本日ハ晴天也。の小春様へ送らせていただいた暑中見舞い。
お許しをいただいたので飾らせていただきました!
市と赤
ナツノハナシ
↓
水蜜桃
「熟れすぎじゃねえか」
ある夏の日、アカギが市川の所へ持ち込んだ水蜜桃
柔らかくクリーム色に染まったそれを
市川はそう言った。
アカギには分からない。
見た目には傷んだ所は見あたらないし
さわり心地も程よく柔らか
匂い立つ桃のかぐわしい香り
まさに完熟。
熱い日差しと蝉の声音を少しは和らげてくれそうだ。
「何言ってんの?ちょうどいい感じだぜ?」
アカギは桃の産毛をひとなですると ツッと爪を立てて皮をひっぱる
ぺろりと、難なく剥ける桃の皮
たまらずに歯を立てると手から腕へと果汁が零れた。
「うまいぜ?」とひとつ市川へと渡すが、市川は渋い顔。
同じように皮を剥いて口へと運び
「熟れすぎだ。・・・・小僧にゃわからんか・・。」などと言う。
年を食うと好みが変わるというやつだろうか?
アカギは首をひねった。
***
「早すぎでしょ、市川さん・・」
あくる日、市川が買ったという桃を口にする。
・・・・・かたい。
匂いもあまり無く、皮も剥きずらく、がりっと歯ごたえまである。
食えたもんじゃない と市川を見ればどうやらご満悦の様子。
「何がいいの?これじゃ、俺の買ってきた桃のほうがよっぽど旨いぜ?」
「フフ・・まだガキだなぁ、匂いが違うのさ。品のある芳香がするだろう?」
この前のが商売女のけばけばしい匂い
これが匂い立つ処女の香りといった所か。
そんな事をのたまう市川。アカギにはさっぱりと分からない・・・
盲は鼻も利くだろうからそのせいだろうか?
アカギは試しに目を瞑って固い桃をがりっとかんだ。 ・・・・・分からない。
味覚ってヤツは個人差が大きいモンだとそう思う。
***
その年の冬のあくる日
市川に「旨い物を食わせてやろう」と連れ出されたアカギ
期待をぜんぜんしていなかったが・・・驚いた。
「これ・・・何の魚・・?」
「旨いだろう?ふぐと言う魚だ。毒がある」
あたれば死ぬぞ?と市川が笑う。
ならばあたって死にたいな、とアカギが笑った。
おしまい
昔、知り合いの中華料理屋さんが
「桃は熟す前が一番おいしい!香りが違うんだ!」
と、おっしゃって、何かの折にいただいたのですが・・・
わ、わかんないよ〜、おいしくないよ〜
と、いった経験で作ったお話。
舌が肥えれば分かるのか・・・・?
小春様!
お気遣いありがとうございました!!!