Magic earth 〜シャアとアムロと時々カミーユ、そんでもってジュドー〜
白い魔導師の記憶
「いけない!それを使っては・・・」
だが、アムロの叫びの届かぬ所で光の兵器がうなりをあげた
憎しみを生み出す兵器
それは沢山の人々を光で覆うとあっというまに焼き殺してしまった。
光の通った道筋は、ただ、ただ 静寂であった
「う!! こ、これが“火の七日間”で世界を焼き払ったという・・・巨神兵!」
洞窟の掃除もあらかた終わったジュドーは腐海の森を探索していた。
苔むした洞窟にはね回る緑の生き物を見つけてそれを追うと、奥に佇む巨大な人型。
苔に覆われたそこは、よく見れば金属らしき物で出来ている。ドックか何かなのだろうか?
・・・と、すると、ひっそりと眠っているコレは大魔導師アムロが操っていたという
伝説の巨神兵“RXー78”という奴か・・・?
その時回りを飛び跳ねていた緑の球体達が一斉に騒ぎ出した。
すぐ後ろから足音がわずかに聞こえ、振り向く間もなく横から声が掛けられる
「違う。火の七日間はソーラ・システム そんでもってコレはニューガンダム」
さっぱりよく分からなくて首を傾げるジュドーをよそに「お茶」と事も無げに告げるアムロ
バウンドがいくらか低い球体を抱え上げるとジュドーに嬉しい一言を告げた。
「お茶、早くね。カミーユ来たから」
「そ、それ早く言ってよ!アムロさん!!」
どたどた洞窟の階段を駆け上がるジュドーにちょっと笑ってからアムロは呪文を唱えた
「・・・ドラゴラム!」
白銀の竜に姿を変えてそこを去ろうとする前に、懐かしい愛機をちょっとだけ眺める
・・・・ガンダム。
自分の人生を振り回し、殺人兵器として名高いソレ
だけども、捨てられなくて時々手を入れここにそっと保管している。
(コレを見てシャアは嗤うだろうか?それとも・・・)
取り留めのない思考を振り切って竜の洞窟へと羽ばたいた
きっとカミーユが退屈にイライラ爪を噛んでるかもしれないなと思って
「はい、カミーユさんvアムロさん玉露で良かったんですよね?」
「そうそう、ジュドーったらセコイんだよカミーユ?いつもは“高いから!”って安売りの煎茶出すんだよ。
それなのに今日はいったいどうしたんだろ?ねぇ?ジュドー?」
「な、何いってんですかアムロさん!お客様にはいい物出すのあたりまえでしょ〜!?」
「それだけ?ほんと〜にそれだけかな?」
「もうっ!しつこいですよアムロさん!」
肘でつつき合う師弟を余所にカミーユはお茶をずずず・・・と、じじ臭くすすると
部屋をぐるりと見回してから話しかけた。
「アムロさんに弟子って聞いて驚いたけど、丁度いいんじゃないですか?部屋が綺麗で驚きました。」
「そう!聞いてよカミーユさん。これが聞くも涙語るも涙で・・」
「ん!?玉露旨い!さすがアリアハン産はひと味違うな〜」
ごまかすアムロに突っ込みを入れているとき、ジュドーの目の端に緑の物体が写った
ソレはアムロの足元付近をころころと転がり回っている
「アムロさ〜ん、なんか変なの入り込んでますよ?」
「違うよ、調子悪そうだったから持って帰ったんだよ」
そのやり取りを聞いたカミーユが驚いた顔でジュドーを見た
「え?お前“ハロ”知らないのか?」
「うん 知らない。あ!そうださっき凄いの見たんだ!伝説の白い巨神兵!!」
その時ぎくりとしたアムロをカミーユは見逃さなかったが、アムロの気まず理由が分からず話を続ける
「巨神兵・・・って、MSの事か。」
「MS・・・? 何ソレ?」
「その巨神兵ってヤツの事さ。ジオンだとMSって言うんだ、最初に作ったのもジオンなんだぜ?」
「へーーー」
「で、ハロは、アムロさんが作った人工生命体。」
「そんな大層な物じゃないよ、カミーユ。ハロはいわゆるペットロボット」
「あ!じゃあもしかしてあの白いMS?アレもアムロさんが作ったとか?」
その瞬間、カミーユは空気が凍り付いたのが分かった。
・・・・アムロさんだ。
だが、地雷を踏んだと気づかないジュドーはそのまま話を続けている
「凄いよなー、火の七日間で大陸の3分の1を焼いちまったんだろ?」
「・・・それ、コロニーレーザーの事だろ?」
ひやひやしながら言葉を交わすカミーユだが、どんどん冷たくなるプレッシャーに緊張感が高まった。
ジュドーはまったく気づいてないらしくにこにこと話を振ってくる。
・・・・・おかしい。
微かな記憶にジュドーと感応した覚えがあって、コイツはNTだと思ってたのに・・・?
なんで気づかないんだ??
