101回目のプロポーズ
カノンがミロとプロレスと偽ってじゃれついている時であった。←モチロンKには下心たっぷりなプロレスである
(ついでに詳しく言えばミロの方が関節がダンチで柔いのでカノンが飛び付き逆十字腕ひしぎで固められロープロープと手を叩いていた時であった。)
ミロがいつも持ち歩いている赤毛のボロ汚いカミュ人形がポロリとこぼれて、カノンがギブアップに叩いていた手に当たった。
いつもは押すと『ミロ…!』とか何とかカミュの声で鳴くカミュ人形なのだが…その時カノンの手に押されて耳元に響き渡った鳴き声は…
『ミロ……愛している…』
だった。
腕がトンデモねー事になっていたがカノンは一瞬痛みを忘れる。
(…は?コイツ今何てった??)
ミロはどうやら気が付いて無いようで楽しげにカノンの関節を痛めていた。(←サドの血が騒いでるらしい)
それに涙を流しながらもう一度ギブギブと床をタップしてやっと手を離して貰ったカノン
痛む腕をさすりながら、そっとカミュ人形を押してもう一度声を聞いてみる 『ミロっ』
?
変わらない。
その時じゃれ合いにご満悦だったミロが慌ててカミュ人形を探し出したのでカノンは訝しげに思いつつミロにそれを渡してやる。
「なぁ、このぼろい人形『ミロ…』とか何とか以外に言ったりするか?」
「ん?ああ、色々バージョンはあるが…全部俺の名前だぞ」
ほう…そうか。
じゃあまだアレは聞いてないんだな?とカノンはほくそ笑みひとつの計画を立てた。
その布石にとミロに闘技場での手合わせを誘う。まずはいっぱい遊ばせて疲れさせ、熟睡させる必要があるのだ。
「おい!次はコスモ有りの手合わせだ。下に行くぞ、コテンパンに叩きのめしてくれる」
「フ…またスカニーで穴だらけにしてくれるわ」(←サドッ気モードにスイッチが入った)
う…それもちょっとイイかも(←マゾに目覚めたか?カノン)
とか思いながら闘技場に向かうカノンと何も知らないミロだった。
―時を遡る事約4年前・ミロの16の誕生日ちょっと前の事―
アイザック「……我が師、カミュ?どうしたのです一体」
シベリアで氷河と一緒にシャツ一枚で5分で氷る氷原でトレーニングをしていたのだが、
何やらカミュが何かを考えつつ押し黙ったまま5時間を過ぎたので、アイザックは聞いてみた
何とな〜く…理由は分かっている。我が師が悩む事といったらミロさん以外の事はないからだ
カミュ「……うむ。もうすぐ…ミロの…誕生日なのでな…」
遠い瞳で聖域に(ミロに)思いを馳せる我が師に氷河はウキウキとし、アイザックはやはりとため息を吐いた。
幼い氷河は師の言ったとおりミロは師の親友だと思いこんでいる節があるが(在る意味間違ってはいないが)
この聡い兄弟子アイザックは師がミロさんを親友として見ているだけでは無いことを悟っていた
なのでアイザックは、この機会にと ある提案を打ち出してみる事に。
(↑いい加減カミュの毎夜くり返される鬱々とした呟きに耐えかね始めたアイザック)
「いい加減告白したらどうです?我が師カミュ…」
「な…アイザック!!」
「子供だったあの時ならいざ知らず…今ではミロさんもどんどん大人びてます(頭は相変わらず子供ですが)」
「ま、まだ…私達は16…ミロなどまだ15!そ、そのような関係は…まだ…」
「関係はどうでも、まずは告白したらどうでしょう?(俺としては16ならば関係も早いとは思いませんよ)」
「……ううむ……」(←困った顔で悩むカミュ。じめじめし始めた)
「ミロの外見は結構派手です。悪い虫に先を越される前にも告白ぐらいはした方が良いかと」
「う、ううむ…………だが……できるかどうか…」(←白い顔がさらに青ざめたカミュ)
「ならば師よ!訓練です!!この氷河、師が告白できるようお手伝いいたします!」
(↑この時氷河はまだクールとは程遠く熱々だった。彼が僅かにクールに目覚めるのは聖戦後の事である)
「……!!……氷河っ!………私は…良い弟子を持った…(滝涙)」
…ひし!(三人で抱き合うシベリア師弟)
(俺としては告白の練習よりも告白後のベッドインをシミュレーションした方が為になると思うのだが…)
