Mermaid in the Sea <第一章 人魚のいる海> ― 白い悪魔 ― |
日が、沈む―――― … 今、サルディーニャの海にオレンジ色の日が沈む そのオレンジ色の光が波に揺らめいて溶け合って、とても素敵な景色を作り出してくれるけれど私の心は曇ったままだった。 「このまま…君に逢えないのか?」 ぽつりと人魚のいる海へ呟いた そう、この美しい海の中には人魚がいるのだ。 私の心を奪った、優しい笑顔の人魚 友人は“男だぞ?”と水を差すが、一目惚れで…しかも初恋なのだ。諦められない でも彼の行方は一様に知れない 募る恋慕で胸を苦しくさせながら壁にもたれて呟いた 「私達はこのまま逢えないのか?…だが、私は君にもう一度会いたい…」 海は大きく小さくさざ波を響かせて、ただシャアを慰めるだけだった。 *** 「シャア、まだそんな顔をしているのか。もう一週間だぞ?諦めろよ」 バドワイザー片手に黄昏れながらブツブツ呟く本日の主役にガルマは思い切って声を掛ける すると、その友人でもあるシャアは自分をたっぷりギラッと睨んでから一気に八つ当たりをまくし立てた。 「煩いな、ガルマ。大体君は何と言った?今日のレースで目立てば彼が私を見つけてくれる、そう言ったよな君は。だが、どうだ?この人の山は」 確かに…とガルマは思った。今サルディーニャはレースの観客で溢れかえっている だが、いや…だからこそレースでシャアを見て相手が見つけてくれるかもと言ったのだが。 「渡りに船とばかりにすり寄ってくるのは女ばかり SPに人捜しを頼んでも両手を挙げてお手上げだと言われた! これでは踏んだり蹴ったりではないかっ!!」 ガルマはいきり立つシャアをハイハイと肩を竦めて軽く流した。八つ当たりは慣れている 隣で話を聞いていたアストナージが 何の話しですか? と声を掛けた 「シャアが一目惚れした相手が、見つからないんだと」 ガルマが答えるとアストナージは『オーナーが一目惚れなんて珍しいッスね』と興味無さそうに答えさっさとその場を後にした 手にはサラダ アストナージは恋人のケーラに寄り添いに行ったのだ。 ガルマもそれに習ってイセリナの所に飲み物を届けに。…シャアの不満は大爆発した! (私ばっかり不幸ではないかッ こ、こんな不公平があってたまるものかッッ!) シャアはこの友人達のピンク色オーラに泥を塗るべく『シネシネダン』をする事を決意 これは昔読んだ日本の漫画に書いてあった事で(←稲中卓球・ラブコメ死ね死ね団) 女性のいる男性に嫌がらせをする事を『シネシネダン』と言うらしい それをシャアは独りで決行した。 …彼は、まったくの大きい子供だったのだ *** シャアはパワーボートのレースの為に、ここサルディーニャ島に来ていた。 今期のレースも上々で相変わらずの首位独走といった所 今日のレースも王者の走りを見せつけて見事優勝を飾り、チームはシャアを除いて上機嫌 そう、優勝してもシャアの心は晴れなかった 一目惚れした人魚が見つからないのだ。 観光者かもしれない彼を急いで人を使って探してみても、足取りひとつ 身元ひとつ見付けられ無い しかも時間が経ってしまった今では、ここにいるのかさえも分からない。 そして最後のダメ元で目立って見たものの…彼からのアプローチなど無かった。 方々に手を尽くしてこの結果 …多分、もう見つからないだろう。 シャアは不機嫌をこの上なく高めながら、レース後の打ち上げパーティーを練り歩いた。 「やばい…イセリナ、シャアがキレた!」 ? ガルマに言われイセリナはシャアを見たが彼はマティーニ片手に実にスマートな身のこなしと素敵な笑顔で女性と談笑している 何がキレたのか分からなくてイセリナはガルマに尋ねた 「ガルマ様?…彼、楽しそうにしてますわよ?」 「いや、良く見てみるんだイセリナ あの女性には恋人がいる。…ほら、あそこで身のやり場がなさそうにさ迷っている彼」 ガルマが指し示す方を見ると確かにその女性の恋人らしき男がヤキモキしながら恋人を見ていた だが相手の女性は気が付いているクセにシャアに夢中でほったらかしなのである 「あれはカップルに対する嫌がらせ…その証拠にシャアが社交辞令用のあの笑顔!」 イセリナは社交用と呼ばれたシャアの笑顔を良く見てみる だが、それは一日の長よろしく仮面の気配が見えない。彼はとても華やかに笑った。 女性の耳にそっと悪戯っぽく囁いて、相手の顔を赤らめさせている 相手の男はたまったものでは無いだろう 「あんな顔をする時、シャアの心にはブリザードが吹き荒れている」 「…良くは分かりませんが、すごい嫌がらせな事は確かですね」 そう、彼からは常にはないオーラが吹き荒れていた! 女殺しの凄まじいオーラ 見ればシャアは標的を変えたようで違う女性に微笑んでいる ……どうやらアストナージに被害が及んだようだ その時ガルマがイセリナの手を掴んでテラスへと誘う それに頬を染めるがガルマは気が付かなかったようだ。 嬉しそうに 隠れよう、と笑って手をそっと握る。 「あれは『シネシネダン』と言ってね…」 ガルマとイセリナは楽しい一時を過ごした。 |
死ね死ね団、懐かしいです。ガルマとシャアは幼い頃コレを読んでパンダの乗り物を作らせ、犬の格好をしたと思われる
で、標的はガルマの姉のキシリアとお相手候補のマ・クベとかだといい!