Mermaid in the Sea   <第一章 人魚のいる海>



Kiss −キス−   4









「どわっはははぁ―――っ!! は、はひぃっ くるっ・・・苦しいっ・・・!!!」



ガルマが小刻みに震えだしたかと思えばタガが外れたような大爆笑を始めた。
見れば隣のイセリナまで顔を真っ赤にして笑っている。
・・・・・・・不愉快極まりないな・・・・。

「何がそんなに可笑しいのかね、ガルマ」

不機嫌丸出しでガルマに聞いた。
・・・・当たり前だ!
”初めての恋らしい”と前置きまでして人魚との出会いを語った私に、それが対する仕打ちかねガルマ!

アルマは苦しそうに腹を捩ってひとしきり笑い終わると、「食事中じゃなくて良かったよ」と言った。
グラスの水で口を潤しから私の顔を見てもう一度ブフッと笑うと、やっと笑いを収めて話し出した。

「いやあ、すまないシャア。・・・それにしても君はスゴイ!!」

・・・・・・どうせ私はロマンチストさ、だからお前に話したくなかったのだ。
気分を押さえて彼に本題を聞いた。

「・・・そうか。 ・・・で、ガルマ。 君は魚影ぐらいは見たのだろう?」
『『ぎょっ・・・魚影っ!?』』

2人がユニゾンして聞き返すや否や、また下品な笑いがこだました。
イセリナ君などは口を付けていた水を吹きだしている。
・・・・汚いな、・・・まったく、何だというのだねっ!?
人魚だって魚だろうっっ!?魚影のどこがそんなに可笑しいのかね!?どこがっ!!
ガルマは”マグロじゃないんだから”となおも笑っていた。・・・涙まで流して。


私は本当に気分が悪くなってそっぽを向いた。
こんなに馬鹿にされるとは思ってもみなかった!


「怒るなよシャア。僕たちが笑っているのには訳があるんだ。・・・そうだな、人魚は見ていないが君が逢ったであろう”人間”には心当たりがある。」

「何だと!?」

あれが・・・人間?
その言葉で怒りが一気に吹っ飛んだ。
しかし、またガルマにからかわれてはと出来るだけ素っ気ない風を装って聞く

「知っているのか?」
「いや、素性は知らないが・・・シャア、君を助けてくれた人だよ」


・・・・人間。そう聞いて心臓が早鐘を打った。
自分はてっきりガルマが助けてくれたものとばかり思いこんでいたのだ。


「君が落ちたのをいち早く気付いてくれた、近くに碇泊してたクルーザーの人だ。・・・見事だったよ、僕に合図を送った後すぐに飛び込んで助け出してくれたんだ。人工呼吸もね。・・・で、すまない事にこちらが慌てふためいてる合間に、どうしたらいいかを簡潔に言うとさっさと行ってしまったんだ。・・・だから名前も知らない。」


・・・・そうか、人間だったのか。 ・・・・・・・これは夢じゃ無かった!!
その事実がまだ夢の中にいるみたいで、ガルマ達がいるのも忘れてぼーっとした。

・・・・・・あの口付けは、本物だった・・・。


「それにしてもクルーザーからすっころんで人工呼吸されただけの事を、あんなにロマンチックに語るヤツは、シャア、君だけだよ!」


そう言ってまたひとしきりガルマとイセリナは笑った。
シャアと言えばさっきまでの不機嫌は何処吹く風で飲みかけのワインを口に付けながら考え事を始めた。

(人間ならばどうという事はない。恋愛事には自信があるし、探し出してお礼と称し、デートに誘えばきっとうまく行くだろう)



―――――この時、シャアはまだ知るよしもなかった。


      ・・・この恋愛が一筋縄では行かないということを―――――



「そういえばシャアを助けたときの手際の良さや、人工呼吸の手慣れた感じ。その道のプロじゃないか?泳ぎもすこぶる上手かったぞ。人魚というのも言い得ているかもな。」

「そうか」

(そうさ、ガルマ。私は人魚に逢ったのだ)


「しかしな、シャア。 その人魚な・・・」

「ん?」



その時の私といえば、かの人魚にどのようなアプローチをしようかと考えていた
まだ、名前さえも知りはしないのに。
・・・だから人の悪い笑みを浮かべたガルマが続けた、次の言葉の意味を
ちゃんと理解するまでに随分時間がかかってしまった。

だって、普通人魚といえば・・・・



「その人魚、  男  だったぞ?」



は?と首を傾げる私を余所に、またイセリナとガルマは大きく笑いだしたのだった。











<to be continued ――→ >



まだるっこしい事この上ないですね、はい。これから色んなキャラが出てくる予定で〜す。
ロマンチストな癖に妙なところで現実的なシャア。男だと知ってからの彼はいったいどうするのでしょうかね。
ところで人魚は魚かな?かな?



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