アジサイ








さらさら、さらさら。雨霧らす空を見限って、降る水の粒


「カノン」


彼が呼ぶ、その声は甘く優しく俺に響く。ああ、優しくしないでくれ、
こんな俺にその価値はない、そんな風に、触れないでくれ 声を聞かせてくれるな


「カノン」


荒んだ心のまま彼を蹂躙する、こんな時ばかりミロは従順に受け入れる
柔らかな肢体で俺を包み込む、その官能の匂いで俺の憂鬱を誤魔化してしまう
甘い声で、俺の心を覆ってしまう ―――――熱が、散る。
俺はお前の事しか考えられなくなる


ミロ、ミロ、ミロ… ミロ


酷くしている。でも、お前は黙って受け入れる。痛い筈なのに、辛い筈なのに。
その想いの深さに驚きと少しの恐怖を。応えられる自信がないのだ
なのにお前の思いに縋り付く俺は 何て無様なのだろう、何て卑怯なのだろう


「カノン、何も… ア、ウウ……考え、るな… 俺を、見ろよ…」


腕を絡ませて、唇を合わせてくる
その優しさは苦しいのに幸せで、それが死にたいぐらいに切なくて。
薄い唇から舌を卑猥に絡ませ合って悦楽に堕ちていく
彼に埋め込んだやり切れなさを、獰猛に滾らせて激しくぶつける
苦しそうに顔を歪めても、抵抗を露ほども見せぬミロ 
いつしか自分は叫んでいた 彼の名を、彼への愛を、彼を欲するこの感情を。


「好きだ、お前が。お前が全部欲しい、ミロ」


全部やるよと、彼が嗤う。それに俺は泣いてしまった





揺れる心を染めていく、あの花のように

青くあれば、緩やかに甘い色へ

憂いの心を慰める、あの紫陽花の花のように





空が濡れる頃、こんな日はミロと必ず雨隠れを。
五月雨の音を聞きながら、熱を思い切り散らし、吐き出し、刹那の快楽に耽り続ける
やがて銀色の光の中 寝床で 毛を舐め合う猫のような戯れを


滲む空の下 お前を思うと消え入りたく思う
何度さよならを呟いただろう
何度立ち去ろうと思っただろう


だけれどそんな日は必ずお前が側にいた
何も言わずに背を貸した。それに感情が込み上げる
お前はどこまで優しいのだろう お前はどこまで俺を赦してくれるのだろう






何時も側にいたい、ずっと見守っていたい、この愛が永遠であればいい。

そんな想いが、お前に届かなければいい








(END)






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タイトルがアジサイなので素敵な日本の表現でGO!とか思って古語辞典とかめくって頑張ってみましたv
でも俄仕込みなので間違いだらけかと。…少しは切ない感じはだせたでしょうか?朔様

ミロが “嗤った” のには分かり辛い意味があります。
ひとつはカノンに対するもの。 『俺なんかが欲しいなんて、酔狂だなお前』 といった嘲笑
もうひとつは自分に対するもの。『全部やるなどと言ってしまう俺は、どこまで俺はお前が好きなんだか』といった自分に対する嘲笑です。

そして最後の “思いが届かなければいい” 理由は、カノンには応えられる自信が無いからです
同時にその願いは、実現するには難しすぎることを良く知っているからかと。(苦労した28ですしね〜)
だからこの想いは、ミロに届かなければいい この苦しい願いを知らなければいい となりましたv




朔様、こっちまで載せてスミマセン(滝汗)苦情、うけたまわります〜〜っっ