「・・・IF」 PIECE C
目を開くと生身のまま地面に転がっていた。空気が吸い込める事に驚く。ここは地球か?
目にするのも嫌な惨状の自分の身体を一瞥し、息を呑んで辺りを確認する。
近くに半壊の脱出ポッドがあった。
辺りに草木は殆ど生えておらず、少し先にガスがもうもうとあがる火山孔が見える。
一瞬自分は地獄に送られたのかと勘ぐるが、体のひどい痛みが現実だと、生きているのだと知らしめた。
「・・・・・・クソッ・・・・・・アムロめ・・・・一体どういうつもりなのだ・・・・!」
そう、あの時自分は死を覚悟した。
暴走したサイコフレームの共鳴によって溢れ出た光の粒に包まれながら、無念を感じ 何処かで安堵した。
それでもアムロを最後まで罵る。こうなったのは貴様の所為だと。私を理解しない ララァを殺した
思い付くままに罵倒した所で意識は途切れている。
だが、ここは地球。
脱出ポッドに大気圏突入を耐える性能はない。
と言うことはガンダムが私をかばいながら大気圏突入をしたとしか考えられない。
奴はどういうつもりで私を生かし、地球に落とそうなどと思ったのだろう?
分からない。 目視できる範囲にガンダムは見あたらない・・。
重い体を引きずって脱出ポッドに移動する。
出血が多く思うように動かぬ体 せわしない自分の息が耳にひどくさわる。
これが死の味か?
不愉快な臭い ひしゃげた身体 口に広がる鉄の味 砂利の感触・・ くるしい、くるしい・・苦しい!!
理想や大儀を挫かれ、貴様に敗北を味あわされ、無様にここで死んで行けと!?馬鹿な!!
・・・生き残るさっ 私は、ここで死ぬような・・・運命では断じて無いっ!!
ポッドにたどり着きパイロットスーツをはだけると腹に刺さった金属片を思いっきり引き抜いた
「ぐああああぁぁ・・・はっ・・・はっ・・・はあっ・・!」
自然に流れ出す汗を拭ってシート脇から救急セットを取り出し、意識を遠のかせながら止血を施す。
息を整えてスーツを震えながら脱いで服を羽織るとポットのコントロールパネルを確認する。
・・・やはり私は運がいい・・・。
ポッドは半壊しているものの機能は死んではいなかった。
見つかるとまずいデータをあらかた消去し、30秒後に爆破の指示、
その前に火山孔へと落ちるように操作する。
鞄を手に、木片を杖にしてその場を離れた。これで連邦の馬鹿共の目を少しはくらませられるだろう・・・
だが、ゆっくりはしてられない。この場を離れようと歩き出したそのとき・・・
濁った雲間の間から、小さくなったアクシズが見えた
虚無感を感じて目眩を覚える・・・ ああ、私は 敗れたのだ、 全てに。
「アムロッ・・・!」
何故、あの時 お前の手で 殺してくれなかった?
目尻から砂と一緒に雫が流れ落ちた。