうっとりと見つめていた
逆光に目が眩む
そして、猫のシャアが段々と大きく… 俺は夢でも見ているのか…?
だって、ありえない。
猫のシャアが、人になって… シャアさんになって アムロさんとそっとキスを交わしていた。
だけれどそれは一瞬の事で
見る見るうちにアムロさんは小さく縮んで…
小さな黒猫になってしまった。
ふわりと シルクのローブが音もなく舞い落ちた
カタンッ…!
「……え?」
訳が分からなくて、俺は後ずさりして物音を立ててしまった。声でだめ押しだ。
こちらを向いたシャアさんが黒猫を抱きながら困った顔で俺を見た
「ああ…見られてしまったね」
眠れなかったのかい?お茶を入れるよ とシャアさんがアムロさんの来ていたローブを羽織ると俺にそう言った。
俺は混乱しながらも、落ち着き払ったシャアさんにコクコク頷いて階段を降りるとカウンターに腰掛ける
やがてシャアさんがアムロを…いや、アムロさん?
とにかく黒猫を抱きかかえてお茶を入れてくれる。
それを飲んでだいぶ落ち着いた頃に俺はシャアさんに聞いてみた。
「あの…種明かしは… ないんですか?」
自分でも分かり切っているのに、どうしても混乱が先走ってそんな事を言っていた
…あんなマジックが有るはず無いのに。
それにシャアさんは苦く笑うとアムロさんだった猫を抱きかかえてちゅ、とキスをした。
とても愛しそうに、幸せそうに。…そして、とても寂しそうに。
「私は遠い昔にね、それはそれは考えもつかないはるか昔の事だけれど…」
まるでおとぎ話のような言葉。うにゃんとアムロが慰めるようにひと鳴きしてシャアさんの頬をぺろりと舐めた
「私は罪を犯してね、呪いをかけられてしまったんだ…」
「呪い? …どんな、罪…?」
絞り出せた言葉に彼は答えなかった。
ああ、だけれど悔いている事は良く分かる
「…それに彼も付き合ってくれてね。いつしか私達は愛するようになった。すると今度は、」
お互いが、傍にいるのに逢えなくされたんだよ。
本当にそんな事があるんだろうか…?
だけれどこの目で確かに見たのだ 猫が人に、人が猫に変わる瞬間を。
切ないシャアさんの顔に、アムロさんの顔が重なった。
「うん、それもだけどね…彼らはやっと会うことが出来たんだ」
ああ…永遠に巡り会えない恋人達
触れているのに、触れられないもどかしさ。
彼らはいったい、どんな罪を犯したのだろう…
「だけれどね、それでもアムロは私の永遠の恋人なのだよ」
優しげに悲しく笑む彼が、俺の頭から離れられない印象を残した。
ああ…俺もこんなに誰かを思える時が来るのだろうか?
金髪の美丈夫に寄り添う小さな黒猫
赤毛の青年にまとわる金色の豪奢な猫
…ああ、シャアさんが最初からちゃんと言っていたじゃないか
彼は、永遠の恋人だって。
猫のアムロさんがにゃあんと愛しそうにシャアさんにすり寄る…
それは紛う事なきお互いに愛をくり返し囁く、恋人達の抱擁だった。
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