ララアの僥倖





ララァが雨上がりのテラスで微睡んでいると1羽の鳥が悲しげに鳴いた。
水辺でのたうつ鳥は死期が近いのか 水辺でもがき苦しんでいた。
鳥は白鳥だろうか。
だが、今水辺でのたうつそれは、白鳥という鳥の優美さはまったく影を潜めている
所々羽は抜け、やせ細り、なんだか汚らしくララァには見えた。

(老いて死ぬのはいやあね・・・。)

そんな傲慢な思考に思いをはせ そこで、ある事に気付く。
・・・・・・大佐の事だ。
ララァの大好きなシャア大佐は、すごくいい男だ
ララァはシャアの事をちょっと分析してみた。

金髪 青い目 整った顔立ち。身長も高く年齢はピチピチ。モチ性欲は旺盛
(SEXの技術は今ひとつだが時間を掛けて何気なく仕込めばそのうちきっといい仕事をしてくれるだろう)
博識で聡明。フェミニストな上、自分にぞっこん。そして高資産。
(シャアがジオン採掘場金鉱脈の一つを階級に任せて横領したのを、実はララァは知っている)

シャアはララァにとって憧れで手放せない王子様だ。
何処にもスキがなく完璧!まさにパーフェクト!!
だが、そんなシャアにも落とし穴があったのだ・・・!
そう、それは老い。
ララァは彼が、年を取って変わってしまうのでは?と不安に思った。
嫌な想像は次から次へと浮かんで、ララァの頭を悩ませた。

(大佐が、食事の後に爪楊枝でシーハーやるのなんて許せないわっ!)
(ああっ大佐がはげるとなんて切ないのかしら。そういえば”ヘルメットは蒸れるな”とかおっしゃっていたわ!)
(あああ!それを言うなら軍靴よっ!確か地球で水虫の薬を買っていたじゃないの!)
(それに大佐ってば甘いものに目が無いんだったわっ!ぶよぶよな中年太りの大佐!サイテーだわっ!)
ああ・・・私はなんて ”カワイソウ” なのかしらっ・・・!

その時だった。
いつの間にかララァの側に誰かが立っていて、何かを呟いた。
あまりの事に呆然として良く聞き取れなかったが、言葉尻だけは何とかとらえる事が出来た。

「・・・・・スキだったんですか?」

その言葉に相手を見上げる。
立っていたのは連邦軍の少年兵。
くるりと撒いた赤毛に、どこか乳臭い顔立ち。舌足らずな声・・・。
真っ直ぐに伸びた足ときゅっと締まった小尻がとてもララァの好みだった。
だが、それだけでは無い胸のドキドキにララァは戸惑う。
彼の瞳を見ると美しく澄んでいてララァを幸福にさせたが、先程の言葉に少しカチリと来た。
少年はララァの思考を読んだのだろうか?・・・まさか!と思いつつも否定できない何かがあった。
そして彼はララァに聞いたのだ…”貴方、それでもシャアの事好きなんですか?”と・・・
青臭い小僧に何が分かって?とララァも負けずに言い返した。

「美しい者を嫌いな人がいるのかしら?
・・そしてその美しい者が年老いて死んでいくのを見るのは悲しい事ではなくて?」

その時、ララァの頭で何かが弾けた!

目の前の少年が成長し、シャアと罵り合いながら果てるのを・・・!
成長した少年もシャアも、凛々しく輝きを放ち、様々な人間を引きつける。
そして自分と相対する時、・・・実に色ッペ〜苦悶の表情を浮かべるのだ。
これほど嬉しい事はない・・・!
ララァの大好きなシャア大佐は、遠い未来でも大好きなシャア大佐だったのだ!

それからも様々な映像がララァを包み込む・・・

それらは、ララァの大好きな禁断の愛を匂わせる2人の草原での格闘シーンだったり、
涙を滲ませながら彼に向かって叫ぶ大佐のシーンだったり・・・色々だ。
そして・・・それは突然に消えた・・・。

「止んだわ!」

ララァはどうしようもない嬉しさで外を駆けだしていた。
ちょうど外は雨が止んでいた。
少年と目が合うと、ララァは微笑んで彼を見つめた

「綺麗な目をしているのね」

ララァは何処までも駆けた。
(私の大佐は永遠に美しい・・・!)
嬉しくて駆け回っているうちにララァが見た”刻”はパチンと弾けて記憶から消えてしまった。




だが、ララァは幸せだったのだ。




後の彼が ”クワトロ・バジーナ” と名乗る頃・・・

カミーユ・ビダンに

「あっ!大尉!食事終わったからってシーハーするのやめてくださいよっ!親父臭いなぁ・・・もうっ!」

とか

「もうッ!大尉!俺の前で靴脱ぐの止めて下さいって言ってるでしょ!?臭いったらありゃしないんだから」

とか

「クワトロ大尉!風呂上がりにタオルで股間をパシーンって打つの、ハッキリ言って不快です!
オッサンですかアンタ!?嫁さんが来ないのはどうしてそれだって気付かないんです!?」


とか罵られるのを見ないで済んだのだから・・・。








(END)








うえへっへっへ・・・Gファンに石投げられるの覚悟で書きました!
実はこれ、あるサイト様の素敵なララァの小説を読んでいたとき頭に浮かんでしまった物。
つくづく自分の脳みそはただれて膿んでやがるなぁ、と実感するこの頃です


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