「あれ?あ、アムロさんも何か言ってた。ソーラー・なんたらとか・・・」
「ああ。コロニーレーザーも含めソーラ・システム・・・」
その時・・・ ドン! とテーブルが鳴った。
アムロさんが抱えていたハロをテーブルにいきなり置いて中を開きだしたのだ。
コレにはさすがにジュドーも分かったようで、口を閉じ、茶を飲みながらアムロさんをじっと眺めた
「カミーユ・・」
やがてハロを弄りながらアムロさんが呟いた。
午後のお茶の時間は何とも奇妙な空気が流れている
「カミーユ、MSの事・・ シャアに言うなよ?」
コクコクと首を縦にふってその場を収めようとしたのに、ジュドーがいらんことを口走った
「あ!そうそう。シャアって誰なの?カミーユさん。俺さぁ、気になっちゃって〜〜。」
なんかカミーユさんの小さい頃知ってる見たいな会話だったし、と続けようとしたが急いで黙った
アムロがドス黒い念波のような物を出しながら“ハロ”をカチャカチャ弄ってるのがとてつもなく恐かったからだ。
辺りには気まずい空気と二人の茶をすする音、機械を弄る音
それと植物園の様になってるこの部屋の水音だけが耳にやけに響いた。
ジュドーは話題を変えるべく、この部屋についてカミーユにふってみた。
「そうそう、ここだけはあんまり散らかってなかったんだ!」
「へ、へぇ〜?そういえば、外のとなんだか色が違うよな?」
「うんうん、ここのは小振りだし胞子も出ないんだよな〜〜」
「あ!ホントだ。ここのだけ出してないな・・・」
カミーユは窓の外に広がる雪の様な景色
いつも3時に降りそそぐ、胞子の幻想的な風景を眺めて不思議に思った。
確かこの胞子、すごい猛毒でマスクや耐性菌を吸い込んでいない動物は
5分で肺が腐り落ちるという代物だったはず・・・
そこでアムロがやっと口を開いた。 すごく不機嫌なままで。
「腐海はね・・・汚れた土を綺麗にしてるんだ。ここは汚染された土地なんだよ」
腐海の植物たちは水が綺麗なら毒は吐かない
外の植物や虫たちが大きいのは放射能のせいだよ。
カミーユはその言葉であっ!と気づいた。
自分が長い眠りに入る前にこんな森は無かったのだ。だとすると・・・
アムロは諦めたようなため息をつくとゆっくりと話し出した。
「シャアは、シャア・アズナブル。ジュドーは知らないか?昔この地に星を落とした男だよ」
えええ!?と驚くジュドーを見ると、さすがに彼を知っていたようだ。
アムロは静かに話を続ける
「俺はその昔、ヤツと殺し合いをした。アイツはソーラ・レイよりもひどい事をしようとしたんだ。
俺はもちろん阻止しなきゃならなくてね。その最後に使っていたのがジュドーが見たニューガンダム
俺が基礎設計して、シャアを殺すために作ったMSだ」
思わぬ重い話題に二人は黙り込んだ。
そしてカミーユは内心深いため息をついた
(師匠、アムロさんまだ全然怒ってます。嘘言ってすみませんでした)
さすがに重すぎる会話に3人はしばらく無言で過ごしていたが、
アムロがハロの調整を終わらせると苦く笑って“忘れてくれ”と呟いた。
元気になったハロが、ばいんばいんと飛び回ってその場を少し和ませる。
ジュドーが新しくお茶を入れてきたところでアムロが会話を切り出した。
「あ、そーだ!カミーユこれからちょっとヒマ?」
「え?ええ。特に予定はありませんけど」
「それじゃあ、ちょっと修行に付き合ってくれない?ジュドーのなんだけど」
「ええ?うそ!?アムロさんいいとこあるぅ!カミーユさん、いいでしょ!?ね?ね!?」
何故かはしゃぐジュドーに首を傾げつつ、カミーユは気づかれないようにそっとため息を付いた。
実はここに来たのは、先日師匠のシャアと話していた“パフパフ”についてと、
その師匠にせがまれてアムロさんの気持ちを何気なく探ってくるのが目的だったのだ。
だが、師匠に対しての気持ちは嫌と言うほど分かったし(それを伝えられるかと言うと別だが)
また、アムロさんの地雷を踏みたくないので“パフパフ”は聞かない方が妥当だと、第六感が告げている。
「まあ、師匠 自業自得ということで・・・」
「ん?カミーユさんなんか言いました?」
「いいや。なんでもない」
カミーユは修行の場をあ〜だこ〜だ言い合う師弟のほのぼのした空気を味わいながら
ずずず、と茶をすすったのだった。
う〜ん、ちょっと暗い空気が出てしまった〜〜〜う〜〜ん
さてと、お次はお待ちかねダンジョンですよ!ダンジョン!!
ちなみに腐海の森に飛び回るハロと苔むした格納庫に眠るニューガンのシーン
脳内でラピュタのお城と合成して妄想いただければ幸いです。