Magic earth
 〜 シャアとアムロと時々カミーユ、そんでもってジュドー 〜


噂と真相?








ぱふ ぱふ ぱふ ・・・


暗闇の中で柔らかな感触が頬を包む


にわかに蝋燭が灯されると、そこには椅子に腰掛けた少年がいた。








「――――っ 腐っているなッ!! 連邦はッ!」
「・・・・師匠。鼻血出しながらじゃ説得力ありませんよ」

熱い紅茶をふうと一吹きする間に、近くにいたモーグリがシャアの鼻血を拭ったのだった。









カミーユが意識を失ってからここに戻ってくるまで、数年がたっていた。
だがこの“紅蓮の城”は何一つ変わってはいなくてカミーユを少しホッとさせた。
ここはジオンの地 その西の果て
幻影を見せ人を惑わす森の、その奥に瀟洒にたたずむ“紅蓮の城”
そこは沢山のモーグリ達が主のシャアの世話を焼き、またカミーユもシャアの元で修行を積んだ場所だった。
師匠のシャアは良く姿をくらませるので隠れ家は他に沢山あるのだろうが、
数年たった今でもここにいてくれたことが素直に嬉しい。
カミーユは荷物を落ち着けるとさっそくシャアに手合わせを願った。

カミーユの“天の叢雲”と、シャアの“ラグナロク”がカチリと合わさる
それを合図に双方距離を取り間合いを計ってにらみ合うが、短気な師弟は我が先にと斬りかかった。
シャアは先手必勝とばかりに接近戦へと懐に飛び込む
カミーユは先天的な気の強さから、それに構わず斬りかかる

「師匠ッ!やっぱり年ですかね!?動きが・・遅いですよッ!」

天の叢雲がシャアに向かって唸りを上げる 一本取ったか!?
・・・だが、シャアはそれを小手で綺麗に受け流して攻撃へと転じた
天の叢雲から水滴が弾け カミーユの視界を一瞬遮る

「戦いとは二手、三手先を読むものだッ!」

シャアのラグナロクが無情に振り下ろされ、拳にジーンとした痛みが走る
手から天の叢雲が滑り落ちていた

「・・・・くそっ! 参りました。 あと、ちょっとだったのに!」
「まだまださ、さて・・・少しゆっくりしはどうかね?」

自分では引けを取ってない刀捌きだと思ったが、さすがにシャアの経験値には及ばなかった。
カミーユは悔しそうにチェッ!と爪を噛んで刀を鞘にしまうとシャアの後ろに付いて歩く
向かっているのは庭が良く見渡せるティールームの方だった。



「なんです?それは」

モーグリの入れた特性アップルティーの香りを嗅ぎながらカミーユが訪ねると
シャアは都合が悪いのかそれを“ん?”とか“ああ”とか適当に濁して沈黙した。
今モーグリがいつものようにと手渡したのは雑誌だ。
よく見れば情報雑誌のようで表紙に大きく“特集!連邦、夜のプレイスポット!”と書かれている。
それを見てカミーユは、変わったもの〜師匠が年を取ったのとアムロさん狂いが進んだこと〜!と認識した。

あのはっちゃけた衣装が“若さ故の過ち”と軽く笑えそうなぐらい今の師匠は大人の魅力でいっぱいだ。
だが、それと反比例するかのように今の師匠はアムロさんへの執着丸出し、まるで子供だな状態である。
顔も合わせてくれない相手にデートの下調べなんかして、いったいどうするつもりなのだろう!?

モーグリがアポロンのハープを軽やかに奏でていたが耳に入らず
カミーユは病が進んだ師匠を生暖かい視線で見守った。
昔も、彼と再会したときから『アムロアムロ』と小うるさかったが、この感じはまさに重体。
はぁ・・・とため息を付くカミーユを無視したまま、師匠はそれを熱心に読みふけった。


・・・そして、冒頭のシーンというわけだ。
師匠は鼻血を出しながら「連邦は腐っている!」とキ○ガイの様に叫びだした。

「はいはい。・・・何の記事を読んだんです?」
「ほれだよ、ハミーユ! あああ・・・!何と言うことだ!!」

すぽん!と抜けた赤い鼻栓をモーグリが慌てて詰め直すのを横目にカミーユはその雑誌を受け取った。
最近では交流も深まった連邦だが、ジオンからすればまだまだ異国。
ハッキリ言えばジオンの連邦に関する雑誌なんて嘘八百が多いのだが珍しくそれは正しい情報だった
何故それが分かるかというとカミーユは元々連邦の出身だから。
誌面には“パフパフ”について事細かに書かれていた。

「師匠が言ってるのは・・・パフパフの事ですよね・・・。」
「そうだ!なんとふしだらなのだ!!許せん!」

まぁ、そう言われれば確かにそうなのだけれど。
だが、カミーユには師匠が何で怒っているかが分からない。
単なるフェミニズムならこんな怒る人では無いし。
淀みなく文字を追うと・・・成る程!カミーユは理解した。
シャアはちょっとした勘違いをしているのだ。
こんな当たり前のことでも、生粋のジオンの彼は知らないのだろう。

「もしかして、師匠。この場所がシャイアンだって事に関係あります?」
「大ありだ! わ、わ、私のアムロがッ!汚されてしまったかもッ!?ぐああ!!」

もんどり打ちながら鼻血を大量に流す師匠に、カミーユは内心冷ややかに冷めながら師匠に告げた

「アムロさんが“パフパフ“させられたかも?って事ですよね?」
「・・・言うなッカミーユ!私の胸は悲しみではち切れんばかりなのだぞ!?」

何言ってんだよ、それ想像して興奮してるくせにさっ!これだから大人って・・・ッ!
と心で吐き捨てながらカミーユは優しげにシャアに続けた

「してないと思いますよ?・・・だって、アムロさんじゃ無理なんです」
「何を根拠に言っている!?なんと連邦は惨いのだろう・・・ハアハア・・・」
「だって、無理でしょう。ぱふぱふっ確か胸を・・その、なんかするモンなんですアムロさんないし」

照れて言いよどむカミーユにシャアが??という顔をした。

「何を言っているのだ?カミーユ。確かに昔のアムロは、少年期特有の胸の膨らみが・・・」
「だッ・・だからそんなんじゃ出来ないでしょうが!パフパフがッ!」
「できない・・胸・・・。!」
「・・・・・分かりましたか、大尉」

思わず昔の呼称で問いかけたカミーユにシャアは不敵な笑みで問いかけた

「存外、子供なのだなカミーユは。」

――――どっちが!と怒鳴り返しそうなカミーユにシャアは続けた

「“パフパフ”が、どうして胸だと思うのか、だ。」
「だって、その、柔らかいものが暗闇で押し当てられる・・・胸でしょう!」


色々あるのだよ、大人には・・・


それだけ言うとシャアはふらつきながら床へと向かってしまった。
何だよそれ!と憤慨したカミーユが事実を知るまであと数週間。





(end)









冒頭のむらさきの部分はシャアの妄想ということで(笑)
なんかこの世界ではシャイアンが歓楽地になってるもよう
さて、カミーユは誰から大人の遊びの真髄(?)を聞かされるのかしら?


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