ちらっと熱い我が師をのぞき見るアイザック
(今の我が師にはこれぐらいが精一杯か…)
微妙にクールに成長し始めたアイザックだった。
***
5分で心の臓まで凍り付く、凍てつく風吹きすさぶ氷原のど真ん中で師弟3人は向かい合う
そんな場所でやはりノースリーブの氷河が紫のポンポンを被って精一杯ミロの物まねをした
氷河「な、何だ我が…いや、カ、ミュ…はなしとは、何だ!」
(↑羽織ったシーツををバサァとひるがえしてみる氷河)←笑
カミュ「//////……………/////………////………」
アイザック「カミュ…何も氷河相手にまで緊張しなくても…」
氷河「こ、こんな所によびだしてっ何の用だ我が…あ、え〜と、友カミュゥ!」
カミュ「///…………み、………ミロッ」
氷河「…!?わ、我が師カミュッ??」
和菓子勢い余って氷河を押し倒し服をめくりだしたので、クールなアイザックは氷らせて止めた
やがて氷をしゅわしゅわ溶けさせて(←羞恥心)脱出したカミュは熟れたトマトのように赤くなりそして膝を抱えて鬱々とふさぎ込んだ
カミュ「私は…この10年以上も友人という名の思い人に…思いのひとつも伝えられず…終いには…弟子の好意にも…結果を出せず……さらに…思いが暴走して…弟子に…手を…出して…いや、…もはや何もいうまい……私は…この世に生きていては…この罪深い…もう、…私など……ブツブツブツ……」
アイザック「…師よ、一度で諦めるのですか?貴方の思いは…その程度なのですか?」
カミュ「……………!!」
氷河「我が師カミュ!ファイトです!!」
カミュ「う、うむ!」
皆滝涙でウェットになりつつ、今度はアイザックがミロ役でトライしたのだが…
アイザック「…友よ、俺に話とは何だ?」
(↑マント代わりのシーツをバサァ!とやるアイザック)←この弟子達、ミロに夢を見すぎである
カミュ「///////…………………み、ミロォ!!」がばあっっ
アイザック「…オーロラサンダーアタック!!」(←まだボレアリスにあらず)
カミュ「ぐあっ!!」
氷河「師よ、ファイト・おー!です」
だが… 一時間後
その後も状況は何一つ変わりはしなかった。
アイザック「師よ…むしろこの方法でミロさんと既成事実を作ってしまえば良いのでは?」
カミュ「…な、何と!……ダメだ。私はミロにしっかりと…あ、あ、あ、愛を告白したい…」
氷河「う、ううう…我が師カミュ!この氷河、感動しました!!」
何故かひしっと滝涙で抱きしめ合う水瓶師弟3人
だがさすがに何度もくり返すので 氷河は違う作戦を提案した。
氷河「我が師カミュよ!手紙などどうでしょう?カミュは達筆でしたよね」
アイザック「成る程…それならば思いを間違いなく伝えられるな!」
水瓶「う…うむ!」
意気揚々と修行小屋に戻る3人であった…が。
その1時間後の事
アイザック「師よ…それで20枚目になりますが…」
氷河「う、うう…びっちりと文字を綴られておりますが…」
アイザック&氷河『ひと言も、好きだ等が書けておりません!!』
カミュ「………し、しかしだな…私のミロへの思いはこんなものでは…」
氷河「ですがあの飽きっぽいミロが、こんな長い手紙を読むでしょうか?」
カミュ「う……うむ…」
アイザック「!!」
その時アイザックは、何やら閃いて町に何かを買い出しに行った。
その2日後の事(←買い物ひとつするにも数日がかり)
アイザック「師よ、これに愛の告白を録音するのです!」
アイザックが持ってきた小さなレコーダーは、人形等に入っている押すと音が出る物で
それにカミュは告白を 自分達は人形を作ってミロに渡そうと提案を。
それから毎夜…
カミュ『ミロ……………』カチッ(←録音時間が短い物の為、告白前に強制的に切れる)
…と、愛の告白を言おうとして失敗する我が師の呟きは毎夜録音されて
アイザックと氷河はその失敗を聞きながらミロにプレゼントするカミュ人形を作った。
そしてある夜のこと
カミュ『ミロ……愛している…』
カミュは告白、101回目にしてやっと思いを録音する事ができた!
