still waters run deep 1 「神父が喫煙か、神もおおらかなものだな」 「……新顔だな、何か用か?」 寂れたストリートの、ある一角に建つ小さな教会の神父は大いなる父の前で紫煙をくゆらしその美貌の悪魔を気だるげに見た。 そいつは地上から出たばかりなのか、それとも餌場を求めて新たにやってきたのか新顔で、中々に極上だ。容姿も魔力も。 ヘタをすれば生死に関わりそうな対峙にカノンは微塵も戸惑わない。 ふーっと煙を吐き出しながら慎重に相手を探った。むろん、そんな様子など見せずに軽口を叩く 「ほれ、神に懺悔なら跪け。それとも告解か?」 「馬鹿な、そんな事をするくらいなら塵になった方がマシだ」 「んじゃ、とっとと消えろ。俺は見ての通り忙しい」 「……舐めてるのか?」 ギラリとその悪魔は目を妖しく光らせて爪を紅く尖らせた。だが、カノンは動じない 相変わらずタバコを咥え、洒落たスーツに身を包んだ長髪の男を足の先からゆっくりと眺めた 「お前、名前は?」 「……ミロだ。聞いたのだ、名乗れ」 「カノンだ。で、何しに来たんだ、一体」 「は、決まっている!極上の餌の匂いがしたのでな…食事だよ!!」 ミロと名乗った悪魔はギラギラと爪と瞳を紅く光らせカノンに飛びかかる その漆黒のローブに包まれた身に深紅の毒針を穿ち、慎ましい神父の服に彩りを添えた 獲物はまったく抵抗を見せず、何食わぬ顔で佇んだ。ミロの好きなようにさせている それに些かミロは鼻白んだが、すぐに鼻孔をくすぐった最高の血の香りに酔わされてそれを啜る 神父はそんな悪魔を余裕げに見下ろした。手にはまだタバコを持っている 「カノン、可愛らしい名だ。」 「ああ、…良く言われる」 「地上で初めて口にしたのがお前だ。このミロに吸われ逝くのを誇って良いぞ」 あ、そ。と言いながらカノンは貫かれた傷口から官能が立ち上るのを感じた。 血を旨そうに舐める悪魔はうっとりとした表情でカノンを見上げる。それに見惚れた ああ、厄介だな。とカノンは思った。兄も自分も等しく持つ悪癖… 手に入れたくなったら、何をしてでも手に入れる。 コイツはヘタすると寝首をかかれてもおかしくない上級悪魔なのだ。しかも淫魔 それを手に入れたいなどと、…どこまで業が深いのかとカノンは笑った カノンには余裕があった。百戦錬磨の場数は伊達ではないのだ 「何がおかしい」 「いや、ちょっと考え事だ。なぁ、お前さ…若いだろ」 ギロリと睨む口を血だらけにした美しい悪魔に、カノンは場違いな程欲情をした それは毒の所為だけではない。タバコを深く吸い込んで、睨んだ表情を堪能する。 それにイライラするミロ 2つめの穴を開けようと爪を尖らせニイッと笑った 「残らず魂を血に変えて啜ってやろう、この深紅の針で身を貫きながらな」 「残念だが、遠慮する」 その時だった。神父は持っていたタバコを斜め上にかざす その斜め上には煙感知器…反応を鈍らせたそれに煙が近づきそして天井には… ざああああああああああああああああああああああああ! 「な、…にぃ!?ア、アア…これは!!」 「そ、聖水だ。」 スプリンクラーが。濡れても平気なカノンとは対照的にミロは苦しみのたうった 苦しそうに首を掻きむしり、ああ、ああ、と呻く。赤い絨毯を爪を立てて掻きむしる それをカノンは目を細めて見下ろした。タバコを無性に吸いたいなと思った 悪魔は美しい金髪を魔性の色に染め上げて、その隙間からカノンを見上げた。 「地上は危ない所だから、気を付けろって習わなかったか?ミロ」 「はっ、う、ウゥ…ア、……お、れ、の、負け、だ…コロ、セ」 「悪いな」 カノンは祭壇から何かを取り出しミロの片足にそれを嵌める そうして水のスイッチを切ると濡れたミロの服を剥ぎだした 「…な!?何、を!!」 「オイオイ、淫魔が初心な反応するなよ」 首筋に歯を立てて強く吸い付き張り付いた服を引きちぎる。 ミロが暴れて逃げようとしたがそれを押さえ付け悪魔を貪る神父 やがて碌に抵抗出来なくなったミロは泣きながらカノンに揺さ振られた 足首に嵌められた金属が、ミロの魔力を押さえているようだった 「〜〜ッ神父のクセにッ神父のクセにッ!!ア、アウッ」 「黙れ、舌噛むぞ…」 その時キィィと重く重厚な扉が開かれ、それにミロの体がビクリと震えた おいおい、コイツ可愛いな。とカノンは笑みを深くする 普通ここで慌てるのは自分の方なのだ。ま、喩え誰が来ようと慌てはしないが。 入ってきたのは瓜二つの男 神の似姿とまで言われる聖職者、カノンの双子の兄 「サガ、何の用だ?悪いが取り込み中でな…」 そんな事を言いながらミロを見せつけるように一層揺さぶる ミロがサガに驚きながらも、羞恥にくねりカノンを締め付け暴れて逃れようと足掻いた そんなミロの顎を取ったサガはニッコリ笑って視線で嬲り、カノンに何食わぬ顔で話しかける 「大きな魔道が開かれたからね、様子見に。…だけどお前に取られてしまったな」 つぅーっとミロの嵌められたリングをサガがなぞると、そこはとたんに熱を放ちミロを苦しめた。 ミロが泣き濡れ、首を振る。それを愛しそうにサガが見た。 だが、カノンがミロに呻きながらも身に触れさせまいと引き寄せる 「これは俺の物だ、ああ、クソッ… ミロ、締めるな!」 「貴、様らッじ、地獄へ堕ちろ〜!!」 「ミロ? 可愛いリンゴだね」 カノンが 呪う、呪う、とつぶやき続けるミロに口づけを。 そして官能の悪魔に、劣らぬ魅惑的な唇で囁いた 「そのうち一緒に堕ちてやるさ、その前に天国でも見てくればいい」 さて、その後悪魔が天に昇ったかは知らないが… 寂れたストリートの一角 古ぼけた教会には美しく口汚い神父と、 …どこか世慣れてない美貌の悪魔が住んでいるという。 |
朔様が文化祭作品を送られてきて、嬉しビックリのハイテンションで手紙に書き殴ったパラレルです。
あの時確か不良ノンタンをご所望だったんですよね、朔様。
で、大好きサイト様の神父モノにかなりやられていた私はついふらふらと手を出してしまったorz
あのような細やかな設定は無理なので、ノリや雰囲気のみをお楽しみ下さいませ。(笑)
ウチは神父カノン&神父サガです。ミロタンが美貌の悪魔ですが、これじゃどっちが悪魔なんだか…汗
この話はタイトル通りstill waters run deep(能あるタカは爪隠す)
まだ水は深くならない(←友人訳) 底知れない水の深さのような、人の心の腹の底をお楽しみ下さいませ☆
コンセプトは 騙し、騙され、化かし合い。
さて、自分 これテーマにどこまでかけるかなぁ〜っと。
チャレンジチャレンジ!