SCALET












今日、やっとスウィートウォーターに待ちこがれていた総帥専用機MSササビーが秘密裏に運び込まれた
細かい整備を行い、明日近隣の宙域でロール・アウトの予定を入れる。
作戦は大詰め 守備はすこぶる良好 連邦との決戦も近い
高揚する精神を女でなだめ 深い眠りについた・・・・・・筈だった。
聞き慣れた笑い声にこれが夢の中だと悟る。
もう14年もたっているのに、いまだ薄れない ・・・彼女の記憶 ・・・彼女の気配。



『ラ、ララァか・・・?』



一羽の白鳥が静かな湖面をゆるゆると旋回をする ・・・ここはサイド6?
鈴を転がすかのような彼女の笑い声が響き渡ると その度に幻が私を包んだ。

ララァ、何故私にこんなものを見せる?

ガルマの戦死を笑いながら見送った・・・ キシリアを戦闘のどさくさに葬った・・・
百式で宇宙をさまよった後の事・・・ 甦る過去の映像、昔の記憶。
ララァ、君は私が後悔しているとでも?そんな事はない。私に過去を悔やむ そんな趣味はないさ



ホワイトベースに何度も苦い思いをさせられた・・ 次第にガンダムに押され始める・・・
アムロと罵りながら殺し合いをし  そして ・・・意識を混ぜ合わせた。
また、同じ事をくり返すと? 私だって馬鹿じゃない。同じ轍は踏まない。



ララァ、君はそんなにまでしてアムロを助けたいのか?何故アムロを思う!?
そう問えばララァは少し悲しそうな顔で笑い 私の額の傷ををゆっくりとなぜる



溶け出す意識、頭の中がオレンジ一色に染まったかと思えば そこは地球の大気が織りなす見事な夕焼け
隣からカランと氷が音を出す 振り返ればアムロが私にふわりと笑いかけた。
赤毛が夕日に照らされて燃えるように赤い 酒気が彼の表情を柔らかくしているのだろうか?
場面は変わり今度は地球からソラを見上げる妹。あんなに小さかった妹はもう大人の女性になっている。
それから・・・エウーゴで出会った人たち ジャングルで暮らす人々 連邦の悪しき政治家ども・・・
ぐるぐる色々な人間の顔が浮かんでは消えた。
彼らを殺すことになるのだぞ?と問うように
・・・ああ、だがねララァ。私には宿命があるのだよ・・・・



甦る苦い記憶  ララァが殺された時、自分はガンダムに手も足も出なかった・・・
シロッコ、ハマーン、次々に現れるニュータイプ。 時代は変わったのだと追いやられた絶望感 無力感・・
また私は敗れると?そんな、馬鹿な!! では私は何の為に生まれて来たと言うのだ!?私の存在とは!?
ジオンの子に生まれ、私が成したのは復讐だけだと!? ・・そんな、そんな事があってたまるものかっ!!
今も宇宙に暮らす人々の希望や願いが、一心に我が身に向けられていると言うのに!
ジオンの子として、新しい時代を創れと思いが一心に向けられていると言うのにっ!!



ララァ、私は成さねばならないのだ。たとえそれが煉獄の道を歩むことになっても、私が私で有るために!
そうでなければ、私が私で無くなってしまうのだ!私が私でいられなくなってしまうのだよ!
ああ、だからララァ 私に力を・・・ 世界を成せる力を! どうか私をその手で導いて欲しい・・・



『大佐・・・』


不安なのだよ いくら作戦を巧妙に練っても、きっとアムロが私を邪魔しにやって来る


『・・・大佐・・・』


何故アムロなのだ?なぜ奴なのだ!奴はニュータイプのくせに何も成さないじゃないか!そのくせ私に刃向かって来る!!!


「大佐・・・?」


・・・何故私はアムロに勝てない!?何故奴は私を分かってくれない!?奴に、アムロに私は勝ちたい!
・・・勝ちたいのだ!今度こそ負けたくない!!負けたくはないっ!!!
奴をねじ伏せて、奴をひれ伏させて、私はアムロに勝ちたい! アムロに勝ちたいのだララァ!!



・・・・・そうすれば・・・・



「大佐!」



その時激しい体の揺れに気がついて目をうっすらとあけた。目の前をナナイがのぞき込む。
ナナイは見事なプロポーションの裸体を見せつけながらベッドを出ると水差しを手にし、私に差し出した。
それを受け取り喉を軽く潤す。


「すみません、うなされているみたいだったので起こしました。・・・大佐?」
「・・・・・・ああ、すまない。 君を起こしてしまったな。ナナイ」


ナナイを抱き込みもう一度眠りへと入る。彼女の香水がララァの気配を少しだけ消した
微睡みに落ち始めた意識で、もう一度ララァに語りかける。答えはもう無い 届いているかも分からない



『ララァ、私はもう止まることは出来ない。私はアムロに勝ち 奴に力で解らせてみせる』



次の日 真新しい私専用の機体に体を滑らせてソラを滑空する。
重厚なフォルムにすばらしい機動性。
それにこの深紅の機体を目にすれば アムロは誰よりも私がココだと理解するはずだ





「さあ、早く来い・・・アムロ! 私はここだ」










お前を殺して


全てを私に溶かしてしまおう。

















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最初に書きあがったらボタン一つで消えちゃって、泣きの涙で思い出しつつ書いた 思い出ぶかーいモノ
やっぱりニュアンスが違くってうーーーーんと思わず呻いてしまいます。
対で オール・イズ・ホワイトを書きました。



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