氷河「おめでとうございます、カミュ ではさっそくこの人形に入れますね!」
アイザック「あ…師よ、失敗したのを消していなかったのですね?では今から愛の告白だけを…」
カミュ「///////いや、いい…////いきなりあの言葉を聞かれるのは…うう…心臓が…止まる…」
アイザック「…そうですか。では、そのまま師の人形に入れますね」
カミュ「?…それは私なのか?………赤毛……?」
氷河「はい!髪が赤いのは赤い毛糸しか無かったからです!…でも、これはカミュです!」
アイザック「(しっ!氷河…)…巷にはカミュの髪や爪が赤い、等という噂もありますのであえてこのバージョンにしました」
カミュ「う、うむ… では、頼んだ///////」
その後カミュは照れから来る発熱でミロの誕生日前から、そして過ぎても寝込み(←誕生日後は気になって発熱。)
誕生日当日は氷河とアイザックがシベリアに来たミロをもてなし(グラグラに茹だりながらも師もモチロン参加した)
無事にカミュ人形は手渡されミロの懐に大事に収まった。
因みにアイザックの言う巷の噂には、本当の師は水晶聖闘士だという噂もあるがここでは割愛する(笑)
―そして時は戻り深夜・天蠍宮―
その日の夜、くうくう眠るミロの宮にはコスモを消したぴっちり黒スーツ姿のカノンが。
天井裏の梁に特殊ワイヤーを巻き付けると蜘蛛のようにぶら下がってミロのベッドの上に空中に浮かぶ
眠るミロが可愛くて悪戯したくなったがグッと堪えてミッションインポッシブル計画を実行
ミロがカミュ人形を抱いて眠るのはリサーチ済みなのでそっと布団をめくり例のブツを探す
だが…カノンの長い髪がその時ミロの鼻をくすぐった!
「ん、ん〜 ふしゅっ!」(←クシャミ)
『…………………!!(不味い!起きたか!?)』(慌てて髪を片手で持ち上げるカノン)
「………すぅすぅ………くぅくぅ……」
『………(ほっ 昼間散々相手をして正解だったな)』(←六発ほど喰らってもんどり打つ痛みと僅かな悦を味わったカノン)
だが、はだけた布団からはカミュ人形が見つからない。…おかしい、ドコにありやがる?
そこでカノンは初めて気が付いた。ミロのパジャマの一部が膨らんでいるのを。(モチロン下ではない)
胸元に丁度それくらいの膨らみを見付けたカノンはそっとボタンを外していった。(←コウイウ事は大得意)
そのシチュにムラムラギンギンしながら片手で器用にボタンを外していく。すると…カミュ人形はそこにあったが…
(こ…この野郎ッ!)
カミュ人形は丁度ミロの乳首を吸ってるような形で俯せでミロの胸元にくっついていた。(←カノンの歪んだ視点によるもの)
ムカムカ(+ムラムラ)しつつ、カミュ人形をそっと取り上げようとするとその時ミロが抵抗を!
な、何とカミュ人形をぎゅっと抱いて…ま、まるで乳首に押しつけている様な状態に!(←やはりカノンの歪んだ視点によるもの)
一層カノンはムカムカしつつカミュ人形を抜き取った。
(ムカムカ+すげぇムラムラ。何故ならカノンは『も、もっと吸って!もっと強くッあ、ああ〜』というミロを妄想した)
ボタンを光速で戻し(やはり器用)急いで布団を掛けて撤収に。
(↑これ以上ここにいたら自分を押さえられなくなりそうになったらしい)
そして煩い兄に気付かれないように自宮の自室に窓から戻るとカミュ人形のつなぎ目をほどく
綿にまみれた心臓部を取り出すと作業に取りかかったのだ。
「…フ、これか」
再生ボタンと、消去ボタンを確認。
『ミロ……』
試してみると再生した後ボタンを押せばその声が消せるらしい
例の声を聞き出そうとカノンは再生ボタンを押しまくった。
『…ミロ!』カチッ
『…ミロッ』「違う」カチッ
『ミ、ミロ…』「…というか何パターン入ってるんだ??」カチッ
カノンが呆れながら『ミロ!』というカミュの声を100回ほど聞いた後…
『ミロ……愛している…』
「これだ!」
101回目に入れた4年越しのカミュの愛の告白は悲しいことに愚弟にのみ聞かれ…
「フ、残念だったなカミュ」カチッ(←消去ボタンを押した)
そして愚弟の手によって秘密裏に消去されたのだった。
そして一部重要な部分を消された心臓部を無事に戻されたカミュ人形は(←こういう事には無駄に器用なカノン)
すやすや眠るミロの胸元に戻され朝を向かえたのだった。
−朝−
「…ミロ、起きろ朝だ…食事を作った、一緒に食べよう…」
「ん、ん〜〜〜おはよ………ボルシチ?」
「ボルシチだ…早く来い……」
う〜〜んと伸びをするミロの傍らにはあの時プレゼントしたカミュ人形が。
それを鉄面皮の下に押し隠した淡い恋心を募らせた目で、そっと見つめるカミュ
まさか愛の告白が抜き取られたとは知るよしもない彼はカミュ人形を大事そうに抱えるミロを見て、
弟子ぐらいしか分からない表情の変化でそっと微笑んだ。
『ミロ!』
そして今日もミロの名を健気に呼ぶカミュ人形に、愛の告白をいつ聞かれるのか胸をドギマギさせミロを見る
それは一生愛の告白を言えないのだと知らないカミュは、今日も秘密に胸をときめかせるのだった。
(FIN?)
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